2018年01月17日
ヴォンズ・ピクチャーズの石川翼氏は、アートディレクターの仕事に加えて5年前から映像ディレクターとしても活躍している。普段、液晶ペンタブレットでデザインや映像の仕事をしている石川氏に、発売前のHP ZBook x2 G4 Detachable Workstationを試用してもらい、液晶ペンタブレットとしての性能や、ノートPCとしての使い勝手などについて話を聞いた。
HP ZBook x2 G4 Detachable Workstation。ペン入力に対応し、キーボードと分離して使うことも可能
液晶ペンタブレットは直感的に作業ができる
──最初に石川さんのプロフィールを教えてください。
石川 10年くらい前にデザイナーとしてヴォンズ・ピクチャーズに入社して、いまはアートディレクター兼映像ディレクターとしてやっています。映像については大学時代から個人的にずっと勉強していて、5年くらい前に弊社が映像の仕事を始めるようになったタイミングで僕も映像の仕事を始めました。ここ最近は映像の方が多くなっています。
──どんな映像を作っていますか。
石川 Webムービーだったり、テレビCMだったり、イベント用の企業のプロモーション映像だったり、結構いろいろやらせていただいています。最近だとデジタルサイネージが増えていますね。
アートディレクター兼映像ディレクターの石川翼氏
──どんな環境で仕事されていますか。
石川 社内に3DCGのスタッフやコンポジターなどが4、5人在籍しているので、彼らと一緒にチームを組んで映像を作っています。コンピュータとしてはMac Proを、入力のデバイスとしてワコムの液晶ペンタブレットCintiq 27インチを使っています。
──映像の仕事でもペンタブレットを使うんですか。
石川 普段は映像のコンテを描いたりデザインを行なったりすることが多いので、そういう作業にペンタブレットは必須ですね。以前はいわゆる板タブを使っていたのですが、液晶タブレットを使うようになってより直観的に作業ができるようになりました。画面に直接描くような感じに一度慣れてしまうと、もう板タブには戻れないですね。
僕の場合はコンテの段階で細かい構図はもちろん、ライティングもわりとこだわって作っています。コンテの段階でできるだけ最終的なイメージをクライアントさんと共有したいと思っていますし、3DCGのスタッフともイメージを共有する必要があるので、コンテの完成度はわりと重視しています。
コンテを描くときは基本的にはPhotoshopを使ってイメージを作っていくので、画面に直接描ける液晶タブレットの方が、コンテの完成度が上がるんじゃないかなと思っています。
石川氏の作業環境。普段使用しているのはMac Proと27インチの液晶ペンタブレット
ワコムの液晶ペンタブレットCintiqと比べても遜色ない描き味
──今回はHP ZBook x2を使っていただきました。本体とキーボードが分離して、液晶ペンタブレットとして使うことができるワークステーションですが、まずペン入力の使い勝手はいかがでしたか?
石川 ペンの入力がすごく滑らかで、レスポンスもスムーズだし、ペン自体も軽くて手になじむ感じでした。液晶タブレットのペンって画面に対してちょっとすべり気味になる感覚があるんですけど、そういった部分もなくて、紙に手で描いている感覚にすごく近いなという気がしました。いま使っているCintiqと比べても、描き味に関しては遜色ないと思います。
色の再現性とか発色については、むしろZBook x2の方が優れている気がします。Cintiqはけっこう輝度が高いのでずっと向き合っていると目が疲れるんですけど、ZBookの場合はずっと向き合って描いていても目が疲れない、自然な感じの輝度になっているので、そこはいいなと思いました。
ワコムの技術をもとに独自開発したペンが付属。ディスプレイの色域はAdobe RGB カバー率100%
──液晶画面のサイズについてはどうですか?
石川 いま使っているCintiqは27インチで、それはそれで利点はあるんですけど、こちらのほうは14インチのノート型なので、持ち運びできるのが大きな違いかなと思っています。
僕のデスクは本社と別のビルにあるんですが、3Dのスタッフは本社の方にいます。打ち合わせの時は僕がそちらまで移動することが多いんですけど、そういった場合にもZBook x2を持ち運んで、彼らと一緒に画面を見ながら打ち合わせができる。自分の好きな場所で、今までと同じ作業ができるのはとてもいいですね。
──ZBook x2の画面はタッチパネルになっていますが。
石川 Cintiqにもタッチ操作に対応したモデルはあるんですが、僕が使っているのは対応していないモデルなので、今回初めてタッチ操作を体験しました。指で画面を拡大縮小したり動かしたりしながら描くと、本当に描きやすいですね。
描いている時に画面に手が当たると、思わぬ動作をしてしまうこともあるんですが、そういうときは画面のすぐ隣にあるクイックキーでタッチ操作をオフにします。このクイックキーは、よく使うショートカットキーをすぐに呼び出せるボタンで、タッチ操作のオン・オフのほかにも、ブラシサイズを大きくしたり小さくしたり、操作の取り消しなどができるので、効率良く作業ができます。
画面の隣にあるクイックキーで、ブラシのサイズ・硬さの変更、タッチON/OF、取り消しなどを呼び出せる
──クイックキーを使えばキーボードがなくても大丈夫なんですか?
石川 全く使わないというわけにもいかないのですが、その場合でもキーボードを分離して隣に置いて使えるのがいいと思いました。キーボードがワイヤレスで動作するのは優れていますね。
キーボードはBluetooth接続対応なので、本体と分離した状態でもキー入力が可能
──キーボードを完全に取り外してタブレットとして使うこともできます。
石川 タブレットモードだと、たとえばこういったソファに座ってくつろぎながら描くこともできるし、キーボードがないので画面により近づいて描けますね。画面の向きを縦にしたり、横にしたりできるのもいいですね。線によっては、画面を縦や斜めにして描いたほうがきれいな線が描けることもあります。
本体だけをタブレットのように使うこともできる
──ちょっと実際の作業を見せていただけますか?
石川 これは弊社の年賀状のために作ったヴォン太くんというキャラクターなんですが、3DCGで出来ています。3DCGソフトから書き出したままだと細かい毛のディテールが足りないところがあるので、Photoshopのブラシツールを使って隙間を埋めたりしています。それから、ゆがみツールでちょっと口角を上げたりもしています。
Photoshopでのレタッチ作業はペンを使うとはかどる
──ペンの方が作業しやすいのは、やはりブラシツール、ゆがみツールなどになりますか。
石川 そうですね。写真のレタッチではディテールを描き込んでいくことはよくありますし、デザインの作業でも画像をいろいろと変形することは多いですね。ブラシや変形系のツールは、マウスではなかなかうまくいかないところがあって、ペンタブレットじゃないと作業がしにくいですね。
静止画だけでなく動画の編集作業にも威力を発揮
──普段使っているMacと比べるとどうですか。
石川 ZBook x2のOSはWindows 10 Proなので、OSの操作とかショートカットキーなどの違いはもちろんあるんですが、Adobeのアプリケーションを使っている限り、操作性の面での違いはあまり感じませんでした。
むしろ動画の処理能力はこちらの方が上だと思います。動画ソフトのAfter EffectsとかPremiere Proなどは、エフェクトなどを実行する時にGPUを使った高速処理が可能になっているんですが、MacのGPUはそれに対応していなくて、Windowsマシンの方が恩恵を受けられることを実感しました。
──動画編集だとサクサク動くんですね。
石川 GPUを使う処理というのは、たとえば細かいパーティクルを出したりとか重たい作業が多いんですけど、そういった処理をAfter Effectsで行なう時に違いを感じますね。それからメモリも16GBと充分にありますので、スペック的には動画編集にも使えるぐらい充実していると感じます。
After Effectsでパーティクルを実行しているところ
──Premiere ProだとGPUはどういう時に効いてくるんですか。
石川 PremiereだとプレビューなんかにGPUを使いますが、ZBook x2のプレビューは速いです。たとえばVRの動画だと4Kとか8Kで作るんですが、サイズが大きければ大きいほどプレビューに時間がかかるので、その辺は違いが大きいと思います。
これは弊社で自主制作したVR動画なんですが、6台のGoProで撮影しているので、素材としては4Kというよりも5K以上あると思います。もともと重たいデータなので、ZBook x2でもやはり重たいことは重たいんですが、でも感覚的に「お、速くなったな」みたいな感じはしますね。
Premiere ProのタイムラインにVR動画を並べたところ
──性能以外の部分ではどうですか?
石川 本体のデザインに関して言うと、アルミニウムの質感も素材感もすごいあって、デザイン自体も堅牢でソリッドな感じがしてすごいかっこいいなと思いますね。出入力のインターフェイスがHDMI、USB、Thunderboltと豊富なので、それもうれしいですよね。
常時持ち運びすると考えると、もう少し軽いほうがうれしいのは事実ですが、MacBook Proでも結構ずっしり感はありますからね。MacBook Proは撮影に持って行くことが多いので、それと同じくらいの重さならいいんじゃないかと思います。
画面を閉じた状態。背面の周囲には空冷ファンの吸気口・排気口を兼ねた格子状のデザインが施されている
──ZBook x2の重量はキーボードを含めて2.2kg、本体だけで1.7kg。それに対して15インチのMacBook Pro は1.8kgです。
石川 本体だけならほぼ同じなんですね。
──堅牢性の点では米軍調達基準に準拠しているので、寒さ暑さの温度変化に強かったり、万が一落としても画面が割れたりしないそうです。それからセキュリティ面では、HP Sure Startというウィルスの侵入を防ぐソフトが搭載されているそうです。
石川 それはすごく安心感がありますね。
──最後になりますが、ZBook x2はどういう仕事に向いていると思いますか?
石川 まず、ペン入力が非常に滑らかで画面に直接書き込みできるので、緻密で繊細な作業に向いていると思います。イラストやコンテ、イメージボードはもちろん、レタッチなんかにも非常に向いているかなと感じました。
持ち運びという観点で言うと、板タブだとパソコンも一緒に持ち歩かないとなりませんが、ZBook x2ならこれ1台だけでいつでもどこでも自分の作業環境が構築できるというのが非常に大きい魅力だと思います。スペック的にメインマシンとして充分使えるので、静止画から動画まであらゆるクリエイターに向いていると思います。
関連情報
HP ZBook x2 G4 Detachable Workstation 製品ページ
HP ZBook x2 G4 Detachable Workstation
14インチの4Kマルチタッチディスプレイを搭載し、ペン入力が可能なモバイルワークステーション。キーボードを分離して使用することもできる。OSはMicrosoft Windows 10 Pro、CPUはインテル Core i7、GPUはNVIDIA Quadro Graphicsを採用。ノートPCモードではキックスタンドで好みの角度に傾けることができ、タブレットモードでは単体で高性能GPUが利用でき、 デタッチモードでは本体から分離させたキーボードでキー入力が可能。詳細Intel、インテル、Intel ロゴ、Intel Inside、Intel Inside ロゴ、Intel Atom、Intel Atom Inside、Intel Core、Core Inside、Intel vPro、vPro Inside、Celeron、Celeron Inside、Itanium、Itanium Inside、Pentium、Pentium Inside、Xeon、Xeon Phi、Xeon Inside、Ultrabook は、アメリカ合衆国および/またはその他の国における Intel Corporation の商標です。
ヴォンズ・ピクチャーズ VONS pictures
撮影、画像処理、3DCG、動画など、異なる技術を融合して広告ビジュアルを提供する制作会社。
https://www.vons.co.jp/
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- HP Z1は液晶モニターとの一体型なので撮影の立ち会いに最適
- フォトレタッチから動画制作まで、全てに高い性能を発揮するHP Workstation Zシリーズ
- 新しいHP Workstation Zシリーズは以前より圧倒的にパワーアップしている
- 次世代の4K映像制作に必要なマシンパワーが最大の魅力
- 一眼ムービーの撮影現場で簡単な動画編集がサクサクできる
- スタジオでのティザー撮影やRAW現像の速さは驚異的だ