2008年01月30日
ColorEdgeシリーズ全6機種のうち、CG19、CG211以外の機種はワイドモニターです。ワイドモニターは言うまでもなく画面の広さが一番の特徴です。Photoshopのツールパレットを開きながら画像を大画面で表示できますので、作業効率が大変良くなります。ワイドであればシングルモニターでも作業性は十分だと思いますが、今回はColorEdgeをデュアル接続したときの効果的な使い方を2つご紹介したいと思います。
① 同じ画像を2つ表示して、片方に「色の校正」をかける
私は現在CG241W+CG221のモニター環境でレタッチを行なっていますが、ここでは私が実践している、RGB画像で作業を行ないながら、同時にもう一方のモニターでCMYKをシミュレーションする方法をご紹介します。
まずプライマリモニター(CG241W)に対象の画像を表示します。次にPhotoshopの「ウィンドウ」メニューから「アレンジ」→「(画像ファイル名)の新規ウィンドウ」を選択すると、同じ画像を2つのウィンドウで表示することができます(「イメージ」メニューの「複製」ではありませんので注意してください)。通常、「新規ウィンドウ」はメニューバーからマウスで選択しますが、マウス操作では若干面倒なので、私はこれにショートカットキー(コントロール+シフト+コマンド+W)を割り当てています。
メニュバーから「新規ウインドウ」を選択する | 「新規ウィンドウ」のショートカットを割り当てる |
CG241W側に2つのウィンドウが表示されたら、一方をセカンダリモニター(CG221)の画面にドラッグします。新規ウィンドウでは、一方に画像の処理を施すと、その結果が両方のウィンドウに反映されます。仕組み自体はとても簡単ですが、この機能をデュアルモニターで使用すると、かなり作業性が上がります。
セカンダリ(CG221)側に表示した画像には「色の校正」(コマンド+Y)をかけて、CMYKのシミュレーションを行ないます。校正条件には印刷の色基準を使用します(平台枚葉印刷機の場合はJapan Color 2001 Coated、輪転機の場合はJapan Web Coated(AD))。さらに「色域外警告」(コマンド+シフト+Y)を合わせてかけておくと、CMYK変換時の色の変化を予測することができます。最終的なCMYK変換とその後の調整は製版・印刷に任せた方が良いので、色域外警告が完全に消えるまで神経質に彩度を下げる必要はありません。あくまでもこの警告は参考程度に考えてください。
セカンダリモニターには「色の校正」をかける | 「色域外警告」をかけると、印刷で再現されない色がグレーで表示される |
デュアルモニターでRGBとCMYKシミュレーションを同時に表示すると、レタッチ作業がとてもやりやすくなるのではないでしょうか。私の主業務はインクジェットでのファインアートプリント制作ですので、校正設定にインクジェットプリンタのICCプロファイルを当てて、プリントの仕上がりをシミュレーションしています。この方法で作業をするようになってから、無駄なプリントが減り、作業効率を向上させることができました。業務で使用するインクジェットペーパーはそれなりの値段がしますが、これなら無駄なコストを掛けなくてすみます。また同時進行で何作品も動かしている状況では、プリントする手間と時間を省けるソフトプルーフによって、9割がたまで追い込めるメリットは計り知れません。
ColorEdgeのようなカラーマネジメント対応モニターはイニシャルコストが高いのですが、作業効率の高さや品質精度を的確に追求できることを考えれば、結果的にコストパフォーマンスは良いのではないでしょうか。
② 他のモニターの表示状態をエミュレーションする
2007年12月に、ColorEdgeシリーズのキャリブレーションソフトColorNavigatorが、バージョン5.0になりました。ColorNavigatorは非常に使いやすいソフトですが、私自身、このソフトの特徴的な機能として感じているのが、ここで紹介するエミュレーション機能です(詳細は茂手木秀行氏の「ColorNavigator5.0徹底研究」を参照してください)。このエミュレーション機能は、調整済みのモニタープロファイルを読み込ませることで、他のモニターの表示をシミュレーションできるというものです。Adobe RGB相応モニターであればsRGBモニターをシミュレーションすることができます。この機能に加え、ColorNavigator 5.0で新たにバリデーション(検証)が実装されたことで、リモートプルーフやソフトプルーフの実用性が一気に高まると考えています。
モニタープロファイルを読み込む | 読み込んだプロファイルの表示状態を再現する |
今回、一緒に連載をしている茂手木さんに協力してもらい、エミュレーション機能の実験を行なってみました。下の画面は、茂手木さんが使用しているCG19のプロファイルを、私が使用しているCG221でシミュレーションしているところです。CG19はsRGBモニターですが、そのプロファイルをCG221側でエミュレートすれば、茂手木さんのモニターを横に並べたのと同じことになるわけです。
CG221でCG19のモニター表示をエミュレートしているところ
モニタープロファイルは数キロバイトの軽いデータなので、メールに添付するだけで、遠く離れたColorEdgeユーザーに送ることができます。プロファイルひとつでこんなことが実現してしまうなんて、CMS技術の進歩を実感するところです。加えてビデオチャットなどを併用すれば、同じ空間にいなくても、会話しながら画像を作り込むことが可能ですし、Apple Remote DesktopやMac OS X 10.5 Leopardの画面共有(vnc)を使ってインターネット経由で互いのPCを接続し、処理の過程をモニタリングしてもらうことなども簡単にできてしまいます。ColorNavigatorはバージョン5.0.1からLeopardに対応しています。
ColorEdgeを共通デバイスとして、遠隔地同士でもクリエイティブな共同作業ができてしまうということは、制作アプローチそのものを変えてしまうほど大きな力を秘めていると思います。デジタルワークフローにおいては設備・環境を整えることが重要なのです。
お勧めのツールとTIPS
ソフトプルーフを行なう上でお勧めしたい自作ツールが一つあります。右の写真をご覧ください。オペレータの背後にグレーでプリントされた無彩色のパネルを設置しています。第4回で少しご紹介したものです。液晶モニターは映り込みをそれほど気にしなくても大丈夫ですが、私はモノクロの制作の場合などによく使います。パネルはもちろん自作です。グレー(L50)をインクジェットプリンタでプリントしたものをゲータボードに貼っています。それを3面連結し、コの字型に配置し、周囲からの色の映り込みを抑えています。
それからTipsを一つ。「新規ウィンドウ」を開いて片方の画像を拡大して見ると、もう一方の表示サイズと位置は元のままです。このとき両者を連動させるには「ウィンドウ」メニューの「表示サイズと位置を一致」を使います。この機能を使うには、まず、プライマリ側の画像をアクティブにしておく必要があります。さらに拡大表示して表示サイズ・位置を一致させ、シフト+スペースキーを押しながら画面をドラッグすると、2つの画像を連動させて動かすことができます。とても使いやすいのでお勧めします。
小島勉 Tsutomu Kojima
株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。