2021年11月17日
自然で美しい人物レタッチを解説した連載「人物レタッチの基本ワザ/16ヵ所のチェックポイント」は、ここから第2部。美しく仕上げた人物を背景に合成するためのポイントをお伝えする。
「人物レタッチの基本ワザ/16ヵ所のチェックポイント」では、連載4回で人物レタッチの基本をレクチャーしました。ここでは2回にわたり合成の基本を説明します。
合成には様々なパターンがありますが、今回は〜基本的な合成〜
『ベースとなる 背景画像 と、メインとなる 人物 を合成する』
を説明します。
合成には色々なルールがあり、言い始めるとキリがないですが、〝これだけは外せない〟というのは、 たったの5つだけなんです!
人物合成を正しいゴールに導く 5つの基本ワザ
2. フォーカスを合わせる
3. ライティングを合わせる
4. シャドウのレベルを合わせる
5. 環境(シーン)を合わせる
5つのうち始めの3つは撮影でやっておくことで、後の2つがレタッチに関係する部分です。
1 | カメラアングルを合わせる | 撮影で行う部分 |
2 | フォーカスを合わせる | |
3 | ライティングを合わせる | |
4 | シャドウのレベルを合わせる | レタッチで行う部分 |
5 | 環境(シーン)を合わせる |
細かく見ていきましょう。
1. カメラアングルを合わせる
カメラアングル(細かく言うと〜カメラ※の角度・高さ)を合わせましょう。
特に人物の足元の接地部分がある画像は、角度と高さをしっかり合わせましょう。
広角レンズの場合は、ちょっとしたカメラの角度でパースが大きく変わるので特に気を付けましょう。
撮影時のレンズの角度・位置・高さは大切なデータなのでメモしておくと良いです!
合成する風景を撮影する時は、スタンドインを入れて撮っておくと後で助かります。
2. フォーカスを合わせる
2つの画像のフォーカスを合わせます。
- まずはそのビジュアルの主役、一番フォーカスがある部分はどこか、そして背景はどのくらいボケてくるのかを検証しましょう。主役でないものを合成する場合、主役・背景・ 合成する物の、カメラからの位置関係も把握しておくと良いですね。
カメラから遠く離れた場所に合成する場合、空気遠近法を使用して表現します。
3. ライティングを合わせる
メインライトの位置をはっきり認識しましょう。
合成する画像のメインライトの位置を合わせましょう。
- メインライトの位置がずれるとちぐはぐな印象になるので注意しましょう。
光の当たり方は、左右どちらからなのか、順光や逆光どちらなのかを決めましょう。
光の色味を合わせましょう。
- 時間や季節によって光の色味は違って来ます。特に夕景のシーン、日陰のシーン、夏の日差しなどは気を付けましょう。
NG事例集:2つの画像のライティングが合ってないとこんなことに!
メインライトの位置をはっきり認識しましょう。
OK
ライティングが合っているもの
NG
ライティングが逆のもの
違和感があります
4. シャドウのレベルを合わせる
合成する画像の最シャドウ部を合わせましょう。
数値だけではなく、目で見て確認をしてましょう。
- それにはやはりモニターが正しい状態になっていないと目で見ての確認ができないです。
事前にモニターのチェックもしておいてください。
NG事例集:2つの画像の最シャドウ部が合っていないとこんな事に!
絵全体が暗いと、馴染んでいる様に見えるのですが、
プルーフ出力をしたり、トーンカーブ等で明るくしてみると
人物のシャドウ部が不自然に明るいです!
これはレベルが合っていないから起こる事です。
5. 環境(シーン)を合わせる
反射を作りましょう。
人物が実際にその背景の場所に立っていたら、周囲環境の影響を必ず受けます。
屋外でしたら、メインライトとなる太陽光・空と雲の状況・地面からの太陽光の反射、周りからの影の影響等を作ってあげる必要があります。
NG事例集:反射を作っていないとこんな事に!
NG
最シャドウ部を合わせて色調整しただけだと、影を作ったり映りを作ったりしてもどうしても馴染みません。
OK
さらに環境を合わせると馴染んできますね。
いよいよ実践、合成します
それでは実際に合成してみましょう。
今回用意するのはこの2カットです。
最初に人物を撮影します。次に人物にアングルやライティングがマッチした背景を用意します。
①人物を切り抜きましょう
クイック選択ツールを使って切り抜きます。
『被写体を選択』を使用して選択範囲を作成した後、
『選択とマスク』を使用して髪の毛の細かい部分等のマスクを詰めていきましょう。
切り抜きが終わったら、一度背景に乗せてみましょう。
この様に位置とスケールを決めていきます。
その際、リアリティは大切なのですが、この絵の主役は何かを考えながら、配置を決めて行きます。
(リファレンスがあればそれに合わせてOK!)
②2枚の画像の最シャドウ部が合うように調整します。
ブルーの丸部分(#1)が背景の最シャドウ部(#1)、人物の最シャドウ部は赤の丸部分(#2)です。
スポイトツールで情報を見てみましょう。
数値が低い方が暗い状態ですので、人物の最シャドウ部の方が暗いですね。
それでは、人物の最シャドウ部を背景の最シャドウ部に近づけていきます。
2つの最シャドウ部を合わせるのに使い勝手の良いフィルタは「レベル補正」です。
レベル補正の下に人物レイヤーを置いてクリッピングマスクを作成したら準備OKです。
スポイトツールを選択して shiftを押しながら画像を選ぶとサンプラーが出ますので、比較したい部分に作ってあげると作業がスムーズです!
下のレベル補正の赤丸部分を左にスライドしましょう。
スカートの部分が明るくなっているのが分かりますか?
見た目だけでなく数値でも確認しましょう。#2の数値が#1の数値に近くなりました。
最シャドウ部を合わせるだけではまだ馴染んでいませんね。次に環境(シーン)を合わせていきます。
逆光なのでこちらを向いている部分は光が当たりません。左側のエッジ等にかろうじて光が当たるようにレタッチします。
ここから水に入った足、影、水面の映り、なびいた髪を作成してさらに馴染ませていきます。
細かい部分を調整したら完成です。
次回は同じ人物を別の背景に合成します。お楽しみに!
Art Director:石川翼(VONS Pictures)
Photographer:片岡竜一(VONS Pictures)
Stylist:廣田美保子
Hair & Make-Up:宮澤結弦
Retoucher:濱中英華(VONS Pictures)
Producer:高橋永利香(VONS Pictures)
出演:喜野ベリ・初音ナチ
ヴォンズ・ピクチャーズ VONS pictures
撮影、画像処理、3DCG、動画など、異なる技術を融合して広告ビジュアルを提供する制作会社。
https://www.vons.co.jp/