2016年07月15日
Interview 加藤マニ(ディレクター)
加藤マニ監督は年間50本のペースで新作ミュージックビデオ(以下MV)を作っている。企画・撮影・演出・編集をほぼ1人でまかなうのが加藤マニのスタイル。2015年に行なったあるMVの現場でソニーα7Sの世界観に魅せられ、以後、このカメラで48本(2016年6月時点)のMVを手掛けている。
今回紹介する3本の新作ではそれぞれ全編ハイスピード(以下HS)撮影、全編グリーンバック合成、全編夜の渋谷で撮影というムービー撮影としてはかなり難しい設定に挑戦。α7Sはこれにどう応え、加藤マニ監督はどう感じたのだろうか。
企画を制限することのないカメラ“α7S”
日本コロムビア Czecho No Republic「Blue Holiday」
制作=manifilms Dir=加藤マニ+武井優心+タカハシマイ+山崎正太郎 P=加藤マニ Pr=長沼将樹 PM=武田麻衣子・池田耕太郎 T=内山愛・増田澪二
──Czecho No Republic「Blue Holiday」は全編HSで撮っています。
加藤 α7Sを使うようになってから一度はやってみようと考えていました。HSは実際の世界の見え方とは異なり、エモーショナルな映像になるので、意味を考えてみたくなるような絵になることを狙って、このMVで取り入れました。横須賀の猿島での撮影でしたが、全編手持ちで撮っています。
──全編HSだとストーリーを作るのが難しいんじゃないですか。
加藤 120Pだと5秒の素材が、24Pにすると25秒になるので、1カットの中の動きが極端に少なくなるのが難しかったです。ただ振り向くだけの動きでもじっくり見せる尺が必要になるというか。わたし自身もどうなっているのかわからない部分もあったので、通常よりも長めに撮っています。HSにしても手ぶれがほとんどなく、臨場感のある絵づくりができました。
Bermuda Entertainment Japan CUBERS「STAND BY YOU」
──CUBERS「STAND BY YOU」では全編グリーンバックに挑戦しています。
加藤 α7Sによる全編グリーンバックもこの時が初めてです。最初にグリーンバックで人物を撮り、オフライン編集した映像を見ながら背景を撮っていきました。ノイズが載りやすいカメラだとグリーンが抜きにくいんですが、α7Sは綺麗に抜けます。
グリーンバックの時はカット前後の構図がかぶらないように意識しています。バストショットを続けないとか、下手イン、上手アウトしたあとは正面からとか、人物の動きに変化をつけています。そうすることで人物の動きがいきいきしてきます。
グリーンバック合成は肌のグリーンかぶりが気になることが多いのですが、α7Sはグリーンの抜けもよく、トーンが作りやすいので、これからもっとグリーンバックを使った演出を試してみたいと考えています。
Natural Hi-Tech Records LOVERPHENIX「Four Seasons」
制作=manifilms Dir+P+Pr=加藤マニ Cas=辻朋江 T=中村みゆ・中嶋時男・大井理弘・松下勇・梅澤駿平
──LOVERPHENIX「Four Seasons」は夜の渋谷で撮影しています。
加藤 19時から22時。人気のないところに移動してだんだん暗くなっているんですけど、撮った映像を見て「暗いな」とストレスを感じたことがないので、光に気を付けようとか補助光を入れようなど、光を意識しなくなりましたね。肉眼で見ているよりも明るく撮れています。暗くなったらISO感度を上げて撮れば充分対応できるので、実際にやってみて夜の町ならば場所を選ばないなと感じました。カメラを構えたまま後ろ歩きで撮ったので怪しい人に見えていたと思いますけど(笑)。α7Sは企画を制限せず、いろんな要求に応えてくれるカメラです。
個人的にはXVAC 50Mbsとピクチャープロファイル7で撮影したあとのグレーディングを研究してみたいです。軽快な使い方には満足していますが、今後は重厚な絵づくりも覚えたいと思っています。
最高ISO409600を誇る高感度性能、4K出力を実現したフルサイズ一眼。
※インタビューの続きはソニー スペシャルサイト「α Universe」で公開中。
協力:ソニーマーケティング(株)
ソニーα Universe http://www.sony.jp/ichigan/a-universe/
- 【特集】 田中達也(後編):「クローズアップすると人形の塗装の粗まで見える。αの解像感に驚きました」
- 【特集】 田中達也(前編):「ミニチュア制作のきっかけは、Instagramの『いいね!』数でした」
- Vol.12 宮尾昇陽:ジャンルにとらわれず様々な映像を作るマルチなディレクター
- Vol.11 柘植泰人:その時その場でしか撮れないかけがえのない「瞬間」を切り取れるディレクター
- Vol.10 西村彩子:被写体に寄り添ってファンの喜ぶ表情を引き出すフォトグラファー
- Vol.9 スミス:実験的な手法を駆使して見る者を惹きつける映像を作るディレクター
- Vol.8 堀内僚太郎:被写体の気持ちに寄り添って、真剣に向き合うフォトグラファー
- Vol.7 岩元康訓:ワールドワイドで誰が見ても美しい映像を目指す映像ディレクター
- Vol.6 池谷友秀:水の中の人物の陰影をα7SⅡで表現するフォトグラファー
- Vol.5 梅澤 勉:MoVIを駆使して臨場感のあるムービー制作に挑戦するフォトグラファー
- Vol.4 藤代雄一朗:見慣れた風景をかけがえのない映像に変える映像作家
- Vol.3 星野尚彦:8×10でしか撮れなかった濃密表現をα7RⅡで具現化
- Vol.2 奥藤祥弘:MVからライブまでマルチカメラ収録の醍醐味を語る
- Vol.1 加藤マニ:年間約50本のMVを量産する撮影の秘訣とは