2014年08月13日
本格的に動画のプロをターゲットにした一眼カメラ
パナソニックが本格的にプロをターゲットとした4KフォーマットのGH4を発表し、そのテスト撮影を行なった。まず手に持った瞬間の印象はとにかくボディが小さいこと。「このボディで本当に4Kが撮影できるのか?」と思うぐらいの大きさに驚かされた。モニタも3インチと小さいがバリアングルの有機ELが採用されていて解像度がいいのでピントあわせに重宝する。
特筆すべきは今まで業務用のビデオカメラにしか搭載されてなかった0.1単位でシャッタースピードを変更できるフリッカー対策機能の「シンクロスキャン」や黒レベル調整の「マスターペデスタル」、ガンマカーブにも似た「ハイライトシャドウ」などの機能がついていること。一眼ムービーではほぼなかったカラーバー表示も可能で、外部モニタとの画質マッチングの際にはとても重宝する。
またHDではあるがバリアブルフレーム記録がHS撮影やアンダークランク撮影も可能となっていて、HSは最高96fpsまで可能で、24コマ/秒の場合は4倍速まで可能になった。この辺りはバリカムを世に出したメーカーのお家芸だと思われ、ちょっとしたスローの画が欲しい時には大変便利である。さらに4K外部出力ユニットを使用すればQuadLink 4Kが非圧縮で出力でき、プロフェッショナルユーザーを充分意識した拡張性を備えている。
ただし、厳しいことを言えば、大型センサ全盛の時代にマイクロフォーサーズサイズではボケ味も作りにくく、全体に硬いトーンでビデオっぽい画になってしまう。
折角4Kで撮影可能だったりHSも撮影できるのにそこは物足りないし、表現力の幅がないように思える。またこのGH4のフォトスタイル機能は撮影前や現場でトーンを調整することを前提としているように思える。シネスタイルDもLogという感じではなく、そこは現場調整を前提とした設計になっているようだ。
しかし実際にこのミドルレンジの機材で現場にDITスタッフを呼ぶことはなかなか厳しいだろうし、一眼ムービーの手軽な撮影と考えるとカメラマンと助手一人といった現場になることが多いだろう。その場合は、現場でトーンを作るよりも、とりあえずRawやLogで撮っておいて後処理でトーンを調整した方がやりやすいのではないだろうか。本体だけではなく、撮影データも軽く、編集もしやすいので、撮影条件を考慮すれば活躍の場も広がるだろう。
マイクロフォーサーズのレンズ違いのボケ味はどうか
大型センサ全盛の現在でマイクロフォーサーズのカメラを使用した撮影はほぼ皆無なので、17.3mm x 13mmサイズのデジタルセンサーでどれぐらいのボケ味が得られるのかテストしてみた。
25mm
この被写体までの距離感であれば5D Mark IIなら25mmでも背景は充分ボケるが、マイクロフォーサーズではやはりボケ味が得にくかった。
50mm
50mmになると少しボケ始めるがノーマルだとシャープネスが強く、少し硬い印象。
70mm
70mmになるといい雰囲気のボケ味になるが、50mmよりも上のレンズを使うとなると室内などでは引きじりが必要でなかなか厳しい。
シネライクDのプリセットで明るさ補正してみる
シネライクD露出アンダー
シネライクDのプリセットでフェイスをノーマルより2絞りアンダーで撮影し、2絞りアンダーで撮影した素材をDavinciでブラックレベルを持ち上げ髪の毛やフェイスの戻り方やノイズの出方などの検証を行なった。
フェイスをノーマルに戻した画像
通常Logで撮影できるカメラの特性として明部の戻りに強いか、暗部の戻りに強いかに分かれるが、GH4は暗部の戻りに関してはブラックレベルを持ち上げてもノイズは出にくく、情報も残りやすかったが、明部は比較的飛びやすい傾向にある。
様々な条件下での撮影
逆光(寄り)
背景に明部だけの厳しい逆光条件下の撮影だが、フェイスに感じるグラデーションなど、とても美しく撮影できている。また、フラットな対象物のマッハバンド(明暗の帯状領域)などのにじみもなく、見た目に忠実に再現されている。
カスタムフォトスタイルでの発色
カスタムフォトスタイルを使用して赤(R)の色味を立たせ、少し黒(B)を入れるプリセットを作って撮影してみた。写真のような曇りでねむい条件下の撮影でもカスタムを作ることで、発色のよい撮影が可能である。
4K素材のトリミング
今回は29.97pで撮影したので画面サイズは4Kウルトラ HD(3840 x 2160)でDCI4K(4096 x 2160)ではないが、それでもHDサイズの4倍の面積があるので理論値で2倍のトリミングが可能である。
ISO感度の違いによる暗部ノイズの違い
ISO800
ISO1600
フォトスタイル設定はシネライクDでISO感度アップによる暗部のシグナルノイズを検証してみた。GH4でシネライクD収録したデータをグレーディング調整してみた。
ダイナミックレンジの幅があり調整しやすかったのはISO400からISO800の設定。そこで感度アップはISO800以降を検証した。写真ではサイズダウンしているので粒子感がわかりにくいかもしれないが、素材を見るとこれがかなり優秀で、拡大してやっと粒子を感じる程度、ISO6400で粒子かな? というぐらいしかわからない。状況によってはISO6400でも使用可能だろう。
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
モデル:konoe riko
※この記事はコマーシャル・フォト2014年7月号から転載しています。