一眼ムービーで学ぶスチルライティング

第4回 光の質を知る

解説:茂手木秀行

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ライティングによって被写体の特徴を正確に表現するためには、色の再現も重要である。今回は、色を決定する要素の1つである光のスペクトル型に注目。照明光源のスペクトルの計測を行なう。

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光の質は色温度だけではない

ライティングは、物体の特徴をより明確に表現するために行なうものであるが、その際、光の質を考慮する必要がある。光の質というと、硬さ、柔らかさといった光の態様が思い浮かぶ。これは物体のディテールやトーンを表現するのに重要な要素であることは間違いない。

しかし、物体からの反射には色が含まれており、その色を決める要素に光のスペクトル型がある。色を決める要素としては色温度が大きな役割を果たすが、より正確な色再現を目指すためには、照明光源にどのような波長の光が含まれているかが重要なのだ。色温度はその傾向を表しているにすぎない、一つの指標である。

SPECTROMASTER C-700を使う

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12月23日、SEKONICからSPECTROMASTER C-700が発売された。

SPECTROMASTER C-700は、照明光源のスペクトルを計測するデバイスである。これまで、光の質を測るものは色温度計が一般的であった。色温度計では、RGBのフィルターを用いて、白色光を3つのチャンネルに分解し、3チャンネルの比率から色温度と色かぶりを算出していた。そのため、色彩計タイプと呼ぶ。

それに対して、SPECTROMASTER C-700では、可視光のうち、380nm(ナノメートル)〜780nmまでの光の波長を1nmごとに算出したグラフと計測結果を示すことができる。こうしたタイプは分光測色計と呼ばれ、色彩計よりもずっと正確、かつ情報量の多い光の質を測ることができる。モニターのキャリブレーションを行なうi1ProやColorMunkiで採用されている形式だが、デバイス単体で運用でき、かつフラッシュ光も測定でき、写真の現場で必要な機能を網羅した製品として、世界初の製品だ。

スペクトルの形が色再現を決める

色は色という物質が存在するのではなく、物質表面に当たった光が特定の波長を反射することで認識される。それゆえ、物体を照明する光源に含まれるスペクトルの形、もしくは波長ごとの強弱によって認識される色は異なる。光源ごとに見える色が変わっては、色情報のやり取りに不都合であるので、基準となる光が決められており、標準イルミナントと呼ばれる。色温度が6504K(ケルビン)であり、各波長が平均的に含まれた光である。CIE(国際照明学会)によって、実際の天空光を計測しているが、数学的に求められた光であり、現実には存在しない光とされている。

しかしながら、撮影に使おうとする光源が、標準イルミナントが持つスペクトルの形、もしくは波長ごとの強弱と完全に一致すれば、基準通りの正しい色再現が行なわれたことになる。この時の色再現の正しさの度合いを表す指標は演色評価数と呼ばれ、Raという値で表される。

基準となる塗料のパッチが8色あり、そのカラーパッチが測色用イルミナントで照明された結果と、現在そのカラーパッチを照明している光源で再現される色の結果とのズレを数値化しており、その8色の平均値をRa値として表している。このRa値が100であれば、標準イルミナントと同一のスペクトル特性を持った光源でカラーパッチは照明されていることになり、完全に正しい色再現となる。さらに日本の印刷業界では、基準となるカラーパッチ8色に7色(R9〜R15)を加え、世界基準よりもより厳密に管理しようとしていることも心に留めておいてもらいたい。

印刷を前提とした写真はD50を使う

前段では基準の光を標準イルミナント、6504Kと書いた。これはD65光源とも呼ばれ、正しい光の基準である。しかし、光には用途があり、その用途に適した光の態様が決められている。これらは補助標準イルミナントと呼ばれD75、D55、D50などがある。このうち印刷物の観察に用いられるのがD50光源である。

注意してほしいのは印刷物の中には、インクジェットプリント、銀塩プリントなどいわゆるハードコピー全般を含んでいるということ。つまり写真では、D50光源を基準にするということだ。これが観察光源であるということは、すなわち撮影光源でもある。正しい色再現ができるスペクトル型を持った光源で照明し、撮影すれば、カラーパッチごとの反射光のスペクトル型も基準どおりになり、結果、正しい色再現が行なわれる。

その出力物を観察するときも同様だ。正しい色再現ができるスペクトル型をもった光源で観察すれば、再現された出力物からも基準どおりのスペクトル型が反射され、結果、現物と比して正しい色再現になるのである。常に重要なのは色温度だけではなく、その光の中に含まれる波長の割合、スペクトルの形なのである。

こうした色管理は、すなわち照明光源を管理することなのだ。そのために必要となるデバイスが、SPECTROMASTER C-700なのである。

◯SPECTROMASTER C-700での測定例

正午過ぎの太陽光
スペクトルグラフ img_tech_stilllight04_03.jpg
演色評価グラフ img_tech_stilllight04_04.jpg
※グラフをクリックして拡大表示
この日の太陽光では、5049K、Ra98.6であった。スペクトルグラフにはD50光源は図示されないが、Ra100であれば、D50光源のグラフと完全に一致する。演色評価グラフでは、各パッチが正しいスペクトル反射をすることができる光源であるかを数値とグラフで表しているが、一目で高い評価になることがわかる。
RGB3色型のLED(低価格の懐中電灯)
スペクトルグラフ img_tech_stilllight04_05.jpg
演色評価グラフ img_tech_stilllight04_06.jpg
※グラフをクリックして拡大表示
RGB3色の光を混合して白色を作るタイプのLED照明の例である(筆者が使用している低価格の懐中電灯。撮影用のLED照明ではない)。色温度は4987Kであり、ほぼ基準どおりであると言えるが、スペクトル型はRGBそれぞれにピークがある山型である。つまり山の波長に相当する色は明るく、谷に相当する色は暗く表現される。その結果、正しい色再現はできない。演色評価グラフにも如実でRa値は40.7である。

SPECTROMASTER C-700での測定

SPECTROMASTER C-700で光源を管理

SPECTROMASTER C-700とライティング

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ここで前回のことを思い出してもらいたい。球を表現するのに3灯の光源を使ったが、それぞれの光源が球を照明する範囲に注目してもらいたいのだ。

この配置の場合、二つの光源の光が混合する場所はあるものの、一つの光源による照明が支配的である領域が大きいという点だ。それぞれの照明が球に正対している部分である。もし3つの光源のスペクトル型が違えば、これらの部分では色再現がそれぞれ異なってしまうことになる。それを避けるには、色評価指数も含めた光源の管理が必要なのだ。

SPECTROMASTER C-700の実運用

◯単体での運用

SPECTROMASTER C-700では、測定結果を本体内に保存でき、いつでもその結果を参照することができる。データは測定値として保存されているので、自由にモードを変更して参照できるほか、3つの測定値を比較できるモードがある。

img_tech_stilllight04_08.jpg 画面右下の工具アイコンでツールボックスを表示し、メモリーリコールをタップ
img_tech_stilllight04_09.jpg 保存されている測定結果のメモリーが表示されるので、選んでOKをタップ
img_tech_stilllight04_10.jpg メモリー内の測定結果が表示される。表示モードは自由に変更できる
※画像をクリックして拡大表示

◯PCでデータ管理

ユーティリティソフトウェアを使えば、本体内に保存された測定結果をPCに保存できる。PCとの接続はUSBケーブルである。

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SEKONIC C-700/C-7000シリーズ ユーティリティソフトウェア画面(Mac版)

PCに出力する基本はCSV形式であり、測定結果を数値情報として保存できる。テキストエディターやExcel、Numbersから利用が可能だ。このほかに、本体で表示しているスペクトル、演色評価、ホワイトバランスの各グラフも画像データとして保存できる。視覚的に素早くデータを比較できるのでありがたい。

img_tech_stilllight04_13.jpg C-700から出力された表示画像をBridgeで表示した
img_tech_stilllight04_14.jpg C-700から出力されたCSVファイルをNumbersで開いた
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C-700本体でも、光源の特性を比較できて便利だ。

左の「スペクトル比較」モードでは、現在の測定値とメモリーに保存された測定値を比較できるので、照明機材の経年変化や経時変化を把握するのに便利だ。

右の「多灯比較」モードでは、4つまでの光源を順次測定しながら比較できるので、多灯ライティングをしながら、それぞれを補正していくときにも使い勝手がいい。

データは管理してこそ意味のあるものだが、その点、SPECTROMASTER C-700は抜かりない。単体での運用は撮影現場で重宝するはずだ。

例えば、多灯撮影の際、それぞれの光源の質を揃えるには、使用数よりも多くの灯体を用意して、質の揃えやすいものを抜き出して使うというような運用をする。その際の灯体の選別には、一体型であるメリットが最大限発揮されるだろう。手早く測定し、4つまでの光源の比較をすぐに行なえるからだ。

一方、自分でスタジオを持っているフォトグラファーはPCでデータを管理すると良いだろう。自分が普段使用している、照明器具を定期的に測定することで経年変化を数値で把握できるようになるからだ。良いライティングを安定して実現するために必要な手順をシンプルにしてくれるのだ。

撮影協力:西島写真事務所
http://www.nishijima-studio.com

SEKONIC SPECTROMASTER C-700
http://www.sekonic.co.jp/product/meter/c_700/c_700.html

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写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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