2012年03月08日
西村由紀江「微笑みの鐘」 MV
P=石田晃久 Dir+ED=高野光太郎
使い慣れたPhotoshopでムービーファイルを開いて
フォトグラファー自身が色調整やフィルター処理を行なう
フォトグラファーの石田晃久氏がムービーの撮影に興味を持つようになったのは、多くの人と同じように、EOS 5D Mark IIがきっかけだった。しかし本当の意味で転機となったのは、映像クリエイター高野光太郎氏との出会いである。
「Piano」撮影中の石田晃久氏(左)と、映像クリエイター高野光太郎氏(右)。写真:竹澤宏
「写真撮影の合間に何の気なしにモデルを撮った動画があって、これを高野さんが短いムービーにまとめてくれたのですが、それを見てものすごいカルチャーショックを受けました。構成も考えずにただ漫然と撮影しただけなのに、高野さんが編集して音楽を加えると、まるで別物のようにカッコよくなっていたんです」。
石田氏はそれまで、ムービーを仕事にするためには、動画の撮影テクニックや編集ソフトのスキルを身につけなくてはならないと考えていたという。
「ムービーの経験がなかったので必要以上に肩に力が入っていたのでしょうが、やはり餅は餅屋というか、全体の構成や編集は他の人に力を貸してもらう方がいいんだと気がつきました。写真の現場はフォトグラファーが全てを仕切っているので、ムービーも同じようにしなくてはと思い込んでいたんでしょうね。もっと肩の力を抜いていいんだと高野さんに教わりました」。
それ以降、このコンビで何本ものムービーを仕上げてきた。上に挙げた、ピアニスト西村由紀江のミュージックビデオも2人のコラボレーションによる作品だ。
「高野さんと仕事をする場合、編集はすべて彼にお任せしているので、フォトグラファーである自分はフレーミングやライティングに集中して、パンニングやズーミングも無理して行なわないようにしています。と言っても、色やトーンを自分なりに整えたい場合もありますから、そういう時はPhotoshopを使います」。
意外と知られていないが、PhotoshopのExtended版は動画を読み込んで調整することができる。たとえば、下の「Piano」のMVでは、調整レイヤーを使って色補正をしたり、スマートフィルターによるレンズ補正やノイズ軽減など、ほぼ全カットにわたって石田さんが細かい調整を行なっている。Photoshopなら、今までの写真で培ってきたスキルがそのままムービーでも活かせるのだ。
「ムービーを始めた頃はFinal Cut Proの使い方を一生懸命勉強しました。もちろん、それも無駄ではありませんでしたが、やっぱり使い慣れたPhotoshopが動画でも使えるのは心強いです。
ただし、いつもPhotoshopを使う必要はない。フォトグラファーにとっての最大の武器はフレーミングとライティング。それは写真も動画も変わらないと思います。フォトグラファーがムービーで仕事をするには、そこに磨きをかけていくのが一番大事じゃないかと思います」。
ムービーに真剣に取り組んで2年になる石田氏は、一回りしてようやく、シンプルな結論にたどり着いたようだ。
西村由紀江「Piano」 MV
P=石田晃久 Dir+ED=高野光太郎
(3)
Photoshop Extendedでは写真と同じように動画の調整が可能。「Piano」では、石田氏がPhotoshopで調整を行なって、PSD形式で保存したファイルをもとに、高野氏がAfter EffectsやPremiereで仕上げている。
(1)Photoshop CS5 Extendedで動画ファイルを開き、アニメーションのパレットを開いたところ。写真と同じように調整レイヤーを使って色補正を行なえる。
(2)(3)スマートオブジェクト化することで、動画に対してフィルターをかけられる。画面キャプチャの(2)はレンズの歪みを補正するレンズ補正フィルター、(3)は「ノイズを軽減」でEOS MOVIEの偽色を消しているところ。
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