フォトグラファーのColorEdge実践術

第1回 信頼できるモニターがデジタルフォトの命 ①

解説:茂手木秀行

こんにちは。写真家の茂手木秀行です。この連載で、モニターと写真の関係をお話して行きたいと思います。

デジタルフォトにおいては、写真は2進法のデータで表されますが、当然目に見えません。データを可視化してくれる装置がモニターだなんて、説明するほどのこともありませんね。でも、ここが重要なんです。データを直接可視化できる装置はモニター以外に存在しないのです。デジタルデータは、プロファイルとともに記録され、そこで「色」はデータとして確定しているのですが、モニターが正しくなければ、正しい表色を得られるはずもなく、結果データ通りの色を見ることはできません。

カラーマネージメントが啓蒙され、モニターはキャリブレーションしなければいけないものであるということが広く浸透してきました。すでに、モニターは常にキャリブレーションしている方が多いと思います。そこで、少し突っ込んでいくつかのモニターのキャリブレーション結果を見てみましょう。ここでは、今やキャリブレーションツールとして定番の感のある、i1でのキャリブレーション結果を見てみたいと思います。キャリブレーション条件はD50:80cd:ガンマ1.8です。

低価格モニターの結果

図1

図1 グラフ部分

まずは低価格モニター。図1はi1のソフトウェアi1 Matchでi1がどのような補正をしたかを示す、最終画面です。その右のグラフは、i1が補正したRGBの値です。ハイライト側では出力を下げ、シャドウ側では出力をあげていることが分かります。また、RGBのラインもバラバラですね。低価格のモニターでは本来カラーマネージメントを目的とせず、一般家庭で、日中の明るいところも含めて動画などをきれいに見せるため、元々の設計自体が輝度もコントラストも高いのです。そして、IEC(国際電気標準会議)による国際標準として白色点6500Kとして設計されています。低価格機においては、輝度・コントラスト・白色点と言った設定をデバイス側(モニター)でコントロールできませんね。

違っているものを無理矢理ソフトウェアで合わせ込むので、こうした補正結果になるのです。入力と出力の結果がリニアではありませんね。こうしたモニターでは残念ながら正しい色を見ることができません。それだけではなく、データがバンディングを起こしているように見えることもしばしばです。それは、モニターの表示がバンディングを起こしているだけで、データそのものがバンディングを起こしている訳ではありません。これを直そうとレタッチすると、モニター上ではきれいに見えても実際のデータはバンディングをしてしまった、なんてことにもなってしまいます。

高価格モニターの結果

図2

図2 グラフ部分

そして次は、DTPでは実績のある高級ラインのモニターです(図2)。こちらのモニターも白色点の設計値は6500Kなので、5000Kにあわせ込む際にBチャンネルの出力が抑えられてしまっています。この場合、Bチャンネルの階調が減って見えていることになりますが、全体が比較的にリニアで穏やかな変化であるので、まずまずの表色をすることができます。また、調整方法の工夫によってよりリニアにすることも可能です。

ColorEdgeシリーズの結果

図3

図3 グラフ部分

そして、最後にEIZO ColorEdgeシリーズ(図3)。ColorEdgeシリーズは専用アプリケーションでキャリブレーションをしたあとにもう一度、i1でキャリブレーションをしてみた結果です。RGB各色がそれぞれリニアな入出力の結果を持っています。これはつまりi1によるソフトウェアキャリブレーションが必要ではなかったという意味ですね。ColorEdgeシリーズの特徴はなんといってもハードウェア・キャリブレーションですが、これはモニター本体の出力そのものを調整しているのです。これに対して通常のモニターでは、出力はそのままに、パソコン上のソフトウェアで逆位相のプロファイルを作成し、表示をします。データに対してリニアな表色を目指すならハードウェア・キャリブレーションが必要なのです。

写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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