2016年04月08日
キヤノンのプロフォト市場向けデスクトッププリンターとして初めてA2サイズを実現したimagePROGRAF PRO-1000。大判プリンターを日常業務で使用している小島勉氏と、撮影と出力に造詣の深い南雲暁彦氏に話を聞いた。
プロフォト市場をターゲットにしたインクジェットプリンターとして、キヤノンからimagePROGRAF PRO-1000が発売された。プリントサイズは現行のPIXUS PRO LINEを上回るA2サイズで、インクは12色の顔料インク、さらにキヤノン製品の最高品質の証とも言える「レッドライン」のデザインをプリンターとして初めて採用するなど、A2プリンターの最高峰を目指したモデルだ。
新開発のプリントヘッド、インク、画像処理エンジンによってフォトプリンターとしての画質に磨きをかけ、高速プリント、大容量インクタンク、エアー吸着給紙システム、カラーキャリブレーションなど、大判プリンターゆずりの機能を数多く搭載。画質面ではPIXUS PRO-1のDNAを、生産性・安定性の面では大判プリンターimagePROGRAFのDNAを受け継いでいると言えるだろう。
そこで、インクジェットでの作品プリントを手がけているプリンティングディレクターの小島勉氏と、印刷やプリントにも詳しいフォトグラファーの南雲暁彦氏に、このPRO-1000を試用してもらい、その実力を検証してみた。
こじま・つとむ (右)トッパングラフィックコミュニケーションズ第二制作本部 GA部所属、インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。
なぐも・あきひこ (左)
凸版印刷 トッパンアイデアセンター映像企画部所属、チーフフォトグラファー。海外ロケを得意とし世界中をフィールドに映像制作を行なう。
高画素カメラに相応しい表現力を備えたプリンター
撮影時の機材はEOS 5DsとEF35mm F1.4L II USMを使用。Print Studio Pro経由で出力したPRO-1000のプリントを複写して掲載した。
───PRO-1000でプリントした第一印象はどうですか?
小島 これまでのインクジェットプリンターとは次元が違う、それくらいの衝撃を受けました。解像感があって発色も鮮やかだし、シャドウが締まるのにハイライトの抜けもいい。インクが新しくなったことでモノクロの品質もワンランク上がったし、顔料のウイークポイントとされていた光沢感、透明感が出るようになった。これまで目的に応じて染料機と顔料機を使い分けていましたが、これからは1台で全てカバーできるような気がします。
南雲 僕はカメラの性能をギリギリまで引き出すような撮影をよくやるのですが、そうやってチャンピオンデータとして撮ったものを、チャンピオンデータとしてアウトプットできるものがついに出てきたという印象です。最近カメラが高画素化してA2サイズでも耐えられるようになったということもありますが、このプリンターは大きさも含めて、撮影の時に感じた感動がそのまま出てくる。これこそ、あの時見た景色だよ! という興奮を覚えます。
───今回プリントした写真はどんなカメラで撮影していますか?
南雲 小島さんには10枚くらいA2で出力してもらいましたが、そのうちギリシアのザキントス島の写真はEOS 5DsにEF35mm F1.4L II USMをつけて撮っています(写真上)。約5000万画素のカメラとすごいキレ味のレンズの組み合わせですが、自分でもここまでの大きさで見たのは初めてで、驚愕しました。ディテール描写や立体感、水の透明感など、肉眼でもこんなに見えていたかな、と思うほど。
小島 解像感はすごいですよね。でもソフトウェアでシャープネスを上げているわけではなくて、プリントプラグイン「Print Studio Pro」の新機能、コントラストリプロダクションをオンにしているだけです。
南雲 僕も、現像の時に「ディテール重視」のピクチャースタイルを選んで、シャープネスを細かく設定しただけで、それ以外は何もやっていません。
───それでもこんなにシャープなプリントができるんですね。コントラストリプロダクションをオフにしたものも拝見しましたが、たしかに鮮鋭感は違いますね。
小島 この機能は擬似的にシャープネスを作り出すものではなく、画像が本来持っている鮮鋭感を忠実に再現するそうです。メーカーの味付けでないところはとても好感が持てました。もちろん、すべての画像に対して有効ではないでしょうが、高画素カメラに相応しいプリンターであることは間違いないと思います。
南雲 そもそも今回使ったレンズのキレ味も、この見事なプリントの要因の一つだと思うんですが、入力から出力まで一気通貫でシステムを組めるキヤノンならではの強みを感じます。
大判プリンターで培われた技術を惜しみなく投入
───そのほかプリントした写真についてはいかがですか?
南雲 2月に発表されたばかりのEOS-1D X Mark IIの画像もプリントしてもらいました(写真上)。画素数は約2000万画素と5Dsより少ないんですが、そのぶん1画素あたりのサイズが大きいので、データの質は高い。黒がすごく締まるし、彩度の高い赤が表現できるんです。PRO-1000でもそれがしっかり表現できていたのは嬉しいですね。
小島 微粒面光沢用紙で出力したので、そのせいもあるんでしょうが、赤い衣装の光沢感や素材感がよく出ています。
南雲 シャドウから立ち上がるグラデーションがきれいで、ノイズが乗っていない。今回の1D X Mark IIで特筆すべきなのはシャドウ部の美しさなんですが、それはPRO-1000も同じですね。
小島 今までの顔料プリンターだとシャドウ部が急に落ち込んだり、暗部のトーンのつながりが悪くなったりしますが、そういう心配は全く必要ないですね。
───同じ12色顔料インクのPIXUS PRO-1と比べてどうですか?
小島 新インクのおかげで全体に色域が拡大していますが、PRO-1にあったダークグレーに代えて、ブルーを搭載したことが一番大きいと思います。特にブルーバイオレットからレッドの色域が拡大しています。フォトブラックも色材を新たにしたことで、黒の締り、暗部の表現がさらに向上しています。PRO-1000のほうがいきいきと躍動感がありますね。
南雲 作品プリントのサイズとしては明らかにA2の方がいいですね。去年開いた写真展ではA2のプリントを基本的なサイズにして、それにA0を何枚か組み合わせたんですが、そういう意味でA2サイズのプリンタはとても使い勝手がいい。
小島 プリント時の振動を抑える高剛性シャーシとか、用紙裏面側から吸引して用紙の挙動を抑えるエアーフィーディングシステムとか、大判プリンターで培われた技術が惜しみなく投入されているのがいいですね。プリント中は全く揺れないし、エアーフィーディング以外の音がしないので、とってもラグジュアリーな気分でプリントできます。
12色顔料インクを採用したA2プリンター。黒インクの切り替えの必要がなく、印字速度が高速化され、スマートフォン等にも対応するなど、使い勝手は良好。発売は2016年2月25日、想定価格は税別159,800円。
※この記事はコマーシャル・フォト2016年4月号から転載しています。