2007年08月06日
自己紹介を兼ねて、私が関わったものを紹介しますと、まずこれはWeb上のショッピングモールサイト「ZOZOTOWN」(http://zozo.jp)です。ZOZOTOWNはFLASHをベースにしたサイトなんですけれども、ほとんどの人気ブランドを網羅していることから、かなりの人気サイトになっています。一つ一つのお店のデザインをすべてゼロからオリジナルデザインとして作り上げた、かなり手の込んだサイトです。その街の中の例えばこれは、STUSSYのショップです。
ZOZOTOWNの中にあるSTUSSYのショップ http://zozo.jp/shop/stussy/
Web上のショップというのは、現実の店舗がないとか、接客ができないとか、商品を手に取れないなどの理由で、メーカーの姿勢としては非常に慎重です。しかしZOZOTOWNに出店すれば、CGでブランドをアピールできる、CGを使えばWebでもブランドアイデンティティを作れるということから、今まで出店しようとしなかった老舗メーカーなどもZOZOTOWNに出店しています。
リアルショップを補うWeb CGの活用という新しい発想は、もしかしたらユーザー側からはアイコンみたいに捉えられてしまうかもしれないんですが、むしろメーカー側のほうが積極的です。ZOZOTOWNでは人気ブランドをCGで効果的に表現できているんじゃないかと思います。
今日はPhotoshopユーザーの方が多いので、フルCGではなくて写真を利用したものについてお話ししてみようと思います。最初にお見せするのは、CGではなくて写真です。ミース・ファン・デル・ローエ(Mies Van der Rohe)という建築家の非常に有名な建築なので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。この写真を元にして世界の著名デザイナーにオーナメントし直してもらおうというユニークな企画が、アメリカの『I.D. Magazine』という雑誌でありました。
まず背景となる林の部分だけを、Photosohpを使って合成します。元の写真では建物の後ろにあって見えない部分も、スタンプツールを使って元の写真から作り出して、建物がない状態の画像を作り上げます。次に、デッキの下の地面を切り出して、さらに変形ツールを使ってパースをつけ、真上から見た画像を作ります。これらの画像を用意してSTRATAに戻ります。
3DCGにおける背景の考え方ですが、立体的な空間なので、360度ぐるりと取り囲むように背景を配置する必要があります。そのために巨大な円筒形のオブジェクトを作って、これに先ほどの林の画像を張り付けて、建物の周りを取り囲むようにします。真ん中の位置から見ると、360度ぐるりと林が見えるようになります。次に建物の下にあたる部分に、地面の画像を配置します。これで建物の周りの環境が3D空間の中にできあがりました。ここまでくれば、あとは各部材を置き換えてあげるだけです。今回はオリジナルの真っ白な建物に対して、透明感のあるテクスチャーを使用しました。
STRATA 3D CX5を使って、3DCGのワークフローを説明する戸澤氏。
3Dで表現することのメリットというのは、カメラの視点を後からいくらでも変えられることにあります。元の画像とは違った角度から建物を見たり、建物の中に入ることもできます。カメラの視点を動かすことでアニメーションにもなるのです。3DCGはさまざまなプレゼンテーションに使えます。今回はたまたま建築をベースにしたお話をしましたが、対象は何でもかまいません。
たとえば最近、ある携帯電話のコンセプトビデオの仕事をしました。まだデザインすらも決まっていない、コンセプト段階の携帯電話を映像化する仕事だったのですが、それも3DCGで表現しました。液晶パネルのインターフェースは、IllustratorやFlashの画像をそのまま3D上でレンダリングしています。新しいPhotoshop CS3 Extendedでは3Dデータを読み込んで表示できるようになりました。今後はさらに、写真とCG、2Dと3Dを組み合わせた表現がより簡単にできるようになるのではないかと思います。
戸澤氏の講演に続いて、Photoshop CS3 Extended用のSTRATAプラグインシリーズや、写真関連製品DxOの説明がソフトウェア・トゥーから行なわれた。
戸澤徹 Tozawa Toru
アパレル系のショップを中心としたデザイン設計業務を経て、1995年 TOZAWA DESIGN RENDERING を設立。現在、商業施設を主とした 3DCG パースライターとして活動する他、広告などの 3D イメージ制作を手掛けるなど活動は多岐に渡る。 http://www.tozawa.com/