NIKON D-Movie

Nikon D810で夜景ムービーを撮る

解説:千葉 孝 (撮影監督/DIT)

DSLRのムービー機能は目覚ましい進化を遂げ、今やスチールより動画撮影の比率が高いユーザーも多いだろう。そこで短期集中連載として、ニコンD810を中心とした撮影技法や周辺機器の導入、撮影後のファイルの取り扱い等を解説する。

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ベース感度ISO64を実現したD810だが、高感度領域ではどのような描写性能なのか検証を行なった。

ベース感度ISO64のD810はどこまで高感度に強いのか

先月号では、日中、外光の多く入るスタジオにてビューティーショットを撮影し、D810が持つ階調の豊かさとフラットモードの持つ色再現性の良さを肌で感じた筆者だが、撮影中どうしても気になったことがある。それはこのカメラの高感度特性だ。

確かにメーカー推奨のISO64を使用してのムービーは文句なく美しい反面、高感度時はどのような映像を見せてくれるのか。ISO64とフラットモードの実力を知っただけに、通常のムービーカメラと同等の感度設定での使用感が気になるところだ。特にナイトシーンのロケなどにおいて、ワイドショットや人物の髪などが写り込むアングルの場合、カメラが持つ高感度への耐性が重要になる。現実的にどこまでISOを上げての撮影が可能なのだろうか。

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動画ISO感度設定のメニュー画面。露出モードM時の感度はISO64~12800から選択可能で、感度自動制御のオン・オフ、制御上限感度の設定も可能。露出モードP、S、Aでは感度自動制御、制御上限感度が設定可。

このような高感度時のノイズ耐性は現在のデジタルムービーカメラに要求される重要なファクターの一つであり、新規機材導入時の大きな指針の一つでもある。

実際にはまったくノイズ成分の許されないビューティーショットや商品カットの類から、ある程度のノイズ成分は黙認されるドキュメンタリー作品など、高感度時のノイズをどこまで許容できるかは作品によって違うので、一概に語ることはできない。それを許せるか否かの判断はあくまでクリエイターの主観である。しかしカメラ(イメージセンサー)のノイズ成分が少ないことに越したことはない。

ネット配信のムービーはノイズに気を配る必要がある

もし撮影した作品がYouTube、Vimeoなどの動画サイトで配信予定の場合、アップロードしたムービーの再圧縮を配信サーバー側が自動的に行なうため、この段階でノイズの多いムービーはノイズが少ないムービーと比較し、より顕著に画質の悪化が進む傾向になる。ネット配信予定のムービーではよりノイズに気を配る必要があるのは、それが理由である。また、高感度時の暗部ノイズの有無は、CMをはじめとするハイエンドムービーでそのカメラが使用可能かどうかの大きな指針でもある。

現在主流になっているデジタルムービーカメラではISO500〜1200くらいを基準感度としている機種が多く、その中でISO64を設定できるD810は異色の存在といえる。D810を使用したムービー作品を撮影する場合、実際にはISO64固定で撮影可能なことは稀で、現実的なムービー撮影なら最低でもISO800は実用感度として欲しいところだろう。

明るいレンズを使用すれば高感度でもノイズは目立たない

そこで今回は、ナイトシーンを中心にテストしてみた。夜景撮影の場合、ノイズが一番目立ってくる場所は、夜空の部分と被写体の最暗部である。今回はそれを検証するために濃紺色の自動車を撮影した。

テストはニコン純正レンズであるAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G、同じくAF-S NIKKOR 85mm f/1.4Gを用いて行なった。結果は下に動画を掲載したので参考にしてほしい。


Nikon D810 ISO TEST https://vimeo.com/144976866

あくまで主観的な印象だが、今回のような明るいレンズさえ使用できればISO800でもノイズが目立った印象はなく、夜の闇の中でも艶やかなボディの造型が美しく表現されていると感じた。

さすがにISO2000になるとまだら状のノイズが天空に確認できる。しかしデジタルムービーカメラでもISO2000に耐えうる機種は現状存在しない。通常の撮影においてD810の高感度時の対ノイズ性能は十二分だと言えるだろう。

ISO64を基本とし、高精細のムービーの撮影を可能とする傍ら、高感度にも対応できるD810は、守備範囲の広いカメラだと言えるだろう。

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ISO64からISO3200まで、ISO感度を変えてテストを行なった。明るいレンズを使用すれば高感度領域でもノイズが目立つことはなかった。

また、今回のテストで再確認したのは、D810の背面モニターが持つ性能が高く、特に色再現性が非常に優れており、撮影中に安心感とモチベーションを保って撮影できるということだった。

ともすれば生産コストのためかモニターのクオリティーがあまり良くない機種もあり、収録されている映像とモニター上のルックが大きくかけ離れている場合も多々ある。そういった機種だと撮影中に常に不安感を伴い、精神的にとても疲れる。

その点、D810はとても素直なモニタリングができ、気持ちよく使用できる点も素晴らしいと感じた。

高精細で明るいD810の液晶モニター

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D810の液晶モニターは3.2型と大きく、画素数も約122.9万ドットと高精細。従来のRGB画素にW(白)画素を加えたRGBW配列や、ガラス・パネル一体型構造などの採用により明るさを向上。さらに広視野角(上下左右170°)で、斜めからでもはっきり視認できる。また、メニュー操作により液晶モニターの色調をカスタマイズ可能で、作業の基準となるパソコンのモニターに合わせられるなど、デジタルカメラの液晶モニターとしては一歩進んだものとなっている。


写真:千葉孝

千葉孝 Takashi Chiba

1965年東京生まれ。ソニーPCLハイビジョン推進部にてハイビジョンカメラの研究開発に携わる。その後、撮影技術プロダクションを経て1998年〜2007年渡米。ニューヨークに本拠を構え、テレビ、映画、PVなど数々の作品に携わる。その後、チェコに移住。プラハでCMや映画の製作に参加。日本に帰国後はCMを中心にDP、DITとして活躍する。カメラマンとしてだけでなく、4K撮影とデジタルワークフローの構築を得意分野とし、多数の映画、ドラマなどのテクニカルアドバイザーを手がける傍ら、自らDaVinci Resolveを使用したカラリストとしても活躍する。ヘルメット株式会社所属。

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