フォートンがHP Workstationを選んだ理由

Vol.1 村山輝代

HPのワークステーションは、世界最高峰の速度と性能を誇るデスクトップマシン。レタッチカンパニーの「フォートン」ではすでに広告の制作業務に活用している。同社の村山輝代さんにHPのワークステーションの使用感を聞いた。

広告ビジュアルの制作現場では、画像データのサイズやレイヤー数が幾何級数的に増えており、そのおかげで常に、より高速なコンピュータが必要とされている。広告写真のデジタルイメージングを手がけるフォートンでは、この悩ましい問題を、HP Z400 Workstationを導入することで解決したという。Macからの乗り換えには、どんなメリットがあったのだろうか。

HP Z400 Workstationにさわった途端、そのスピードに圧倒された

—— HPのワークステーションとの出会いを教えて下さい。

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村山輝代 Teruyo Murayama
女子美術短期大学絵画科卒。国内外の有名化粧品ブランド広告のメインビジュアルを数多く手がけ、名実ともにビューティのトップレタッチャーとして活躍中。

村山 弊社の新しいプロジェクトとしてムービーのレタッチ技術を開発しているチームがあるんですが、そこが最初にHP Z800 Workstationというハイエンドモデルを導入しました。そのチームがいろんな動画系のソフトを検証していたんですが、その結果、それまで使用していたマシンとは桁違いに速いことがわかったんです。これはもしかしたらPhotoshopもかなり速くなるんじゃないかという話になって、試しにHP Z400 Workstationを借りてみました。

—— どうでしたか?

村山 私はそれまでWindowsマシンはさわったことがなかったので、最初は正直どうかな?と思っていたんですが、実際にPhotoshopを動かしてみたら、速い速い。なんだこれは!って圧倒されました。ちょうどその時、屋外用のグラフィック広告の仕事をやっていて、長辺が5mで、50,000ピクセルぐらいに仕上げないといけなかったんです。元のデータを拡大して、シャープネスを入れて、ちょっとレタッチして、保存してという作業を何回か繰り返しましたが、そのとき使っていたMacと比べると明らかに速かったですね。レタッチの仕事をしていると、やはり時間はお金には換えられないじゃないですか。これまでWindowsは食わず嫌いだったところがあったんですが、これは考え直さなければいけないなと思いましたね。

—— スピードが決め手だったんですね。

村山 いま、レタッチの仕事で扱う画像データの量がどんどん大きくなっているので、マシンもそれに合わせてどんどん速いものに替えていかないといけないんですよ。ちょうどそのころ、新しいマシンをどうしようかと社内で検討していた時期でもあったので、私自身はZ400に乗り換えることを決めました。弊社にはグラフィックのチームが3つあるんですが、何台入れるかということをいろいろ話し合って、最終的には合計8台のZ400を導入しました。

—— ほかのレタッチャーのみなさんも、乗り換えには賛成だったんですか。

村山 そうですね…、みんなMacを長く使ってきたので、やはりそれぞれ葛藤があったんじゃないでしょうか(笑)。でも今は面白いくらいに、みんなZ400を使いたがりますね。私のチームにもう1人Z400を使っているレタッチャーがいるんですが、あるときMacで作業してほしいと頼んだら、「Z400でなければこの重たい処理はできません」と、ものすごく抵抗されたことがあります。それを聞いて、ああ、Z400ってすごいな、それだけの結果を出しているんだなと思いました。

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写真右下に写っているのがHP Z400 Workstation。モニターもHP製の30インチと24インチを使用。

—— MacとZ400ではマシンスペックがそんなに違っているんですか。

村山 たしか最初にテストをした時は、Z400のCPUは3.2GHzの4コアで、メモリが12GB。Macが2.26GHzの8コアで、メモリは16GBだったと思います。極端に違ってはいないと思います。いまZ400はメモリを24GBにして使っているので、そのときよりさらに速くなっていますけど。

—— それでもスピードは違ったんですか。CPUやハードディスクの差もあるでしょうが、Z400はシステム全体のバスの幅が広いので、データが一度に流れる量が多いんでしょうね。

村山 一番違いを感じるのはファイルを保存したり、開く時間ですね。それまではいつも2台、3台を並行して作業していて、こっちで演算を走らせて、あっちでCD-Rを焼いてとかやっていたのですが、Z400だとその必要がないんです。Macだとファイルを開くだけで15分くらい待たされるような巨大なデータでも、Z400なら2分くらいで開いてしまうことがあります。15分といえば処理が一つ終わってしまうこともありますよね。1台だけでもどんどん作業が進んで行くところは、これまでとの大きな違いですね。

それから、Z400で作業をしていると、気がつかないうちにデータのサイズがものすごく大きくなることがあります。どんなにレイヤーが増えても、まったくストレスを感じないんですね。気がつくとファイルが5GBとか8GBくらいになっていて、16GBということも1回ありました。私たちは常日頃「あ、動作が重くなってきたな」と思ったら、どんどんファイルを小分けに分割して保存するクセがついているんですよ。それに気がつかないということは、今までだったらありえないですね。Z400を導入してからは驚くようなことが起きています。

—— スピードが速くなったことで、クリエイティブの面でなにか影響はありましたか。

村山 今までだと、変形をかけたりするとものすごく待ち時間がかかっていたのが、何回でもさくさく見られるようになっています。昔は何をするにも時間がすごくかかっていましたが、今は限られた時間の中でもいろいろとトライできるようになっていると思います。


HP Workstationは次の時代のレタッチマシン

—— 村山さんは、これまでいろんなコンピュータを使って仕事をされてきたと思うのですが、これまでを振り返っていかがですか。

村山 私はフォートンに入って17年目になるのですが、最初に使ったのは大日本スクリーン製のレイアウトスキャナですね。もともと印刷・製版向けの画像処理専用機なのですが、フォートンではそれに8×10のポジフィルムの出力機を組み合わせて使っていました。当時はもちろんフィルムの時代だったので、インプット、アウトプットが今とは全く違います。フィルムに出力したときにムラが出たり、1〜2%の濃度差が出たりするんですが、それをどうやって解消するかなど悩みはつきませんでした。

フィルムの出力機はレーザー光線で焼き付けるのですが、温度によってレーザー光線が微妙に変動するので、その温度管理をどうしたらいいのかという問題がありました。さらに言えばラボの現像の管理の問題もありますし、最終的には感材メーカーで乳剤を塗る工程の精度まで行き着くわけです。そういう問題を一つ一つ解決していくところからスタートしているので、随分と鍛えられたと思います。

—— デジタルフォトレタッチの草創期ならではの苦労ですね。

村山 その当時の専用機は1台何億円もするので、今みたいに簡単に購入できません。弊社もレイアウトスキャナが1台きりしかなかったので、先輩が作業していると、私なんかは後ろで見ているしかないんです。まるで大昔の話のようですが、文字通り見て盗むわけです。で、先輩が休憩したり食事している間に、ちょっとずつ作業を覚えていく。マシンが1台しかないわけですから、何かトラブルがあったら取り返しがつかないので、何があっても大丈夫な仕事のやり方を叩き込まれました。コンピュータが変わっても、そこだけは変わりません。

—— レイアウトスキャナの時代が何年かあって、その次にPhotoshopになるわけですか。

村山 いえ、その次はシリコングラフィックスのコンピュータで動くレナクリエイターというソフトを導入しました。5年くらいは使っていたと思います。Photoshopはバージョン5.5からだんだん使うようになっていたんですが、グラデーションやブラシの精度、変形機能などが弱かったので、最初のうちはレナクリエイターと併用していました。それから何年かしてPhotoshop 7.0で完全に移行しましたが、それ以来ずっとMacを使ってきました。

—— その時代が10年近く続いた後に、HPのワークステーションになるわけですね。

村山 最初にHPにしようと言い出したのは弊社代表の甲斐なんです。甲斐は昔からものすごく長いスパンで写真の進化について考えていて、まだデジタルカメラもPhotoshopもなかった1988年に、「これからはデジタルフォトの時代だ」と言ってフォートンを立ち上げました。その甲斐が今度は、「これからの写真は動く。モーションフォトグラフィの時代だ」と言い出したんです。それで、写真と同じクオリティで動画のレタッチに取り組むための専門のチームが出来て、動画系のソフトに最適なマシンは何だろうという検証を行なった結果、Windowsの方がいろいろな動画系ソフトが使えることが分かり、最終的にHPを選択したというわけなんです。

—— HPのワークステーションは3DCGの世界で広く使われていますし、Infernoなどハイエンドの映像編集マシンでも採用されていますからね。

村山 私自身はまだ、止まっている写真のほうで手一杯の状態です。でも将来的に写真と3DCG、動画がどんどんミックスしていくのは確実ですし、いずれ自分もそちらの作業をすることになるでしょうから、今のうちにHPを使っておいたほうがいいなと考えたんです。HP Workstationは次の時代のレタッチマシンだと思います。


Windowsへスムーズに移行するための様々な工夫

—— Windowsにはすぐ慣れましたか。

村山 Photoshopの操作自体はWindowsでも同じなので、特に困ることはなかったですね。アクションの設定をMacから書き出して、読み込んだので、その日のうちにすぐWindowsに移行できました。ただしキーボードは使い慣れた物のほうが良いので、ユーティリティを入れてアップル製キーボードが使えるようにしています。それからショートカットキーがMacとは違うので、こちらもユーティリティで対応しています。Macでよく使うoptionキーは、WindowsだとAltキー。ほんのちょっとした違いなんですが、レタッチの作業をしているとストレスになってしまうので、すべてMacの時と同じ操作ができるように設定しています。それからマウスの右クリックはMacにはないので、すこし戸惑いましたね。今はIntuos4タブレットのホイール部分に右クリックの機能を登録しているので、マウスを使わなくても操作できるようになっています。

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キーボードは使い慣れたアップル製を使用。ショートカットキーもMacと同じ設定にしてある。

—— それぞれ、ちょっとしたことのように思えますが、Macから移行する人にとっては重要な情報ですね。

村山 Macしかさわったことがないと、そのちょっとしたことがハードルとなって移行できないかもしれません。私の場合は先行してWindowsを使っていた人が社内にいたので、いろいろと教えてもらうことができてラッキーでした。そのほかにWindowsで戸惑ったことといえば、本当に些細なことかもしれないですけど、ファイル保存の時の上書きの考え方が、微妙にMacと違うことですね。Macでは、いま作業しているファイルの名前を変えたいときは、Finderでファイル名を変更してから上書き保存すればいいんですが、Windowsで同じことをすると、新しい名前と古い名前のファイルが2つできてしまって、しかも新しいファイル名の方が古い中身のままになってしまうんです。

—— Windowsの動作が理解できれれば大丈夫なのでしょうが、慣れは必要になりますね。

村山 一番大変だったのはデータ移動の問題かもしれません。Windows のファイル名では使えないスラッシュやアスタリスク、クエスチョンマークなどの記号をたくさん使っていたので、ハードディスクに保存してあるファイルをWindowsから見ることができなかったんです。仕方がないので、過去にさかのぼってすべてファイル名を修正してからデータを移動したのですが、何テラバイトもあったので、それだけで1ヵ月かかりました。といっても私はコンピュータのハードウェアやシステムに強くないので、他の人に全部手伝ってもらったのですが(笑)。

—— それは大変でしたね。

村山 私自身としてはWindowsへの移行は1日で済んだけれど、それをお膳立てしてくれた人たちがいて、それに1ヵ月ほどかかったということですね。といっても私の場合はちょっと特殊で、一つの企業の仕事をわりと長く継続してやっていて、しかもその企業の数が多いので、過去のデータをなかなか消すことができないんですよ。だからデータの量がものすごいことになっていたんです。でも、普通の人はここまでデータの移動に時間はかからないと思います。


大きなサイズの画像でも安定して動作する安心感

—— HP Workstationのメリットについてもう少し具体的に教えて下さい。

村山 では、実際にZ400で作業した物を例にとってお話ししましょうか。たとえばここに、NTTグループさんのB0判2連ポスターのデータがあります。イチローさんの写真が並んでいますが、実際に見えているのは元の写真の一部なので、マスクで隠された部分やそれぞれの調整レイヤーまで含めると、全体の容量はものすごく大きくなります。写真を並べた状態で、全体で27,000×16,000ピクセルあります。

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日本電信電話 NTTグループ 「未来は夢から」篇  B0判ポスター2連
企画制作=NTTアド+電通+TUGBOAT+ブリッジ CD+AD=TUGBOAT C=道面宜久(TUGBOAT2) D=兵頭俊裕(ブリッジ) P=操上和美 デジタルワーク=村山輝代(フォートン)

村山 写真の配置はデザイナーの方が調整されるので、私の方では全体のバランスを見ながら1枚ずつ画像のトーンを作ったり、拡大率を変えています。そこで使ったのが、Photoshopのスマートオブジェクト。写真の拡大・縮小を繰り返しても画像が劣化しないという便利な機能です。このスマートオブジェクトを全画像で使用していますが、以前はこのぐらい膨大なデータで作業をすると、Photoshopが落ちてしまうことがよくありました。ファイルが小さければ問題ないのですが、マシンに相当な負荷がかかるこのような作業でも、HPではストレスなく作業できたので、ありがたかったですね。

—— スピードだけでなく、動作が安定するというメリットもあるわけですね。

村山 私たちレタッチャーは非常に大きなサイズの画像を扱うことが多いので、そういった安心感もメリットだと思います。

—— スマートオブジェクトは具体的にどうやって使うのですか。

村山 まず、イチローさんの写真はRAWデータから現像する段階でモノトーンになるように色を作っています。さらに1点ずつ人物を切り抜いて、背景のグラデーションに合成し、細長い短冊状のマスクをかけます。そして、画像を配置するためのレイアウト用のファイルを一つ別に作って、そこに写真を1点ずつスマートオブジェクトとして読み込みます。さきほども説明したように、スマートオブジェクトは拡大縮小を繰り返しても画像が劣化しないので、レイアウト違いのファイルをたくさん作ることができました。

もう一つスマートオブジェクトの便利なところは、元画像を開いて調整すると、それがレイアウト用ファイルにもすぐ反映されるところです。今までだと、元画像を調整したら、それをレイアウト用ファイルに読み込んで全体のバランスを確認して、今度は別の画像を調整する…という作業を延々と繰り返さなければならないのですが、スマートオブジェクトではその工程を簡略化できるわけです。アップの写真はできるだけコントラストを強くしたり、引きの写真は逆に抑え気味にしたり、あるいはこっちのグラデーショんは少し濃く見せようとか、1点ごとにかなり繊細に調整しましたが、作業はものすごく楽でしたね。しかし実際には、容量の大きなファイルがいくつも同時に開いているわけですから、マシンにとってはかなり負荷がかかっているはずです。

—— それでもHPのワークステーションはびくともしないんですね。

村山 Photoshopはバージョンアップするごとに便利な機能が搭載されるので、私たちレタッチャーにとってはありがたいのですが、マシンの方がそれに対応してくれないと結局仕事では使えません。そこへいくと、スマートオブジェクトを安心して使いこなせるHPのワークステーションは、本当にレタッチャー向きのマシンだなとつくづく思います。


撮影:坂上俊彦


関連情報
日本HP ワークステーション 製品ページ

HP Workstations

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HP Z400 Workstation
HP Workstationシリーズの中では比較的低価格なモデル。4コアのインテルXeonプロセッサーを1基搭載し、カスタマイズで6コアのプロセッサーを選ぶこともできる。村山さんが使用しているZ400は、CPUが4コアの2.66GHz、メモリが24GB、OSはWindows 7 Professional 64bit版という構成だ。詳細
HP Z210 SFF/CT Workstation
2011年4月に発表された省スペース型ワークステーション。Sandy Bridgeアーキテクチャを採用したインテルXeonプロセッサー E3ファミリーを搭載し、2コアと4コアが選べる。フォートンで短期間使用してもらったが、「レタッチャーのセカンドマシンとして使用するのに十分なスピード」という評価を得た。詳細

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