一眼ムービー REPORT

イベントレポート ポストプロダクションから見たEOS MOVIEの実力

「コマーシャル・フォト」と「ビデオサロン」が共催するデジタル一眼ムービーの魅力と可能性を探るイベント「Mashup Photo-Video」。第5回は「ポストプロダクションから見たEOS MOVIEの実力」と題し、イメージスタジオ109/ポストプロダクション事業部の西邦夫さんを迎えて行われた。開催日は11月27日、会場はアップルストア銀座のアップルシアター。

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西邦夫さんが所属するイメージスタジオ109は、写真と映像のスタジオとポストプロダクションを複合的に運営している。他にはクレーンカメラなどの特機や、ロケアシスタントなどのシューティングサポート業務も手がけている。もともと写真の分野で、フォトレタッチやデジタル撮影サポートを行なっていた実績があるので、デジタル一眼ムービーの撮影サポートにもいち早く対応することができた。

ポストプロダクションの業務とは、映像制作プロダクションが撮影を行なった「後の(ポスト)作業」、つまりオフライン編集、本編集(合成・エフェクト)、MA(音入れ)、そしてテレビ局などに納品するためのオンエアプリントなど。最近ではEOS 5D Mark Ⅱで撮影した素材が持ち込まれることが増えているという。また、撮影機材のコーディネート業務も手がけているが、ここでもムービー撮影に5D Mark Ⅱを指定されるケースが目立っている。そうした立場からEOS MOVIEの実力や魅力、5D Mark Ⅱで撮影した映像の編集に最適なワークフロー、そして5D Mark Ⅱと7Dの使い分けについて、話を聞いた。

img_products_dslr_mashup5_2.jpgフルHDは30pのみという問題点

西さんはまず、ポストプロダクションという立場から見たEOS 5D Mark Ⅱの長所・短所を説明。被写界深度のコントロールがしやすく、特にボケを活かしたグレードの高い画づくりが最大の魅力で、暗部の表現も美しい。

一方、CMOS特有のローリングシャッター現象(高速で横移動する被写体が斜めに変形して写る)は、その構造上避けられない欠点。また、映像と音声のずれにも注意が必要。これは、5D Mark Ⅱのフレームレートがジャスト30fpsである点に起因する。テレビの規格は厳密には29.97fpsなので、30fpsの映像を29.97fpsで再生すれば尺は少し伸びることになる。そこに、映像と別に同録した音と合わせるとわずかずつだがズレが起きてしまうのだ。西さんによれば尺が15秒程度ならまず気にならないが、30秒ぐらい尺があるとズレが認識できるようになるという。

5D Mark Ⅱで録った音をそのまま使うなら音のズレは起こらないが、5D Mark Ⅱにはヘッドフォン出力がないので、録音しながらのモニターができない。プロの現場で5D Mark IIを使うときはたいてい録音専門のスタッフが別にいて、専用の機材で録音しているので、編集時に音と映像の同期を取る必要があるのだ。5D Mark Ⅱはもともとハイアマチュアをターゲットにした機種であり、その範囲においてはこれらのことは何ら問題にならないが、プロが業務に使うようになって問題視されるようになった。

5D Mark Ⅱのもう一つの問題点は、プロの映像編集では必須のタイムコードの概念がそもそもないこと。タイムコードとは一コマ一コマに番号が振られているもので、「絶対番地」といって同じものは一つしか存在しない。このためプロ機材での撮影では、収録データがどんなに膨大であっても、迷わず指定のコマを選び出すことができ、効率的に以後の作業が行える。

タイムコードがないことの対策としては、ファイナルカットプロのタイムライン上に素材を並べ通しの番号をつけること。イメージスタジオ109では、5D Mark Ⅱの映像は一度HDCAM-SRのテープに落としている。この段階でタイムコードがつき、そこから先は通常と同じ作業が行えるからだ。

EOS 5D Mark Ⅱで撮影した映像に最適なワークフローとは

次に、イメージスタジオ109では5D Mark Ⅱで撮影した素材をどのように処理していくのか、ワークフローの説明に入った。H.264で記録された映像データをProRes422変換してFinal Cut Proに持って行き作業する。一般的にはこれでかなり質の高いものが作れるが、109では多くの場合Final Cut Studioに同梱されるCompressorを経由して非圧縮の4:2:2データに変換する。データがひじょうに重いので、先述のとおりまずテープ(HDCAM-SR)に落とす。これは、大量のデータはテープに落としたほうが管理しやすいことと、映像の受け渡しにおいても互換性の点で優れているため。なお、同録の音声は別途WAVファイルで記録されている。

ここから収録した音声の「同録音戻し」(映像とシンクロさせて合わせる作業)、オフライン編集・試写を経てCGやエフェクトを加える本編集、ナレーション録音・MA(音入れ)などを行い、テレビ局に納品するテープの元となるマスターファイル(いわゆる完パケ)の完成となる。テレビ局の信号チェックは厳しく、信号が放送規定の範囲に収まっていないと放送時の画質は保証されない。この信号管理もポストプロダクションの重要な役割だ。

実際のCMの使用例で詳細に解説

このあと、5D Mark Ⅱを全面的に使用して撮影したIDC大塚家具のCMをもとに、メイキング写真も交えて現場のフローを詳しく解説。CM制作プロダクションの依頼でシューティングサポートを行なったが、実際のショールームで撮影するという条件下では、小型軽量の5D Mark Ⅱの機動性が最大限発揮された。なおかつ、このCMで重視された商品のグレード感表現も5D Mark Ⅱが得意とするところだ。

カメラは1台のみ(予備1台も用意)で、レンズは純正のEFレンズを使用。スチル用のAFレンズはゆっくりズーミングしたりマニュアルでピントを追うようには設計されておらず、ズームやピント送りがカクつく問題がある。この対策として小型のクレーンとレールを用意、レンズでズーミングしないで済むようにした。これを35mmのムービーカメラでやったら、二周りほど大掛かりになって、撮影も今回の2日間では終わらなかっただろうと西さん。こうしたコスト面でも5D Mark Ⅱの効果は大きかった。

HDMI出力からSDIに変換するのにブラックマジックデザインのコンバーターを間に介しているが、そこで2系統に分配でき、その一つを監督用、もう一つをクライアントチェック用とした。クライアント立会いの撮影ではこうした現場後方のモニタリングも重要だ。データはMac Proに取り込み、バックアップしつつ仮つなぎを行う。これとは別にMacBook Proをチェック用として持ち込んでいる。

5D Mark Ⅱと7D、両者をどう使い分けるか

この日のもう一つのテーマは、EOS 5D Mark Ⅱと7Dの使い分けについて。両者では撮像素子のサイズに違いがあり、5D Mark Ⅱはフル35mm(約36×24mm)、7DはAPS-Cサイズ(22.3×14.9mm)で、これはレンズの画角や焦点距離の違いとして表れる。スチル系のカメラマンからすれば、写真のレンズのミリ数がそのまま同じ感覚で使える5D Mark Ⅱが感覚的になじみやすいが、映画系の人からみるとその逆で、7Dのほうがむしろ映画のレンズのミリ数と近いのでよりなじみやすいだろう。ちなみにムービーの35mmの撮像面はAPS-Cより若干小さい。

色味や全体の解像感には大きな違いはなく、APS-Cの7Dでも全くハンディは感じられないという。両者の使い分けについては検証を行なっているところだが、後から作られた分、細かな使い勝手や仕様は7Dが上回る部分も多い。まず外部モニター出力は7Dに軍配が上がる。録画中のHDMI出力は5D Mark ⅡではSDになってしまうのに対し、7DはHD画質が維持される。また、7D(とまもなく発売される1D Mark Ⅳも)は、29.97fpsや23.976fps、720pでの59.94fpsに対応している点もアドバンテージとなる。

しかし、西さん個人は圧倒的なボケ味の表現など、「画づくりの点ではフルサイズセンサーのアドバンテージは今でも大きいと感じている」と話す。5D Mark Ⅱも2010年のファームアップデートで23.976fpsには対応するとアナウンスされているが、「TV-CM制作においては29.97に対応しないと意味がないのでぜひ対応して欲しい!」と熱くリクエスト。

EOS 5D Mark II でツァイスのシネレンズ が使える!

終盤にはナックイメージテクノロジーより、カールツァイスのPLマウントレンズCompact Primesシリーズを5D MarkⅡに装着できるようにした製品の紹介があった。Compact Primesはもともとツァイスのスチル用レンズをベースに、ムービー用レンズとして開発されたもの。スチル用レンズを使っていることから、広いイメージサークルを持っており、それを5D Mark Ⅱにも付けられるようしたもの。フォーカスリングがムービー仕様になっており、滑らかなフォーカス送りが可能。さらに、14枚の絞り羽根による美しいボケを実現している。

このレンズを5D Mark IIで使うためには、本体のマウント部をPLマウント対応に変更する必要がある。また、5D Mark Ⅱでは一部の広角レンズは撮像素子の関係で四隅がケラられるため使用できないが、使用可能なPLレンズもレンズ後端がミラーと干渉するのでそのまま取り付けられない。そこでレンズマウント後部を削り干渉をなくすとともに、カメラ側のマウント部をPLマウントにする改造を加えている。

また、スチル用カメラは頻繁なレンズ交換を前提にレンズマウント部に「アソビ」があって、動画撮影時のフォローフォーカスの際、アソビの分だけ動きだしに画がガクッと動いてしまう問題があった。5D Mark II 本体のマウント部をPLマウント対応に改造する際に、このアソビをなくしきっちりロックできるようにして、フォーカスが正確に行えるようになった。イメージスタジオ109ではすでにこのレンズで様々なテストを行なっており、近日中にレンタル業務も開始する予定だという。

img_products_dslr_mashup5_3.jpgEOS 5D Mark II装着用PLマウントレンズは21mmから85mmまで6種類が用意され、1本の価格は60万円前後。このレンズシステム用に変更された5D Mark IIは、メーカーの保証対象外となる。イベント終了後は多くの人が「5D用」PLレンズに関心を示した。5D Mark Ⅱと7Dのほか、発売前の1D Mark Ⅳのデモ機も並べられた。

次回「Mashup Photo-Video」の開催が決定。「EOS 7Dでハイクオリティなシズル映像を撮る方法」と題して、アップルストア銀座にて2010年1月25日に開催します。お楽しみに!

関連情報
ビデオサロン デジタル一眼ムービースペシャルサイト

キヤノン EOS MOVIE スペシャルサイト


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