デジタルフォト&デザインセミナー2010

LEICA S2 が切り開くハイエンドフォトグラフィーの世界

講師:フォトグラファー 中村成一

ライカカメラ社のフラッグシップモデルである「ライカS2」。このカメラをいち早く導入したフォトグラファーの中村成一氏が、その使用感を作例とともに紹介した。

フイルムからライカ S2へ

今日は、皆さんもおおいに注目されているであろう「ライカ S2」を紹介させていただきます。ライカS2は、35mmフルサイズよりも大きな(30mm × 45mm、面積比にして約160%)、有効画素数3,750万画素のコダック製CCDを搭載したデジタル一眼レフカメラです。

本体価格が300万円を超えるということもあって、普段はなかなか触れる機会の少ないカメラかと思いますので、実際に使った印象を、作例とともに紹介させていただければと思います。

img_event_dpds201001_01.jpgフォトグラファー 中村成一氏

私がS2を導入したのは今年の春です。実は、それまでは仕事の7割をフイルムで撮影しており、デジタルカメラはどちらかと言えばサブ的な存在でした。ポジで撮影し、それをスキャナで取り込み、Photoshopで画像をコントロールするというのが、私のメインのワークフローでした。

ただし、デジタルに目を向けてこなかったのかというとそうではありません。1995年、当時在籍していた資生堂宣伝部で「LEAF DCB II」というデジタルカメラバックを使って以降、割合こそ少ないものの、積極的にデジタルカメラを使用してきました。日本のデジタルカメラの進歩は素晴らしく、特に、私が使っているニコンのナノクリスタルコートレンズの登場時には、デジタルカメラ専用レンズの解像感の高さに、デジタルのシステムもここまで来たのかと驚かされたものです。ただし私の仕事がビューティフォト中心なので、トーンジャンプやノイズの出方、カメラとレンズの組み合わせのバランスといった点を考えると、まだメインはフイルムのほうがいいという選択をしてきたんです。

しかし、この春、タングステンタイプの4×5ポジフイルムが発売中止になってしまいまして、いよいよメイン機もデジタルに変えざるをえなくなりました。とりあえず、デジタルカメラバックと中判レンズの組み合わせをいろいろとテストしてみたのですが、どこかピンとこない。そんな中、S2を使う機会がありまして、その画を見てハッとさせられたんです。求めていた画がここにあった、と。

img_event_dpds201001_07.jpgライカS2
img_event_dpds201001_02.jpg会場に設置されたライカのブースでは、実際にS2に触れることができた。

キレと柔らかさを併せ持つレンズ

S2を使ってみて、まず感じたのはレンズの素晴らしさです。では、この素晴らしさをどう説明しようかと考えているうちに、高校生の頃に、カメラ雑誌で読んだ対談のことを思い出しました。

実は‥‥何という雑誌だったのか、何年の何月号なのかも忘れてしまったんですが、その中で、ある写真家の方が、「ドイツのレンズのシャープさは、ゾーリンゲンの刃物のようだ」と説明されていたんです。日本のカミソリはよく切れるけれど、切れすぎて、下手をすると肌まで切ってしまう。でも、ゾーリンゲン社製のカミソリは、ひげしか切らない、と。ドイツのレンズがシャープさと同時に、なんともいえぬ柔らかさを持っていることを説明していたんですね。S2の画を見た時に感じたのはまさにこういうことなんです。

ではいくつか作例を見ていただいて、そのあたりを実際に確認していただけたらと思います。撮影現場を紹介したムービーがありますので、まずそれを見てください。

LEICA S2によるスタジオ撮影の様子(2分20秒)

どの作品も撮る時には、「ライカである」ということを意識しています。「ヨーロッパ」であったり「クラシカル」であったり。S2というカメラはそういう期待に、よく応えてくれるカメラだと思います。

たとえばこのモデルを使った作品①に関しては、スポットライトを使って、アールデコ調の模様を顔に投影し、クラシカルな雰囲気を出しています。

一方②に関しては、大きな和紙を身体に巻いてもらって着物風にして、頬には色とりどりの和紙を小さくちぎって貼り付け、和風テイストに仕上げました。

こんな風にこのカメラに合致した雰囲気を作り出していくような撮り方が合っているのかなと感じています。

img_event_dpds201001_08.jpg左はクラシカルな雰囲気で撮影した作品①。右は和風テイストを演出した作品②。

ちなみに、今回の照明はCOMET社に協力していただき「COMET モノヘッド SYNCHRON」を使いました。大きな光源とは別に、手元に小さい光源を置くことで、光のさじ加減が行なえるというわけです。たいへん便利で効果的な方法ですので、皆さんにもお勧めしたいと思います。

3,750万画素がもたらす豊かな階調

会場のプロジェクター投影だとちょっとわかりにくいかもしれませんが、作品のいくつかをピックアップして、S2の画質を見てみたいと思います。画像をPhotoshop CS5で開いてみたいと思います。

モデルの写真で見ていただきたいのは、肌色の中間調から、暗部にかけてのグラデーションです。トーンジャンプがまったくなく、実に美しい。4×5のフイルムと比較しても、遜色のないレベルではないかと思います。さらに、髪の毛など細かな部分を細かく見ていっても偽色らしきものはない。

ボケ足も美しいと思います。日本のレンズには、ピントの芯から離れると、唐突にボケるものがあるんですが、ライカのレンズはその中間があるんですね。溶けるようにボケていく感じがします。

これらの特色は、3,750万画素という膨大な画素数が関係しているのかなと思います。高い解像度が、ディテールのキレを増し、画像全体の階調を豊かにしているように思います。

img_event_dpds201001_03.jpgS2のグラデーション表現の豊かさは、肌の中間調から暗部にかけてトーンジャンプがまったく見られないところからもわかる。

img_event_dpds201001_04.jpg髪の毛の周りにも、偽色が発生している様子は見受けられない。

次にカメラとしての、ハードウェア部分を見てみたいと思います。すでに、外のブースで触わってみたという方もいらっしゃるかと思いますが、非常にコンパクトで持ちやすいですよね。ニコンやキヤノンの35ミリフルサイズのカメラと重量感はそう変わりません。

ただし3×4.5cmという大きな撮像素子ですので、鏡胴が大きいという特色があります。その鏡胴に付くレンズは完全な専用設計です。もうひとつ素晴らしいのが、明るく細部まで見やすいファインダーです。このファインダーの素晴らしさは、言葉で説明するよりもぜひ実際にご覧いただくのがよいかと思います。

ところで、S2には「Adobe Photoshop Lightroom」が付属しています(註・ユーザーがダウンロードして利用する)。Lightroomは最近バージョン3が発売され(2010年6月25日)、ノイズ低減、レンズ補正、テザー撮影など様々な新機能が追加されました。私自身は、S2の導入をきっかけに、本格的にLightroomを使うようになったのですが、現像機能はもとより、検索機能が非常に優れているなと感じています。

S2が記録する画像は、RAWデータだとおよそ75MBにもなりますから、データはMacなりPCなりにどんどん移していくことになります。その際に大事なのが写真の管理です。Lightroomの場合、露出やレンズなどのカメラのメタデータが検索に使えるし、キーワードを画像に割り当てておくこともできるため、目的の写真を容易に探すことができます。こういった機能を積極的に活用することが、ワークフローの改善につながると感じています。

現像関連の機能についても便利な機能が数多く搭載されているのですが、僕が気に入っているのは、1枚の画像に適用した現像処理の結果を他の画像にも適用できる機能。作業の大幅な省力化が可能になります。

img_event_dpds201001_05.jpg「Adobe Photoshop Lightroom」では、一つの画像に適用した効果や、グレーバランスを他の画像に簡単に適用できる。

また、色の管理もよく考えられており、カラーチャートを写し込んでとったグレーバランスを、簡単に他の画像に適用できます。色の統一も容易というわけです。ちなみに今回使用したカラーチャートはエックスライトの「カラーチェッカーパスポート」。小さくて折りたたみも可能ですから、非常に扱いやすい製品です。

img_event_dpds201001_06.jpgカラーチャートを写し込みグレーバランスをとって保存しておけば、後からでも、他の画像にそのグレーバランスを適用することができる。

そろそろお時間となりました。いかがでしょう。S2というカメラが持つポテンシャルの一端をお感じいただけたでしょうか。私も、S2を使い始めてまだ数ヶ月なのですが、このカメラの凄さ、素晴らしさを日々発見、実感させられているところです。それはおそらく、ライカ S2というカメラが、性能の高さはもちろん、その背景にある、哲学や思想を感じさせるカメラだからだと思います。

ライカ S2は、これまでのデジタルカメラのように、1年や2年でその存在価値が揺らぐようなカメラではありません。簡単に導入できるようなカメラではないかもしれませんが、皆さんも機会があればぜひ手にとってみていただければと思います。

今日はどうもありがとうございました。

取材:小泉森弥 会場写真:竹澤宏

中村成一 Seiichi Nakamura

株式会社資生堂宣伝制作部に在籍後、2006年(株)中村写真事務所設立。ADC賞、朝日広告賞、電通賞部門賞、APA年鑑優秀賞他受賞。コダックフォトサロン、ART BOX ギャラリー、Fireking cafe にて個展。広告写真、エディトリアルイメージカットの撮影を中心に活動中。
http://www.nakamura-objectif.jp/

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