印刷の品質を支えるプリプレスの現場から

第5回 モニターと印刷の色再現域

解説:小島勉

前回までの連載で、カラーマネジメントによってモニターとプリント(DDCPを含む)の色が合うようになったことが証明されたと思います。現在推奨されているISO3664のP2条件内(モニターのみで観察する場合の照度は64ルクス)に収まれば、しっかりとした印刷シミュレーションができることがお分かりいただけたのではないでしょうか。つまり、ColorEdgeを使うことで正確な色合わせが可能になるのです。モニター上で印刷シミュレーションできるということは、レタッチ作業が効率的になるだけでなく、無駄なプリントも減らすことができるのです。これはデジタルワークフローの上で大変重要なポイントとなります。
 
さて、印刷を目的としたカラースペース(色再現域)はAdobe RGBが推奨されています。代表的なカラースペースではAdobe RGBとsRGBがありますね。sRGBはCRTモニターの平均的な色再現域から考えて作られたものですが、その主な利用はWebにおける色を取り扱うためのものです。ここではsRGB対Adobe RGBの論争については割愛しますが、印刷用途として考えた場合、もともとsRGBは4色プロセスインキの持つ色再現域をカバーできないという問題がありました(図を参照)。Adobe RGBを表示できるモニターがなかった頃は、sRGBのワークフローで制作していました。やがてColorEdgeシリーズでAdobe RGB対応のモニターが発売されたことなどを受け、徐々にプロフェッショナルにおける印刷用途はAdobe RGBが推奨されるようになり、現在に至ります。


印刷の色基準であるJapan Color 2001 CoatedとsRGBの色再現域

ColorEdgeのAdobe RGB相応モニターは現在3機種あります。2004年に、CG220が最初のAdobe RGB対応モデルとして販売されましたが、フラッグシップモデルであったため価格もかなり高価でした。その後、現行機のCG221、CG241W、CG301Wとラインナップが拡充されています。CG221はAdobe RGB対応かつIPSパネルのフラッグシップモデルです。価格も一時期より抑えられてますので、導入しやすいモデルと言えるでしょう。

昨年6月に衝撃的な登場となったCG241Wは、Adobe RGB比 96%のモデルです。VAパネルですが、ワイドモニターのポイントであるユニフォミティ調整がきちんとされていますので、輝度ムラ、色度ムラが抑えられており、とても使いやすいモニターとなっています。視野角による色度変位はパネルの特性上CG221よりも大きくなりますが、正面から見るぶんには何ら問題はありません。ワイドモニターによるデスクトップの広さを十分に堪能できると思います。普及価格帯の高性能なAdobe RGB相応キャリブレーションモニターの代名詞と言える機種でしょう。

今後、印刷用途の流れとしては広色域化、Adobe RGBへの対応が進んでいくものと思われます。プロ用カメラではすでにAdobe RGBがサポートできていますし、印刷側もインクジェットやDDCP、広色域プロセスインキによる制作が可能になったことで、撮影 → モニター → 印刷まで、一貫したAdobe RGBワークフローが可能になったわけです。

印刷シミュレーションをする上で重要なのが、Photoshopの「校正設定」と「色の校正」です。「校正設定」でCMYKのプロファイルやインクジェットの用紙プロファイルを設定し、「色の校正」をオンにすると、モニターで印刷シミュレーションができるようになります。下図はJapan Color 2001 Coated(枚葉オフセット印刷機の色基準)でシミュレーションしているところです。「色の校正」でシミュレーションすることは、その後の製版におけるRGB → CMYK変換作業で大変重要な意味を持ちます。


まずPhotoshopの「ビュー」メニューから「校正設定」→「カスタム」を選ぶ。


次に「シミュレートするデバイス」で印刷の色基準を選択する。


そして「ビュー」メニューから「色の校正」を選ぶと、CMYK変換後の色で画像が表示される。

シミュレーションでもっとも大事なのは色域外のコントロールです。Photoshopの「色域外警告」が表示されなくなるまで彩度を下げる人もいるようですが、必要以上に神経質になることはないと思います。むしろ下げすぎてしまうと、後処理や印刷側での変換作業によってさらなる彩度ダウンにつながるかもしれません。どのような色味が欲しいのかを示す見本プリントを付けたり、印刷会社側のプリンティングディレクターと十分に話し合うことで、トラブルを未然に防ぐことができると思います。様々なHow To 本や雑誌などで書かれているように、CMYKのコントロールは印刷会社側に任せるのが一番だと思います。

さて次回はColorEdgeを2台つなげた「デュアルモニターのすすめ」と題して、効果的な使い方をお伝えしたいと思います。

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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