Blackmagic Design Special Interview

Blackmagic Design | DaVinci Resolve 18|
齋藤精二DIプロデューサー/カラーグレーディング








日本映画が生まれる「現場」に身を置き、そこで生まれる芝居を輝かせる色作りのプロフェッショナル、齋藤精二。庵野秀明監督の「シン」シリーズ全てのカラーグレーディングを担当してきた彼が整える「色彩」と、名作が生まれ続ける彼のスタジオについて話を伺った。

「シン・仮面ライダー」
Interview 齋藤精二DIプロデューサー/カラーグレーディング

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
制作=東映+Cine Bazar Dir+脚本=庵野秀明 原作=石ノ森章太郎 
P=市川 修+鈴木啓造 TC=齋藤精二 EP=白倉伸一郎・和田倉和利 
公式サイト

現場のニーズに合う最速の色対応力

所属されている東宝スタジオ「DIファクトリー」について教えてください。

齋藤 ラッシュからグレーディング、VFX、最終データの作成まで映像に関わる全てが出来る空間です。受け身ではなく、僕は撮影している人たちの温度に近づきたかった。ある意味、昔の日本の撮影所システムへの原点回帰です。

「シン・仮面ライダー」でこだわったカラーリングのポイントは?

齋藤 監督のこだわりを徹底的に再現すること。庵野秀明さんはとても造形にこだわる方なので、撮影で使用したライダー1号・2号のヘルメットを直接持ってきて「正確にこの色を再現してくれ」って言うんです。それを常に参照しながら作業しました。そして子供の頃に観た初代仮面ライダーを再現したいというノスタルジックな想いの追求がありました。

シリーズの中でDaVinci Resolveはどのように活用されていましたか?

齋藤 撮影では、シネマカメラからiPhoneまで異なったカメラを複数使用するため、DaVinci Resolveのカラースペース変換を活用しました。ベースのLUTを準備するだけで、変換してある程度のセンターラインに持っていけるので便利です。僕がグレーディングツールで大事にしていることは「最新のカメラRAWを読めるかどうか」。その中でもDaVinci ResolveはRAW対応の速さが迅速です。最前線の現場では、最新カメラを読めるか否かが選ぶポイントです。

今の日本映画に多数関わられている齋藤さんが思う「これから」は?

齋藤 東宝スタジオでは撮影・編集・サウンドなど、あらゆるクリエイティブが連動してシナジー効果が生まれています。グレーディングはその中の1つ。これからの時代は既存の枠組みを超えたところに進化があるんだと思います。DaVinci Resolveの進化は僕の今の発想に近いわけです。FusionやFairlightなどグレーディングツールを超えた進化が生まれたのも必然だと思います。スマホが革命を起こし、さらにはAIが台頭してきたけれど、やはり間を繋ぐのは人間なんです。それってあらゆる業界が考えるべきことだと思います。

これから映画業界で活躍する若者に向けてメッセージをお願いします。

齋藤 子供の頃アメリカのアカデミー賞では撮影賞や美術賞もすべて同じ形で受賞が放送されていて「僕もアカデミー賞をとりたい!」と純粋に感じました。僕は「お芝居」が好きなので、それをどう際立たせるかを一番大事に作ってきました。野球の大谷選手みたいに、二刀流に止まらず、色以外の技術の造詣も含めて、お芝居に貢献できればと考えています。

※この記事はコマーシャル・フォト2023年7月号から転載しています。