2012年02月23日
カラーボードを使った色調整の実例
ではカラーボードを使った実例を紹介しよう。前回「カラー調整の基本」の作例のように、撮影時にアンバー系に偏っている場合、カラーボードが役に立つ。「カラー」のグローバルコントロールを+側に少し持ち上げた後に、左右に振ってみよう。最も適正に思えるあたりまで持って行ったところで、その後はキーボードの矢印キーで微調整する。
その後、明部のコントロールで調整すると、明るい部分のカラーバランスが適正な値に近づくだろう。さらに暗部、中間の順で操作すれば最適なホワイトバランスになっているはずだ。最後に中間部を調整する理由は、総合的なバランスが取れている状態で人物の肌の色を調整するためである。
どうしても見た目だけでは調整しにくい時は、ウインドウメニューからビデオスコープの表示でRGBパレードを有効にしておくと、RGBそれぞれのレベルを確認しながら調整でき、追い込みやすくなる。ハイライトではRGB波形の上部を揃えるように、暗部では波形の下部を揃えるように意識すれば、バランスが整ってくる。中間コントロールは波形表示にはっきりと現れないが、このバランスが色の好みに大きく関わるので、最後に調整するといい。
部分的に色調整するためのシェイプマスク
部分的に色を調整したい場合は、カラーボードが表示されている状態で、もう一度Command +6を実行すると、ビデオのインスペクタに切り替わる。補正1の中の「シェイプマスクを追加」をクリックすると、ビューアに丸いエリアが表示されるので、これで目的のエリアを囲って、限定した部分だけに色調整を加えればよい(エリアの内外について独立して色調整できる)。下の作例では、マスクの内側だけに対して、「露出」で中間と明部を明るくしている。
シェイプマスクの内周にある緑のポイントでマスクの形状を変更し、白い点をドラッグすることで円形から角丸の四角に変更できる。外周の部分がソフトネスとなる。
モニタ設定はsRGB、6500K、ガンマ2.2
さて、これらの色調整を実行するには、適正なモニタキャリブレーションが行なわれていることが前提となる。フォトグラファーが使うモニタは印刷用途に合わせてキャリブレーションされていることが多いと思うが、その設定では映像の最終的な色を確認することができない。
映像編集用のモニタは、sRGBの色域、ガンマ2.2、白色点の色温度6500K、輝度80カンデラが標準になる。コンテンツの最終形がテレビ放送向けの場合には、色温度を9300Kにしなければならないが、この調整は別途ビデオテープに出力する時点で再調整することが望ましい。
ナナオのColorNavigatorなどのキャリブレーションソフトでは、セットアップを複数作成し、それらを簡単に切り替えて運用できるため、色温度の設定で6500/9300の2タイプを作成し、最終的なテレビ向けの発色のイメージを確認することができる。最終的なテレビ向けの調整は、VTRに書き出す時点で行なうのが望ましい。
山本久之 Hisayuki Yamamoto
映像技術者。マウントキュー株式会社( http://mount-q.com/ )代表。映像設備の設計・設置・導入やビデオ編集、映像技術コンサルティングなどを手がける。