2010年08月27日
EOS MOVIEでCMや映画を撮影する際に、純正以外のレンズを使うケースはよくある。中でもスムーズなフォーカス送りを可能にするシネマ用レンズは、多くの映像制作者が試してみたいと思っているだろう。そこで、コストパフォーマンスの高いシネマ用レンズとして知られるCompact Primes(コンパクトプライム)とEOS 5D Mark IIの組み合わせでテストをしてみた。
今回テストをしたコンパクトプライムはPLマウントの単焦点シネレンズ。イメージサークルが広く、35mmフルサイズの撮像素子をカバーする。カールツァイスの正規代理店であるナックとイメージスタジオ109が共同開発したPLマウント改造ボディのキヤノン EOS 5D Mark IIと、ARRI社のマットボックス、フォローフォーカスユニットの組み合わせで、ムービーのテスト撮影を行なった。比較として開放値の近い、同等ミリ数のキヤノンの純正レンズも同時に使用してみた。
イメージスタジオ109でレンタルしている5D Mark Ⅱ PLマウント改造ボディ。マウントに遊びが出ないように底部に高剛性のフレームが装着されており、レンズがガタつかない。
Compact Primes 6本セット(21mm, 25mm, 28mm, 35mm, 50mm, 85mm)/ARRI マットボックス+フォローフォーカスユニット/EOS 5D Mark Ⅱ PLマウント改造ボディ
※レンズの開放F値と最短撮影距離
21mm=F2.9 / 0.24m
25mm=F2.9 / 0.17m
28mm=F2.1 / 0.24m
35mm=F2.1 / 0.3m
50mm=F1.5 / 0.45m
85mm=F1.5 / 1.0m
レンタル問い合わせ:イメージスタジオ109 テクニカルソリューションセンター 03-5436-2109
http://www.imagestudio109.co.jp/
コンパクトプライムは全体的に色の再現性が良く、シャープでありながら、柔らかくボケていく印象だった。絞り羽根が14枚あり、ほぼ正円に近い形状をしているのでハイライト部分が丸く綺麗なボケになっている。T*コーティングも施されているので、余計なフレアが抑えられ暗部からハイライトまでクリアな表現が可能だ。
仮にこのセットをサブカメラとして使用する場合でも、マスタープライムやウルトラプライムなどのシネレンズと色味を合わせやすいだろう。広角側の開放値が暗いことと85mmの最短撮影距離が長いことが残念だが、近日中にマクロレンズと、要調整ではあるがEF、Fマウント対応も発売される。
デジタル一眼レフのムービー撮影で苦労をするのがピントとフォーカス送りだ。熟練したフォーカスマンでも、通常の一眼レフ用レンズではフォーカスをスムースに送ることは難しい。
コンパクトプライムは最短から無限遠まで270°のフォーカスリングを持つのでスムースかつ正確にこれを行なうことができる。さらに6本のレンズ筐体が統一され、重量もすべて約1kgと軽量なので、バランスも変わらずレンズ交換が容易に行なえる。また、ARRI社のマットボックスを使用することで、NDやプロミストなど、シネレンズ用のフィルター類が使える。
最短〜無限遠まで270°の角度を持つフォーカスリング
コンパクトプライムのフォーカスリングは最短〜無限遠まで270°の角度があるので、スムーズなフォーカス送りが可能。
シネレンズならではの堅牢性も純正レンズとの違いの一つだろう。これまでもマウントアダプターなどを用いて、様々なレンズを5D Mark IIで使用している方も多いだろうが、今回のPLマウント改造ボディは、ボディの底面から剛性の高いフレームを装着しているため、レンズのがたつきが一切ない。これはギアに押し当てるフォローフォーカスやクレーンを使用する際には、かなり重要なポイントになる。
今回、コンパクトプライムでのスチール撮影も試みた。レンズの特性は、言うまでもなくムービーと同じであるが、ファインダーは見やすくカメラとの重量バランスも悪くはない。動画だけではなく、ビューティーなどの静止画の撮影にも適していると思う。
同じ焦点距離のレンズで比較したCompact Primesと純正レンズ
コンパクトプライム 50mm F1.5 キヤノン EF50mm F1.4 USM コンパクトプライムは背景の葉や樹木が暗部までつぶれていないので、しっかりと奥行きを感じることができる。そのため人物が浮き立ち、立体感がある。また、木々の間に差し込むハイライト部分が綺麗な円形のボケになっている。キヤノンのレンズは少しボケが固く、色味はやや抑え気味に感じられる。撮影データ 1/60、F2、ピクチャースタイル:ニュートラル
コンパクトプライム 50mm F1.5 キヤノン EF50mm F1.4 USM 2本とも人肌の色味の設定にかなり違いがある。キヤノンは抑えめの色でコントラストがはっきりしている。ボケのエッジは少し固めだが、グレーはニュートラルに感じる。コンパクトプライムはシネマレンズの特性か、はっきりとした発色とコントラストを抑えた柔らかい表現になっている。
撮影データ 1/60、F1.4、ピクチャースタイル:ニュートラル
モデル:野村日香理 機材協力:LIGHT UP
コンパクトプライム問い合わせ先
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