Photoshopプラスαの仕事術

Photoshopを出発点として動画の制作を開始

ヴォンズ・ピクチャーズ

社内コンペをきっかけにムービー作成を試行錯誤
レタッチ技術を活かしながら独自の映像表現を追求

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ヴォンズ・ピクチャーズの映像制作チーム。左からプロデューサーを担当する高山和久氏、画像処理と映像編集を担当する大里宗也氏、撮影と映像のディレクションを行なう片岡竜一氏。

2011年11月現在、撮影部門2名、画像処理部門10名、3DCG部門2名、Web部門7名の計21名のスタッフを擁するヴォンズ・ピクチャーズ。1997年の設立以降、グラフィック広告の画像処理をメインにしながら、3DCGやリアルイラスト制作、Webデザインの分野へと進出してきたが、ここ2年あまり試行錯誤を経て、映像制作も手掛けるようになった。

「毎年、クリスマスの前にクライアントや広告代理店など仕事関係でお世話になった方々に送るグリーティングカードを社内でコンペを行なって作っています。

2009年のコンペでは、メールで送るコンテンツとして、Flashのアニメーション作品やMotionを使ったムービー作品が出てくるようになりました。その作品を見たとき、社内の若いスタッフたちは動画にも興味があることに気がつき、その才能を伸ばすことができないだろうかと考え始めました」(代表取締役 片岡竜一氏)。


「CS5のアニメーション機能の充実と拡張性が、映像制作の架け橋になったような気がする」というヴォンズ・ピクチャーズの「動くグリーティングカード」。現在、Webサイトでも閲覧可能。

2009年に作られた「動くグリーティングカード」(上画像)は、業界関係者のおよそ1000人ほどに配信された。これを作ったのは、画像処理部門のチーフレタッチャーの大里宗也氏。

「デジタル一眼レフカメラを使い、微速度撮影で夜景を大量に撮影しました。その画像を素材にコマ落としのように繋げて動く映像にするため、Motion4で編集しています。それだけではつまらないと思い、画面を動かし斜めにパンするように見せたり、Photoshopで変形を加え、まるで万華鏡のような画像が動くムービーを考えてみました」(大里宗也氏)

この作品が仕事関係者に配信されたことで、ヴォンズ・ピクチャーズが動画に取り組み始めたメッセージともなった。

「ちょうどその頃、PhotoshopがCS4にバージョンアップされ、AfterEffectsとの連携や3Dモーショングラフィックスができるようになったことも追い風になりました。同時にデジタル一眼レフカメラで手軽にHD撮影ができるようになり、映像制作に対する敷居が一気に低くなったと感じ始めた時期でもありました」(片岡氏)

2010年にAdobeの主催するセミナーで発表するために、EOSムービーの実写と3DCGを合成したハイビジョン作品も作った。(下画像)。


コマーシャル・フォトおよびShuffleで連載していた「レタッチの基本ワザ」をワコム社とのタイアップでムービー化した作品。

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撮影風景。
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各カットはMotion(左上)でアニメーションを制作し、それらをFinal Cut Pro(左下)で編集して繋げた。

「これらの作品を自社のWebサイトやYouTubeに発表した頃、グラフィックの仕事を一緒にしているアートディレクターから、ムービーも作れるんだったら、こういう仕事をやってもらえないか?という声がかかるようになりました」(片岡氏)

動画に関心のあるアートディレクターから、グラフィックのビジュアルと連動した映像コンテンツの仕事が発注される中、社内では、映像制作の体制を整えなければならなくなった。

白羽の矢が立ったのは社内のWeb部門のチーフ高山和久氏。映像コンテンツ制作のプロデューサーとして招聘された。

「もともとWebサイトの制作の絵コンテ制作、テストアップ、本番データアップという制作行程がムービー制作と似ていたこともあり、映像制作の進行やスケジュール管理を任された時にも、なんとか同じように対応できました」(高山氏)。

こうして片岡氏が撮影とディレクションを担当、大里氏が画像処理と映像編集を担当、高山氏がプロデューサーとして全体を管理するという映像制作チームができあがった。

「Photoshopt CS5以降、グラフィックの画像処理と映像関連ソフトの連携が良くなり、プラグインなども充実して、簡単に交互に行き来できるようになり、現在の社内での連携では境目を感じなくなってきています」(片岡氏)

さらにソフトやプラグインのほか、映像制作のために高額な機材投資を行なう必要もなかったという。

「かつて静止画の画像処理も高額な専用機で行なわれていた時代がありましたが、現在では安くて高性能な汎用機を使って簡単にできるようになりました。

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枯れかけたひまわりに手を添えるとみるみる元気な状態に蘇る様子をPhotoshopの画像処理とMotionによるアニメーションで映像化。実際はひまわりの枯れてゆく様子を微速度撮影した静止画素材を逆に並べて編集している。

img_soft_ps_plus04_57.jpg 上のムービーコンテンツのキービジュアルとなったグラフィック用の画像。ムービー制作のために、ひまわりと手は新たに撮影している。

2011年 ファイザー/イベント映像
A&P=電通サドラー・アンド・ヘネシー
CD=佐藤直滋 P=片岡竜一 D=大里宗也 Pr=高山和久

レタッチ用の作業環境でも映像制作は可能になった。
新たなツールとアイデアでムービーコンテンツの制作に挑む

「今では映像データを高速処理できるくらいPCのパフォーマンスは上がり、映像関連ソフトは手頃な価格になっています。静止画のレタッチ用に使っていたPCでも、グラフィックボードやメモリ、高速なHDDを導入することで高画質の映像制作が可能になったことも大きいと思います。

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Phantom FLEXを使って、白馬をハイスピード撮影する片岡氏(下画像参照)。
カメラ:VISION RESEACH Phantom FLEX レンズ:24-290mm Angenieux Optimo T2.8 4'min focus

PhotoshopとAfterEffects 、FinalCutProと共通で使えるプラグインソフトが出てきたことも、静止画と映像の境目がなくなりつつあることの象徴のような気もします」(大里氏)。

「静止画の場合、撮影では、ここまでの素材があれば、後でレタッチをすれば良いという見極めをしながら、効率の良い画像処理のワークフローを組んできました。映像制作の場合も応用できる面が多くあり、撮影で追い込んでおく部分、画像処理や編集で補える部分を読めるのが、レタッチカンパニーの映像制作の強みかもしれません。

我々は映像制作には新規参入した分、静止画の素材や3DCGの合成、新しく出てきた映像制作ソフトなども躊躇なく取り入れることができるメリットもあると思います。

今後も新しい可能性に積極的にチャレンジしていきたいと思っています」(片岡氏)。


2010年の「Adobeデジタルデザインセミナー」で披露された一眼レフムービーの実写映像と3DCGで作ったロボットを合成したムービー作品。実写映像に入っている白い立方体が3DCGのロボットのパースや光の当たり具合を演算するための重要なポイントになっている。

Photoshop +α

2011年 アステラス製薬+ファイザー/イベント映像

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A&P=電通サドラー・アンド・ヘネシー
CD=佐藤直滋 P=片岡竜一 D=大里宗也 Pr=高山和久



この撮影ではハイスピード撮影が可能なカメラ、Phantom FLEX(ファントム フレックス)を使用。白馬のたなびくたてがみや舞い上がる砂煙をブレること無く捉えるため、2500fpsで撮影した。

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動画のカラーグレーディングには「Magic Bullet Looks」を使用。Photoshop版も提供されているプラグインで、例えばPhotoshopで作った設定ファイルを書き出せば、Final Cut Pro版の「Magic Bullet Looks」でもそのまま読み込むことができる。


アステラス製薬+ファイザー イベント映像のメイキングムービー。この仕事では撮影から編集までをすべてヴォンズ・ピクチャーズで担当している。

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