2017年02月16日
キヤノンのフルサイズ一眼レフカメラEOS 5D Mark IVは、画素数約3040万画素、4K動画にも対応し、プロフォトグラファーの注目を集めている。今回は小松正幸氏に、映画撮影用のEFシネマレンズとの組み合わせでシネマライクな写真を撮り下ろしてもらい、使用感を語ってもらった。
EOS 5D Mark IVにEFシネマレンズをつけて映画のような写真を撮る
写真①:EOS 5D Mark IVに映画用のEFシネマレンズをつけて撮影した写真。使用レンズはCN-E50mm T1.3 L F。
──今回使用したレンズは映画用のEFシネマレンズです。どうしてEOS 5D Mark IVにEFシネマレンズをつけたのでしょうか?
小松 2008年にEOS 5D Mark IIが出た時、動画でも被写界深度の浅い画が撮れるようになったことに衝撃を受けて、テレビCMなどの仕事でも、よく使いました。それから2世代を経て動画の機能がどのくらい進化したのか興味がありましたし、キヤノンからはEFシネマレンズも出ているので、このレンズで映画のような動画と写真を撮ってみたいと思ったんです。
──レンズ以外でも映画を意識したところはありますか?
小松 そうですね、まず照明はストロボではなく定常光でやりたかったので、普段からCMの撮影でよく一緒に仕事をしている照明部に参加してもらいました。それから国内外で数多くの映画に参加しているヘアメイクさん、国際的にファッションで活躍しているスタイリストさんにお声がけをして、広告、映画、ファッションの枠を超えた世界を作ろうと思いました。
──実際にできあがったものを拝見すると、たしかに映画のスチールのようでもあり、ファッション写真のようでもありますね。
小松 撮りながら自分でも、「これだと写真になりすぎるかな」と悩みながら進めていたのですが、やりたかったのはストーリーを織り込むこと。ファッションや商品を見せるための表情や構図ではなく、写真とムービーの境界を撮ろうと思っていました。
写真②③:記事冒頭の写真と同じシチュエーションで、CN-E135mm T2.2 L Fを使用。
タッチパネルの採用によって撮影・再生の操作性が向上
──EOS 5D Mark IVとEFシネマレンズの組み合わせはいかがでしたか?
小松 EFシネマレンズは口径が大きいのでレンズ設計の面で無理をしていないし、通常のEFレンズに比べていい意味での柔らかさがあり、絞り羽根が多いので円形のボケがきれいだと思います。狙い通りのシネマライクな画が撮れました。
EOS 5D Mark IVはタッチパネルがすごく操作しやすかったですね。各種の設定が簡単だし、画像を送ったり、拡大したり、動画の再生も指先ひとつでできる。今回はマニュアル操作専用のレンズなので使用していませんが、動画撮影の時に液晶モニターをタッチするとそこにピントが合う機能も便利です。
画素数が3040万画素に増えたし、4K動画も撮れるし、高感度にも強くなっているので、写真用としてもムービー用としてもバランスの良い仕上がりになっていると思います。
写真④:CN-E135mm T2.2 L Fを使用。EFシネマレンズは写真用レンズに比べて描写が柔らかいので、シネマライクな表現に適している。
写真⑤:このシーンは暗いのでファインダーではなくライブビューでピントを確認したが、162万ドットの高精細液晶が威力を発揮した。レンズはCN-E50mm T1.3 L F。
──ムービーの仕事もされている小松さんはCINEMA EOSもよく使うと思いますが、それと比べてどうですか?。
小松 CINEMA EOSに限らずですが、最近のデジタルシネマカメラはLog撮影ができるようになっています。Logだとカラーコレクションで色を作り込んだり、マルチカメラの色合わせをする際に便利なので、EOS 5D Mark IVもぜひLog撮影に対応してほしいですね。
EOS 5D Mark IIの頃と違って、最近はテレビCMの仕事でEOSを使うことはほとんどありません。でも、もしEOS 5D Mark IVがLogに対応したらCINEMA EOSと組み合わせて使えるし、小型軽量のボディを活かした撮影が可能になります。一眼ムービーの世界を切り開き、業界をリードしてきたEOS 5Dシリーズならではの今後の展開に期待したいと思います。
EFマウントを備えた映画用レンズのEFシネマレンズは現在13本のラインナップが揃っている。今回は単焦点のPRIME Lensシリーズの中から35mm、50mm、85mm、135mmを用意した。通常のEFレンズよりも口径が大きく、動画でのフォーカス送りがやりやすいようにフォーカスの操作角度が約300度と大きいのが特徴。絞り、フォーカスともマニュアル操作専用で、ボケ味が柔らかく美しい11枚絞り羽根を採用している。
日本大学芸術学部写真学科卒業。博報堂フォトクリエイティブ(現・博報堂プロダクツ)を経て、2007年、KOMATSU PHOTOとして独立。スチール、CM等、広告を中心に活動。
制作スタッフ P=小松正幸 L=森下善之(みこし) ST=Yoshi Miyamasu(SIGNO) HM=橋本申二(atelier ism) Model=国木田彩良(Image)・山田亮平(Image) Ret=中西信(グラデーション) 撮影スタジオ=スタジオヴァンス owlcompany.net/vence/
衣装 写真①②③ :(woman)dress, vest / Saphir East, earrings, bracelet / FIONA PAXTON (man)shirt, vest, pants / Kazuki Nagayama
写真④ :(woman)dress, bag / motonari ono, choker / Saphir East, bracelet / RODRIGO NEWYORK BY RODRIGO OTAZU (man)jacket, shirt, pants / Kazuki Nagayama
写真⑤:(woman)dress, tulle / THE DRESS BY FLICKA, bracelet / RODRIGO NEWYORK BY RODRIGO OTAZU, clutch / LOEFFLER RANDALL, necklace / matsuzaki (man)coat, jacket, shirt, pants / Kazuki Nagayama
※この記事はコマーシャル・フォト2017年1月号から転載しています。