一眼ムービー REPORT

EOS MOVIE セミナー@Inter BEE ②「EOS MOVIEにおけるピクチャースタイルの色作りのノウハウ」

11月17日(水)~11月19日(金)に開催された2010年国際放送機器展(Inter BEE)キヤノンマーケティングブースにて、玄光社企画協力でEOS MOVIEの活用事例を紹介するセミナーを実施した。レポートの第2弾は尾道幸治氏による、EOS MOVIEにおける「ピクチャースタイル」を用いた色調整のテクニックの紹介。尾道氏のセミナーは会期中毎日行われ、連日満員の盛況だった。司会はビデオサロン・一柳編集長。

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尾道幸治氏は京都造形芸術大学大学院卒業で、在学中よりさまざまな映像作品を制作、海外の映画祭で入賞したり、現代美術作家・森村泰昌氏の展覧会映像を手がけるなど、多彩な活動を行っていた。現在は(株)TYOテクニカルランチに在籍、企画、演出、撮影監督、脚本家としてテレビCMや映画、ミュージックビデオなどを多数手がける傍ら、京都精華大学で教鞭を執っている。

尾道氏はソニーPCLにノンリニアオペレーターとして勤務した経歴もあり、VEや映像編集に精通している。ソニーPCL在籍中に岩井俊二監督と出会い、岩井氏のもとで脚本を学び、岩井氏が監督・プロデュースした映画やミュージックビデオの撮影監督も担当している。

img_event_cp_2010interbee02_02.jpg尾道氏が手がけたEOS MOVIEによる映像作品の紹介と解説に続いて、「ピクチャースタイルエディター」を用いた色調整の説明に入った。ピクチャースタイルエディターとは、エントリーモデルのEOS Kissシリーズから5D MarkⅡ、1D MarkⅣまで、EOSシリーズすべてに無償で付属するソフトで、これを用いれば好みの色味で撮影することができる。元々静止画用であるが、動画にも使うことができる。プロの間でもあまり付属ソフトは使われておらず、案外知られていないのだが、実はEOS MOVIEの表現を広げてくれる機能を秘めたソフト。

ピクチャースタイルにはプリセットで6つのスタイル(スタンダード、ポートレート、風景、ニュートラル、忠実設定、モノクロ)があって、カメラ本体に内蔵されている。このほかに機能拡張としてキヤノンマーケティングのサイトに7種類のスタイルが登録されている。さらに、自分で独自のスタイルを作る「ピクチャースタイルエディター」機能があり、これを使ってオリジナルの色味を作り出すことができる。

「ピクチャースタイルを変えるのは、昔のカメラで言えば(特性の違う)フィルムを使い分けるようなものです」と尾道氏。フィルムカメラ時代は、撮影目的や表現意図に合わせてフィルムを選ぶのが当たり前だった。オリジナルのピクチャースタイルを作ることは、いわば「自分だけのフィルムタイプを持つ」ということなのだ。

色の調整は編集時のカラーコレクション(カラコレ)でも行えるし、やり方や効果はPhotoshopやFinal Cut Proなどとあまり変わらないが、前処理か後処理かで大きな違いがある。ピクチャースタイルを使えば撮影の時点で望む色味を得ることができるので、撮影現場で最終形のイメージが共有できるメリットがある。当然、後処理も少なくて済む。ピクチャースタイルのファイルは機種を問わず共通で、5D MarkⅡと7Dを併用するケースでも、同じファイルを使えばほぼ同じ結果が得られる。

EOSの強みとしてロケハンにも持っていけるので、ロケハンの時点で本番用カメラ(=EOS)でトーンづくりやアングル決めができる。尾道氏もロケハン時に撮影した画像をもとに、事前にピクチャースタイルを作っておく。オリジナルのスタイルはカメラ本体には3種類しか入れられないので、その3つが合わなければ、持参したノートパソコンでその場で作ることもあるという。

ピクチャースタイルエディットでオリジナルのスタイルを作るには、サンプルとなる画像を用意してそれをベースに作業していくが、サンプルは必ず静止画で、しかもRAWデータでなければならない。この時に、寄りと引きの2種類の画像を用意することが大切なポイントだ。

サンプル画像を読み込むと、自動的にカラーホイールとトーンカーブ(映像業界ではガンマカーブのほうが通じやすい)のウィンドウが開く。まずはガンマカーブを動かしてコントラストなどを調整する。
 この時、より細かく調整していくのは、カーブ上のポイントを増やせばよい。極端なカーブや折れ線にしてしまうとトーンがジャンプしてしまう。
 次にカラーホイールを使って、色相や彩度などを調整していく。尾道氏ははじめはもっぱらガンマカーブだけで調整を行っていたが、映画の撮影でカナダに行った際に、現地のカメラマンにやり方を教わってから積極的にカラーホイールを使うようになったそうだ。

上記のやり方で尾道氏が作った3種類のピクチャースタイルを紹介。原色をビビッドに立たせたり、フィルムのような落ち着いた雰囲気を醸し出すなど、それぞれ狙いが異なる。「ビデオサロン」12月号で尾道氏の記事を掲載しているので、このあたりの具体的な方法や効果についてはそちらを参照されたい。

img_event_cp_2010interbee02_03.jpg尾道氏が「ビデオサロン」12月号のために作成した3種類のオリジナルピクチャースタイル。左上はプリセットにある「忠実設定」で、調整の仕方で印象が大きく変わることが実感できる。ちなみに、実際の画像は髪の毛など暗部の微妙なトーンがもっと出ている。

業務用カメラでは、あらかじめ色設定を変えられる機能は当たり前のようについているが、その多くはいくつかのプリセットから選ぶ方式だ。EOSのようなミドルレンジのカメラにこの機能があって、しかもカスタマイズも可能というのは考えてみればすごいことだ。「ちょっと動かすだけで劇的に変わるし、やりすぎるとグチャグチャになるので注意が必要」(尾道氏)というだが、試行錯誤していいものだけ残していくやり方がお勧めだ。

ピクチャースタイルのファイル自体は軽いので、いくつも作って保存しておけるし、メールに添付することも可能。そうやって色の方向性を事前に検討することができるのだ。EOS MOVIEの表現力を広げてくれる便利なツールとして活用されてはいかがだろうか。

関連情報
ビデオSALON.Web InterBEE2010 特集ページ
http://www.genkosha.com/vs/interbee2010/

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