印刷の品質を支えるプリプレスの現場から

第9回 モニターと出力物の観察環境を構築する ~トッパン画像工房~

解説:小島勉

印刷におけるCMSは、光源の色温度をきちんと5000K(D50)に整え、周りに影響しないよう、壁や天井の色はなるべくグレーで統一された環境の構築が推奨されています。画像処理の過程や出力結果を、いつでも安定した環境下で見ることができれば、作業面でもストレスなく効率的に進めることができます。私が所属しているトッパングラフィックコミュニケーションズでは、画像工房という専用のルームを板橋工場内に開設しています。モニターを見るだけでなく、DDCPなどの実際の出力物と併せて観察しながら、印刷シミュレーションができるようになっています。 

トッパンでは、印刷会社としてはかなり早い段階にDDCPを導入しました。現在ではコニカミノルタグラフィックイメージングのカラーデシジョンII、デジタルコンセンサスプレミアムを主力機種として、それぞれの印刷物のワークスタイルに合わせて使用しています。また画像処理を行なうためのモニターは、2004年にColorEdgeが大量に導入されて以来、ColorEdgeがトッパンの標準モニターとなっています。そしてモニターとDDCP、そして実際の印刷物の色は、この連載の第3回でも紹介したように、かなり高い精度でマッチングしています。


コニカミノルタのDDCP カラーデシジョンII

トッパンの社内ではColorEdgeが標準モニター

画像工房での作業の進め方は基本的に、クライアントに現場へ来てもらって、オペレータやプリンティングディレクターなどとの直接対話ができるような体制を構築しています。その場で画像を作り込み、DDCPによる印刷シミュレーションを随時行なうことで、画像調整にかかる負荷を軽減するこができます。結果として校正回数を少なくできますので制作コストも抑えられます。

将来的にはモニタープルーフが色校正の主流になっていくと思いますが、やはり印刷物を扱う我々にとって、紙に印刷された状態で確認できることも重要であると考えています。その場でDDCPによる印刷シミュレーションを行なったり、要望に応じて事前に校正刷りを作成したり、光源まで管理されたルームで画像を確認しながら作り込みができるのは、印刷会社ならではだと思います。印刷現場と直結しているので、印刷機長も含めたトータルな打ち合わせも可能になります。これもモニターや出力物を正確に見るための環境が安定しているからこそ可能なのです。今後は、ほかの印刷会社でも、このような専用ルームが設置されるようになるかもしれません。

さていよいよ次回で、この連載も最終回。一緒に連載をしている茂手木さんとのコラボレーションで、印刷物制作のワークフローを再現してみたいと思います。私の担当はDDCPでの色校正の出力。茂手木さんからRGBの画像データを送ってもらい、ColorEdgeとColorNavigatorの機能を使ってそれを観察しながら、どのようにDDCPを出力するかまでをご紹介したいと思います。乞うご期待!

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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