一眼ムービー REPORT

EOS MOVIE セミナー@Inter BEE ④「フジテレビ『東京リトル・ラブ』におけるEOS MOVIEの活用事例」

コマーシャル・フォト編集部とビデオサロン編集部がInter BEE 2010(11月17日~19日開催)のキヤノンマーケティングブースにて開催した、EOS MOVIEの活用事例を紹介するセミナー。最終日となる19日に開催したフジテレビの深夜枠ドラマ『東京リトル・ラブ』におけるEOS MOVIEの活用事例のセミナーには、開始前から多くの来場者が集まり、立ち見も大勢出る人気ぶりだった。

演出の松山博昭氏(フジテレビ)をはじめ、VEの大塚高矢氏(八峯テレビ)、編集の杉山英希氏(バスク)の3人が登壇し、それぞれの立場からEOS MOVIEのメリットや特徴について話をした。司会はビデオサロン・一柳編集長。

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「東京リトル・ラブ」は2010年の4月から9月にかけて、月~木の深夜枠で放送された。1回約7分の尺で、第1期~3期の3部構成。第1期は幼馴染を頼って東京にやって来た台湾出身の少女と、偶然出会った若い刑事が再会を繰り返す中で惹かれ合っていくストーリー。第2期は全く別のストーリーでキャストが異なり、画の作り方も違っている。第3期は1期の続編にあたり、キャストも共通だ。今回は1・3期を中心に話を展開。まずはそのダイジェスト版を上映。

松山氏は「(大きな画面で)改めて見るとキレイですね。これだけ大きく伸ばしても全く問題ない」

今でこそEOS MOVIEで番組やドラマを撮影する事例は増えてきているが、4月の時点ではまだ冒険であった。「いい意味で“深夜枠だから、普段できないことをやってみよう”というのがありました。最初にEOS 5D MarkⅡを使おうと言ったのはプロデューサーで、CMやミュージックビデオなどでよく使われていたことは僕も知っていたんですが、どんな画が撮れるのかといったことは正直よく分かっていませんでした。調べてみると面白そうだということになり、リスクはあるかなと思いつつ、とりあえずカメラテストしてみようという話になりました」(松山氏)

「僕もEOS MOVIEのことは知っていましたが、クランクイン直前まではどれほどのものなのか正直不安でした」と杉山氏。その不安はいい方向で裏切られた。今回使用したのはEOS 5D MarkⅡ。EOS 7Dはまだ出たばかりで情報が少なく、特に比較検討はしなかったそうだ。「テストしてみてびっくりしました。街の電器店で売っているカメラはすごいなと(笑)。これはぜひ世に出さなきゃと思いました」(大塚氏)

課題はワークフローをどうするのか。通常のカメラテストは色味のテストだけだが、この時はEOS MOVIEを初めて使うということで、編集までを視野に入れたテストを行った。「EOSの収録ファイルはQuickTime。そこからウチ(バスク)のワークフローにどうやって乗せるかを考えなければなりません。ウチは基本的にAvidのシステムを使っているので、撮ったその場でAvidコーデックに変換する形でシミュレーションしてみましたが、読み込みにはかなり時間がかかります」(杉山氏)ということで、現場での変換は危険と判断、別の方法を考えることになった。

結局、HDCAMデッキをつなぎ、HD-SDI変換してテープに落とす方法を選択。EOS 5D MarkⅡは撮影時にモニターがSD画質になってしまうため、撮った映像のチェックを兼ねてテープに送り出す形をとった。「今回に関してはテープによるワークフローが一番スムーズじゃないかと考えました」と大塚氏。音声は完全に別録りで、チェック時にカメラ側の映像と同時にテープに流し込んで収録する。編集作業上、映像と音の素材が一緒になっていることが重要で、なるべく映像と音が合うようにはしているが、細かなズレは編集で合わせこめばいいと割り切った。

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演出の松山博昭氏
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VEの大塚高矢氏

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編集の杉山英希氏

撮影は基本的にカメラ2台体制で、予備を含め4台で回していった。レンズは24mm~200mmの単焦点レンズを各種と、16-35mm、24-105mm、70-200mmの3種のズーム。「EOS 5D MarkⅡの魅力はフル35mmセンサーと単焦点レンズの組み合わせによるボケ足なので、なるべく単焦点レンズを使うようにしました」(杉山氏)。通常のドラマ収録では事前にカメラのチューニングを済ませて現場入りするが、今回は現場で画づくりを行い、2台のカメラの色温度を統一して、微妙なズレのみ編集時のカラーコレクションで修正した。

EOS 5D MarkⅡには、収録中はファインダーがSD画質に落ちてしまう問題がある。HDMIでモニター出力すると今度はバックモニターが消えてしまう。そこで、HDMI出力をリレー分けして、1つをカメラ前部のフォーカス確認用モニターに使用した。

ナイター(夜間)シーンをどうするかという課題もあった。暗いシーンの撮影はISOを上げて対処するのだが、「どんどんISOを上げていくとノイズが目立ってくるし、黒の部分の色味も変わってしまうので、VEの立場からするとなるべくなら上げたくない。でも、ISO200程度に抑えようとすると普通に照明が必要になってしまいます」(大塚氏)。「そうなると通常のドラマより予算がかかってしまうので、夜のシーンを減らそうとか言いながら、なんだかんだでやってしまいました」(松山氏)。大きくISOを上げる場合のみ、ノイズを抑えるソフトを使用して対処したという。

日中の撮影は基本的にNDフィルターを2枚使用。シーンによってはヌケを良くするためポーラフィルターを使用した。撮影スタイルは各シーズンで異なっていて、第1期は手持ちと三脚固定が半々で、第3期は基本的に全て脚つき(三脚固定)。第2期は逆に全て手持ちで撮影を行なった。手持ちでは MOVIEtube(テクニカルファーム製)というシステムでショルダーにして使用している。「第1期はきれいに作ってきれいに撮ろうという方針。第2期はテイストを意識的に変えて、わざと猥雑な感じにして、汚い東京を描こうという意図がありました」(松山氏)

松山氏によれば、深夜枠で作るドラマは実験的にフィルムっぽくしようとしたり、プログレッシブにしてみたり(テレビは通常インターレース)、いろいろテイストを変えようとすることが多いが、そうするとどこか「ムリクリ感」が出てしまう。ところが、EOS MOVIEで撮影した本作にはそうした無理が一切感じられず、上層部からも高い評価を得たそうだ。

「言い方は悪いですが、最初はお手軽に撮れるカメラというふうに捉えて考えていました。ところがこれは、照明を含めてきっちり映像を作り込むためのカメラだと分かりました」(松山氏)

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編集のワークフローは、先述のとおりカメラからの映像と別録りした音声をHDCAMに収録し、Avid Media CompserでキャプチャーしてAvidコーデックに変換、Unity(ISIS)に取り込む。オフライン編集はAvid Symphony Nitris DX、オンライン編集はAvid DSで作業。カラコレはFilm Masterで行なっている。

「カードメディアはどこに何が入っているのか分かりづらい」(杉山氏)ということでテープでのワークフローになったが、他にメリットとして本番用の映像と音が一緒になっていることと、カット別にタイムコードが入るので作業がしやすい(EOS自体はタイムコードが入らない)ことが挙げられる。今回は時間短縮のため、テープに落とす段階でNGカットは全て落としてOKカットだけにしてもらったという。編集作業中にNGカットからいい部分を引っ張り出すことはよくあるのだが、「NGカットはHDDに落としてあるので、最悪それが必要になった時は、編集室でそこだけAvidコーデック変換して使いました」(杉山氏)

EOS 5D MarkⅡで撮影した画像は、ボケ足がきれいな一方でエッジがはっきりしていてコントラストが強く見える。また、ノイズが目立ったりモアレが出やすい欠点がある。

ピントが合った部分とボケているところがはっきりしているので、ノイズやモアレを抑えるために画像をボカす際には、人物の顔などにボケがかからないよう注意が必要だった。夜のシーンは杉山氏と大塚氏が最も頭を悩ませたところで、ゲインアップやノイズ処理などを行った後、カラコレ段階で色合わせを行った。

編集作業にかかった時間は、1回7分×週4日分でオフライン編集に5日、カラコレ+仕上げに1日。1時間のドラマ1回分(40分程度)とだいたい同じぐらい。途中、Avid Media Composerがバージョンアップ(3.5→5.0)してEOS MOVIEのQTに対応したため、変換をかけずにタイムライン確認が可能になり効率が良くなった。理屈上、変換せずに編集することも可能なのだが、「使う素材だけトランスコードかけて作業するほうがトータルでは速いと思います」(大塚氏)

最後に3人に、今回の制作を通じた感想と今後EOSに望むことを伺った。

松山氏は「最初は心配もありましたが、スタッフの頑張りもあってディレクターとしては現場でもノーストレスで使えるという感覚になっていました。映像はきれいだし、次も5D MarkⅡを使ってやりたいなと思います」と話し、改善点としては「もう少しフォーカスが合わせやすくなるといいかな」

大塚氏は「ワークフローもでき上がったと思うので、次にやるとしたらさらに5D MarkⅡの性能を引き出してもっといい映像が作れると思います。まだまだポテンシャルはあると思う」とEOS MOVIEが秘めた可能性の高さに期待を寄せた。

杉山氏は「録画時にHD出力できるようになるといい。音声収録の性能がもっと良くなれば、(別録りした)音を貼り付ける時間分だけ作業が楽になりますし、あとはタイムコードが入れば現場の作業がスムーズにできるようになります」と具体的な改善ポイントを指摘した。

なお、「東京リトル・ラブ」のDVD-BOXが11月29日に発売予定(ローソン限定版は26日発売)。
公式サイト http://www.1924.jp/little_love/

関連情報
ビデオSALON.Web InterBEE2010 特集ページ
http://www.genkosha.com/vs/interbee2010/

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