2022年02月18日
撮影監督のイメージとVFXの自然なマッチにDaVinci Resolveで対応
Netflixの「ドント・ルック・アップ」は、6ヵ月以内に小惑星が地球を破壊することを発見した2人の天文学者が、人類に警告するためにメディア・ツアーを行う姿を描いた作品。同作の監督はアダム・マッケイ氏、撮影はリヌス・サンドグレン(FSF, ASC)氏が務めた。また、Company 3のマット・ウォーラック氏が、編集、グレーディング、VFX、オーディオプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioを用いて、同作のグレーディングを手掛けた。
ウォーラック氏は、ここ数年はデイリーのカラーに主に焦点を置いており、サンドグレン氏を含む多数の著名な撮影監督と共に仕事をしてきた。サンドグレン氏は、ウォーラック氏のカラーに対するアプローチを気に入っており、同氏の前回撮影作である「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のデイリーと最終的なカラーの両方をウォーラック氏に依頼した。
サンドグレン氏の撮影は、デジタルの代わりに、可能な限りネガフィルムで行うことで知られ、デジタル・カラーグレーディングでは、イメージのフィルムルックを維持することを重視している。また、カラーに対して、光化学の空気感を保持したアプローチを好んでいる。
本作では、サンドグレン氏はフィルムに加えて、撮影に様々なフォーマットを用いたため、グレーディングが通常より複雑になったという。マット・ウォーラック氏に話を聞いた。
「ほとんどが35mmだったのですが、アナモルフィック、球面、スーパー8mmが含まれており、16mmも若干使われていました。
また、登場人物がテレビに出演するシーンが多数あり、これらはスタジオのような環境で、デジタル放送カメラで撮影されました」
ウォーラック氏は、以下のようなグレーディング方法をこういったシーンに用いることを提案したという。
「放送のシーンでは、極めて高い彩度のルックを用いることを提案しました。電器店に並ぶ、”ディスプレイモード”のテレビの列の間を歩いているような感覚が得られるルックにするべきだと思いました。こういったテレビは、通常とても明るく鮮やかな映像を映し出しており、少し違和感を感じさせます」
しかし、これを実現するにあたって、グレーディング用のLogファイルがなかったため、印象の強いルックを作成することに困難が伴ったという。
「テレビのシーンのフッテージは、RAWファイルのスキャンではありませんでした。Rec.709カラースペースで撮影されたので、ほとんどそれを活かした状態となりました。
まず、本作の他のフッテージと同様に、オフセットとプリンターライトを用いて調整を行いました。すべてのバランスが取れたら、コントラストと彩度を上げ、Resolveの様々なカーブを使用して、イメージが耐えられる限界まで調整を適用しました」
同作で多用されたVFXも課題をもたらした。これは、派手なCGを用いたショットではなく、視聴者がほとんど気づかないような微細な要素に使用されたという。
「元はVFXの使用を予定していなかったのが、パンデミックの影響でVFXに変わったショットがかなりありました。セットに同時に入れる俳優やスタッフの数が限られていたため、複数のショットを合成してシーンを作成することになりました」
VFX部門は、CGで群衆を作成し、また2Dのエレメントとボリューメトリック・キャプチャーを用いて、セット内に入ることが許された25〜30人のエキストラを映像では100名以上の群衆がいるかのように見せている。
「コンサートや集会のシーンなど、一部のショットはデジタルの群衆を多数使用して、人で溢れかえっているように見せました」
ウォーラック氏は、DaVinci Resolve Studioのマットを使用することで、このようなエレメントのバランスを調整した。動きながら群衆を照らすライトが、エレメント間で完全にマッチするようにし、シーンを自然に見えるようにした。
DaVinci Resolve Studioに搭載されたツールにより、グレーディングが効率的に行えたそうだ。
「カラーワーパー・ツールを使用しました。素材映像をマッチさせる時に、特にこれは役立ちました。他のツールを組み合わせて、同じ結果を得ることもできましたが、カラーワーパーは、共同作業で非常に効率的に作業できます。
複数のパラメーターを同時に変更して、イメージにどのような変化が生じるかリアルタイムでリヌスに見せることができました。例えば、フィルムとテレビスタジオのショット間を交互に切り替えているカットで、テレビの複数の赤い色を特定の色に調整したい場合は、それらの赤を選択して、任意の方向に動かすと、単一の動きですべて同時に調整できました。キーやカーブを使用するより、遥かにすばやく変更を全体的に適用できました」
Netflixは、同社のサービスで世界的に配信したことに加え、同作を劇場でも公開したため、2つのバージョンの作品を完成させるために、HDRとDCI-P3の両方のツールを用いる必要があった。
「HDRバージョンを作成する際には、Logホイールとカーブの代わりに、ResolveのHDRホイールを頻繁に使用して、ハイライトを調整しました。劇場公開に使用するDCI-P3は重要なので、HDRのトリミングプロセスでこのホイールは役立ちました。HDRホイールは非常に柔軟性があり、各ゾーンで調整の影響を受ける範囲を設定し、それらのゾーンの露出を個別に調整できます。HDRホイールでは、今までは無かったシンプルな方法で、HDRバージョンを思い通りに調整できます」
「ドント・ルック・アップ」は現在Netflixで配信中。
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