一眼ムービーで学ぶスチルライティング

2灯で球体を表現する

解説:茂手木秀行

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今回はメイン光源に加え、補助光を加えた2灯で球体を表現してみる。シャドウ側を明るくすることで、どのような表現が可能になるのか見ていこう。

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前回は1灯でのライティングを体験した。しかし、1灯では球体を球体らしく、かつ、ディテールを表現することに自由度が少ないことがわかった。そこでもう1灯を加え、シャドウ側を明るくすることで球体らしさを表現することにする。メイン光源に加え、補助光を足すことだ。補助光の目的は球体らしい全体像を表現することであるが、陰影を弱めることにもなるので、ディテール感を阻害する要因でもある。そのためには、メイン光源と補助光の明るさの比率、露光比による表現の違いを体感することが大事だ。

ディテールの表現は物体表面の陰影の連続であるが、物体表面の凹凸の大きさによって適切な露光比は変わってくる。また補助灯の位置によっても、全体のフォルムの見え方、ディテールの出方も変わるのでそれも合わせて実験しよう。現実の撮影、例えば野外での自然光撮影では地面の照り返しや青空など天空光の影響、スタジオでは、壁面や天井、撮影台からの反射などが環境光として作用し、補助光の効果がわかりにくい。灯数が増えるほど顕著になるので、やはり実験には夜の野外や暗幕で囲ったスタジオが向いている。

今回のセッティング

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球体に正対してカメラを三脚で設置する。「Light 1」はメイン光源で、球体から見て右斜め45度方向、上方約15度に設置、「Light 2」が補助光で球体から見て左斜め45度方向、上方約5度に設置し、ライトの調光機能もしくは距離を変えて、露光比を調整する。LED懐中電灯では、調光機能を使うとムービー撮影時にフリッカーが出ることがあるので、まずフリッカーの出ない調光位置を探しておいて、距離で調整するのがよいだろう。

ライトを保持する工夫

前回もライトを保持するアクセサリーを紹介したが、もう少し工夫を紹介する。1回のみの実験であれば、太めの針金でも事足りるのだが、ライト周りのアクセサリーは多く持っていても無駄にはならないものだ。ポイントは頑丈で自由な動きができるものがよい。懐中電灯も同じものを揃えておいたほうが何かと都合がよい。調光が可能なスポット光タイプがおすすめだ。LEDは撮影光源としてのものでない限り、ロットによって色温度や演色性が違うので複数を一度に買ってしまうほうがよい。

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①マンフロット製ミニーアームとテーブルクランプ。トップ光など高い角度からの照明を入れる時に便利。

②クリップオンストロボ用のアンブレラホルダーとマンフロット製テーブルクランプ。

③前回も紹介したマンフロット製ミニクランプと汎用小型自由雲台。

撮影時の注意

露光比は物体のハイライトとシャドウの輝度を決めるが、それがどのように画像に反映されるかはカメラの絵作り次第であることに注意してもらいたい。

DSLRのムービー撮影時は、JPG撮影と同じくカメラの色作りが反映される。Nikonならピクチャーコントロール、キヤノンならピクチャースタイルがそれだ。これらの設定では色合いだけではなく、ガンマも変わるため明暗の差もそれぞれ違う。まずはスタンダードでよいが、自分の望む絵作りとライティングの関係を探るのであれば、この設定をそれぞれ試してみることも価値あることだ。RAWデータでの静止画撮影を同時に行なっておけば、現像時に絵作りの設定を変更して効果を探ってみるのもよいだろう。メーカー純正RAW現像ソフトではカメラの設定と同等の効果が得られるが、Photoshop Camera RAW プラグインではデフォルトが「Adobe Standard」でありメーカー純正の絵作りとは異なっていることに注意してほしい。

img_tech_stilllight02_04.jpg Nikon D810の例。それぞれガンマが違うため、明暗比もかわる。ムービー撮影時にも反映されるので、今一度チェックしておく。まずはスタンダードだ。
img_tech_stilllight02_05.jpg Camera RAW プラグインでは、「カメラプロファイル」がこれにあたる。ニコン、キヤノンなどではプルダウンからメーカー純正に相当するプロファイルを選択することが可能だ。

露光比の変化を体感する

まずは露光比(照明比)の変化による違いを見てみる。ここでは、球体に対する補助光の位置があまり変化しないように露光量だけを変化させることがポイントだ。調光機能で足りなければ距離を変えて変化させる。露光比は露出倍数で表され、1絞り分違う比率であれば1:2(あるいは2:1)、2絞り分違えば1:4、3絞り違えば1:8である。また、露光比(照明比)は個別の光源による照明の明るさの対比であり、照明された結果の露光量は2つの照明による露光量が加算されたものになる。また撮影はNikon D600、ピクチャーコントロールはスタンダードで行なった。

img_tech_stilllight02_06.jpg ①露光比(照明比)1:1。メイン光源と補助光が同じ光量である。球体は円のように見え、ディテール感は薄い。
img_tech_stilllight02_07.jpg ②露光比1:2。メイン光源に対して、補助光は1絞り分暗い。光の方向性は感じるもののディテール感は薄い。柔らかいライティングと言える。
img_tech_stilllight02_08.jpg ③露光比1:4。メイン光源に対して、補助光は2絞り分暗い。まだ柔らかい印象だがディテール感は明瞭である。
img_tech_stilllight02_09.jpg ④露光比1:8。メイン光源に対して、補助光は3絞り分暗い。メイン光源の方向をはっきりと感じ、奥行きのある球としての印象。発砲痕のディテールも良好だ。

補助光位置の変化を体感する

次に補助光の位置を変え、見え方の印象の違いを見てみる。メイン光源の位置は動かさず、補助光の位置のみを変えるが、あまり光量にはこだわらない。最初に1:8の光量比にしたら、概ね同一光量となるように気遣う程度でよいだろう。あくまでも、心理的印象の違いを考えるためのものである。感じ方はそれぞれで自由だ。だが、概ねの傾向は意識しておいたほうがよいだろう。明るい部分はより近く見えるか、光の方向性を感じるようになる。また、灯数を増やして、効果が複合するとまた違った印象になる。

img_tech_stilllight02_10.jpg ①シャドウ側の輪郭を描き出すため、球としての印象が増すとともに、ドラマチックな印象。
img_tech_stilllight02_11.jpg ②上から光が来る印象となるため、メイン光源の位置に関わらず、画面の上下を意識させられ画面が安定した印象。
img_tech_stilllight02_12.jpg ③強い反射がやや右にはいったことで、その方向が上であるように意識し、球体に動きがあるように見える。メイン光源が作るシャドウとのライン、言わば子午線と輝点が重なって見えることも要因であろう。
img_tech_stilllight02_13.jpg ④左側はメイン光源が当たっているため、ややわかりにくいが、明るい面の輪郭がより明るくなったことで、輪郭が硬く見え、やや平面的にも見える。

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写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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