露出計・カラーメーター入門

第3回 プロデジカラーC-500で撮影光源の色を管理しよう

写真・解説:茂手木秀行

正確な色再現を望む場合や多灯ライティングの場合、撮影光源の色をきちんと管理するだけで正確なホワイトバランスが可能となり、カラーマネージメントの問題はほぼ解決できる。撮影という工程で光源の色を管理するのは、昔も今も「カラーメーター」の役割である。今回は、セコニック プロデジカラーC-500を使ったホワイトバランス管理を再現してみたい。

デジタルカメラでの撮影が主流の現在、ホワイトバランスをシビアに考える機会を失っていないだろうか。デジタルカメラのホワイトバランス調整をオートに、あとはグレーカードを入れて、データで調整。単純なライティングであれば確かにそのような方法論も成り立つし、自分の好みの色再現をするのが目的であるなら、それで事足りる。

しかし、正確な色再現を望む場合や多灯ライティングの場合はそう単純には行かない。レタッチなど後処理で解決するのは、ワークフローを煩雑にするとともにデータの品質を下げることにもなる。

img_tech_meter03_01.jpg セコニック プロデジカラーC-500はデジタルとフイルム、二つのモードがあり、それぞれの感色性に合わせたセンサーを持っている。切り替えると若干数値の差があるが、これはそれぞれの計算式の差であり誤差ではない。数値そのものよりも色の分解能と繰り返し精度が重要である。

本来、ホワイトバランスの目的は異なるデバイス(カメラとモニターなど)の白色点同士を一致させることであり、撮影時に行うものだ。デジタルカメラなどの入力デバイスの白色点は「晴天光」もしくは「太陽光」であり、5000Kから5500Kである。幅があるのは、フイルムとの整合性や各社の色作り(ルックアップテーブル)との兼ね合いだ。

ISO規格では補助標準イルミナントD50を採用しており、印刷用途では5000Kに合わせることと規定している。これは、撮影光源、入力装置(デジタルカメラ)、表示装置(モニター)、観察光源それぞれの白色点を5000Kにせよという意味だ。デジタル関連機材が成熟してきた現在、実のところ、ホワイトバランスをきちんと管理するだけでカラーマネージメントはほぼ解決してしまうのだ。モニターを管理するのには、キャリブレーターを使うことはもはや常識だが、撮影という前工程で光源の色を管理するのは昔も今も「カラーメーター」なのである。

現在もっとも高性能で入手もしやすいカラーメーター、セコニックC-500を使ったホワイトバランス管理を、時計の撮影をテーマに再現してみたい。アンティークの時計2本を撮影し、ホワイトバランスの変化を見てみることにした。

ライティング位置と露光比を決め、色温度を実測

まずはライティングである。今回は2台4灯にてライティングした。それぞれの灯体からの光が時計の面で反射するが、面ごとでの色味の差が着目点である。

img_tech_meter03_02.jpg ライティング全体。それぞれに番号をつけた。1番と2番がつながるジェネレーターをA、3番、4番がつながるジェネレーターをBとする。

img_tech_meter03_03.jpg ブロンカラー スコロA2S
色温度が調整できるだけでなく、すばらしく演色性が高いことが特徴。ヌケがよく、正確な色再現ができる。

機材協力:アガイ商事

ライティングに使用したのはブロンカラー スコロA2S。最大3灯まで発光部を接続でき、光量を固定したまま色温度を調節できることが特徴だ。色温度調整機構を持たないストロボでは、ライティング位置と光量が決まってからフィルターなどを使って色温度を調整しなければならない。つまり、色温度調整の度ごとにライティングをばらさねばならない。

まずは、ライティングの位置決めと露光比の決定を行ない、その後ジェネレーターごとに色温度を変化させ、4灯それぞれの色温度を実測し撮影結果と照らし合わせて見ることとする。

img_tech_meter03_04.jpg ライティング決定後、光量は4灯個別に計ってゆく。デジタルマスターL-758Dは入射光、反射光双方に対応しどんなシーンでも便利な露出計だ。

img_tech_meter03_05.jpg 露光量と露光比を決定した後、色温度を計る。4灯それぞれ個別に色温度を測るのだが、他の灯体の影響を避けるため、計測する以外の灯体の発光はオフにしておく。計測する際は光源にカラーメーターの平面受光板を向けるのだが、光源の光軸にカラーメーターの平面受光版平面を直交させて計測する。

img_tech_meter03_06.jpg 色温度だけではなくCCの指示値も注意してみよう。ここは色かぶりの補正値をCCフィルターの値として表している。今回使用したブロンカラーではすべての色温度で指示値は「0」であった。また、色温度表示もK(ケルビン値)だけではなく、ラッテンフィルター(コダック)、LBフィルター(フジ)での補正値を直接表示することも可能だ。

今回試してみた設定を表にまとめてみた。 灯体1と2はジェネレーターAに、灯体3と4はジェネレーターBに接続されている。Photo01は、ジェネA、Bともノーマル。Photo02とPhoto06はなるべく5000Kに近くなるように設定したもの。それ以外はAとBの色温度の差がつくように設定したもの。ノーマルのときジェネレーターBの方が色温度が低いのは、最小出力に近い状態で使っているからである。

img_tech_meter03_08.jpg

光源が影響している場所を図示したもの。それぞれの灯体が映り込んでいる、影響している場所を色分けした。Light2+3の位置、つまり文字板は、灯体2と3がミックスするところ、つまり色温度の差がある光源が合わさるところだ。

アンティーク時計の撮影

使用したカメラはニコンD3S。カメラのホワイトバランスは晴天とし、RAWデータで撮影した。現像はPhotoshop CS5、Camera Raw 6.2で行った。ホワイトバランスは撮影時設定のまま。Camera Rawでの表示は5100Kとなっている。若干の明るさとコントラストの補正をしている。

img_tech_meter03_09.jpg

img_tech_meter03_10.jpg

Photo01

ライティングを決定した後、ブロンカラーの色温度設定をノーマルのまま撮影したもの。最大差は200K。

1:リューズ近くの反射は灯体4によるものだが、色温度がやや低いので赤みを帯びている。

全体としては悪くはない感じである。

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img_tech_meter03_11.jpg

Photo02

ジェネレーターAはノーマルのまま、ジェネレーターBの色温度設定を+200Kとし、灯体3、4の色温度を上げ、4つの灯体の色温度差を少なくした。最大差は120K。

1:リューズ上の反射から赤みが消えて全体に馴染んだ。

2:この時計は1970年代のセイコー。アンティークである。経年変化でほんのり焼けた文字盤の色も適正である。

3:ダニエル・ロートのトゥールビヨン。24Kケースの色として十分である。ケース全体でミックス光源の影響を受けるが、4灯の色温度が平均化しているので、ハイライトからシャドーまで色相に変化がなく自然だ。


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img_tech_meter03_12.jpg

Photo03

ジェネレーターAはノーマルのまま、ジェネレーターBの色温度設定をー400Kとし、ジェネレーターBの色温度を落として、差を広げた。最大差は370K。

1:Photo01よりも赤みが増した。

2:文字盤にも赤みが増し、アンティークの文字盤はより古く見える。

3:ゴールドのケースのエッジやケース同士が反射し合う部分では赤みが強くなっている。


ぱっと見の印象は悪くはないがよく見るとバランスが悪い印象となる。

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img_tech_meter03_13.jpg

Photo04

この設定はより、色温度の差を広げる設定である。ジェネレーターBは−400Kのまま、ジェネレーターAを+400Kとした。最大差は620K。

1:灯体4を受けるリューズ付近はPhoto3と同程度の赤みのまま

2:ジェネレーターAの色温度があがったので灯体1を受けるステンレスのケースは青みがかり、1:の赤みと対比すると、一目見てバランスが悪いのがわかる。

3:黒の革ベルトのエッジもブルーになった。

4:ベルト上面は灯体3の反射だが赤みが目立つようになった。

5:青みがかった結果、ゴールドの赤みが抜け、18K程度に見える。

6:ケースのエッジ、ケース同士の反射面に赤みが浮きアンバランス。

7:ベルトの色相も明らかに違うものに。


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img_tech_meter03_14.jpg

Photo05

さらに色温度の差を広げるためジェネレーターAを+800Kとした。最大差は1160K。

ここまで差を広げるとカメラの背面液晶でさえ、カラーバランスが崩れていることが顕著になる。ゴールドのケースは真鍮のようにさえ見えてしまう。

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img_tech_meter03_15.jpg

Photo06

色温度を5000K前後でバランスするようジェネレーターAを+200K、ジェネレーターBを+400Kとした。最大差は260K。

1:文字盤から赤みが抜け、すこしクリアな印象。

2:少しブルーがかって、ステンレスケースがシャープな印象。


全体の色温度が上がり、画像全体が青みがかるが印象は悪くない。すこし、色温度を下げる補正をすれば、十分に正しい色に入ってくる。

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最も結果が良かったのはPhoto02である。画像上ももちろんであるし、モニターの表示と現物もよく一致する。モニターはカラーマネージメントモニターとして名高いColorEdge CG19とCG301の2台で確認している。

img_tech_meter03_07.gif
 
 
Photo01
Photo02
Photo03
Photo04
Photo05
Photo06

ここでもう一度、設定表を見直して見てほしい。一番右側の、平面受光板をカメラ向けにするのは、測定として正しくはないが、物体表面を見る画面全体の傾向は見て取れる。4灯をすべて発光させた時の全体の色温度は、どの組み合わせでも5000Kに近く一見問題ないように見えるが、大事なのは光源ごとの色温度の差なのである。

この実験も踏まえて、経験上で言えばプラスマイナス100Kならまず問題は起こらない。だが、理想を言えばプラスマイナス50Kである。Photo02での最大差は120Kであるからプラスマイナス60Kであり、ほぼ理想の範囲であると言える。この状態が実現できればレタッチの必要もなく、正確な色再現となりワークフローも簡略化される。スタジオでの多灯ライティングであればこそコントロールができるのであるが、オープンロケでもレフ板の材質や補助光の色温度に気を配るだけでずいぶんと正確な色再現ができるようになるのである。

また、今回の実験でPhoto05はさすがに非現実的と言えるが、Photo04くらいの差(灯体の色温度の最大差が620K)はあり得る。異なるストロボメーカーの製品が混在する場合や、古いヘッドが混じってしまう場合などだ。

いずれにせよ、正しい色再現とそこから生まれる簡潔なワークフローは目的にかなった機材から生み出されるのである。それがカラーマネージメントモニターであったりキャリブレーターであったりするのだが、撮影の現場で理にかなうのはやはりカラーメーター、プロデジカラーC-500だったのである。

img_tech_meter03_16.jpg

茂手木秀行の一言コラム

最近増えてきた一眼ムービーの現場でもカラーメーターは必須だ。HMIやキノフロなどさまざまな光源を混在して使うからだ。大事なのは管理とコントロールである。

関連情報

セコニック C-500 製品詳細ページ
http://www.sekonic.co.jp/meter_c_500

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茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て、2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化し、編集・デザイン・印刷現場との折衝・調整業務を経験。ポストプロダクションから「撮影」を見るという視点も持つ。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。2007年よりモノクロフォトを軸に活動し、写真展&セミナーイベント「Hello,Monochrome!」をプロデュース。その他写真雑誌に多数執筆、セミナー講師も手がけるなど精力的に活動中。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/20120807_551753.html

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