2019年11月26日
自然で美しいポートレイトを仕上げるためのレタッチには、チェックすべきポイントがある。ヴォンズ・ピクチャーズのレタッチャー・濱中英華氏が、そのポイントを1つ1つ解説していく当連載。前回の目元に続く第2回のテーマは「鼻」と「口元」を採り上げる。2人の女性が時空を超えて巡り合う、不思議な世界観を持つ写真作品を題材に、プロのレタッチ技を披露していただこう。
今回の第2弾は、人物レタッチをする上でチェックすべきポイント・濱中メソッドの4〜7。鼻と口元〜その周辺を整えていきます。
人物レタッチを正しいゴールに導く 濱中メソッド 16

16箇所のチェックポイント・ ・ ・ここで、無駄なく進めるコツをひと言!
1つ1つを完璧に仕上げてから次に行く。というよりは、ざっくり駆け足で16項目やってみて、さらにやった方が良いものはもっと詰めていく。
・ ・ ・というのが程良い仕上がりとなります。常にバランスを見ながら進めましょう。

ではさっそく・・・鼻から見て行きましょう。
濱中メソッド④ 鼻のチェックポイントは3つ
4/a…
鼻筋はすっきりがきれいです!
(鼻筋をすっきりさせたことでその人の個性が失われるのなら…そのままキープがbetterです)
4/b…
鼻のアタマの毛穴や産毛など、なじませます。ハイライトのツヤ、残しましょう。
(ハイライトのツヤ、テカリに見えたら抑えてもOKです)
4/c…
鼻下~口元に掛けてのシャドウは整理します。また微妙なクスミがあったら取りましょう!(あまり複雑な印象にならないようにします)
before & after
サンプルで見ていきましょう。

4/a.
鼻筋はすっきりがきれいです!



4/b.
鼻のアタマの毛穴やぽつぽつ、なじませましょう。
ハイライトのツヤはキープです!



★4/c.
鼻下のシャドウ。複雑な印象になるのでなじませてスッキリ!



4/c.
微妙なクスミ、なじませましょう!


★4/c「鼻下のシャドウ」の補正に使用したツール
⿐下のシャドウはトーンカーブで調整します。1枚のトーンカーブで仕上げようとせずに、何枚かのトーンカーブを組み合わせて、複合ワザで消していきます。


▼1:
新規調整レイヤー等でトーンカーブを作成したら、トーンカーブウインドウの「⼿のアイコン」をONにします。

▼2:
画像の明るくしたい部分にスポイトマークを合わせると、そこがカーブのどのポイントなのかが確認できます。
そのポイントを明るい⽅向にスライドします。

▼3:
1個⽬のカーブと使⽤したマスクはこちら。
※マスクはエアブラシで描きます。



▼4:
1個のトーンカーブでなじませられなかったら2個⽬のカーブを作成。エアブラシで同じくマスクを描きます。



▼5:
徐々になじんできましたね。
今度はシャドウに囲まれて明るい部分が⽬⽴ってきたので、逆に暗くしてなじませます。

ちょっとブレイク リップの話

リップの色や質感、実は重要なんですよ。トレンドがあるので知っておくと良いでしょう。 2019年現在は、ティント系のリップが流行っていますので、今回もリップティントを使用しています。
マットもしくはセミマット、そして透明感がある仕上がりというのが主流です。そして今年は赤系が流行ですね。などなど…レタッチャーはその時のメイクのトレンドもしっかり把握しておく必要があるのです!
逆に言うと、流行を知らなかったとしても、注意深く見ていると、その時のトレンドが不思議と分かってきますよ!!
次は・・・口元です。
濱中メソッド⑤ 口元のチェックポイントは3つ
5/a…
ほうれい線は1本でよい! この人ならではの…というのでない限り、2本目は整理しましょう。長いほうれい線、短くしてOK。
(ほうれい線は消しすぎると別人になります。存在はするがシワの深さを弱める、線でなくハイライトと影のみで表現する、などいろいろなやり方で調整しましょう)
5/b…
もしも“重力で落ちた頬やそれを支えるほうれい線”を見つけたら…元の位置に戻してあげましょう。
5/c…
リップの縦ジワはなじませます。目指すは縦ジワ抑えてふっくら仕上がり!
before & after
サンプルで見ていきましょう。

5/a.
ほうれい線、なじませつつ 短くします。



5/a.
ほうれい線、シワの深さを和らげましょう。線というより陰影で表現すると上級者!



★5/a・5/b.
ほうれい線を短くするだけでなく、ゆがみツールで、ほうれい線や頬、ついでに口角上げもしちゃいます!



5/c.
リップの縦じわ抑えます。ふっくらを目指しましょう!


★5/b「重力で落ちた頬(それを支えるほうれい線)」の補正に使用したツール
「ゆがみフィルター」を使って引き上げます。重力に逆らって持ち上げるイメージです。この手の調整に万能なのが、ゆがみフィルターです。

「前方ワープツール」を使用します。


「ブラシツールオプション」
ブラシサイズなどは、画像サイズによりますが、実際にスライダを動かして体感してみてください。
1発で仕上げるやり方と、細かく徐々に理想形にもっていくやり方と2種類あります。前者はブラシサイズ大きめ、後者はブラシサイズ小さめで行ないます。場所によって向き不向きがあります。ちなみに今回は後者で修正しました。
あとほんのちょっとだけ微笑ませたい!という時の、わたしの大好きな方法があります!


ゆがみフィルター「顔⽴ちを調整」は、程よく⾃然に⼝⾓を上げたり⽬の⼤きさを調整したりできるので、とても使い勝⼿が良いです。
細かな調整を数値で管理できるのがとても便利です。
下に掲載する「before & after」を見てみてください。短時間でとても自然な仕上がりになります。何度もやり直してみたり、カタチを悩んだりしないようになりました。

★5/a・5/b.
もう少しやりたいところを抑えてほどほどにするのがコツです。やりすぎると別⼈になっちゃいます。。


濱中メソッド⑥ 歯のチェックポイントは4つ
6/a…
歯の長さがマチマチ、ガタガタ歯、不自然にならないように長さを多少整えてOK!
6/b…
鋭く先の尖った歯、少しコワイです。目立たないように。
6/c…
歯によって暗かったり明るかったり(ライティングや角度にもよりますが)、特に前歯の2本は同じくらいの明るさ&色に!
6/d…
適度に白く! あくまでも適度に。歯を真っ白にしてそこだけ目立ってしまわないように気を付けます。歯茎は健康的な色を目指します。
before & after

6/a・6/b.
できるだけ⻭がガタガタしないように調整します。⼋重⻭が鋭かったら少し柔らかく!


今回の最後のチェックポイント・・・ 残り1つです。頑張りましょう。あごです。
濱中メソッド⑦ あごのチェックポイントは3つ
7/a…
あごの正面は意外と大切なポイント! ここをやりすぎると一気に嘘っぽくなるので大切な場所です。あごの立体感、大事にしましょう!
7/b…
ニキビ、吹き出物ができやすい場所なので、それは取りましょう!
7/c…
横向きのカットなど、二重アゴには要注意!!! あごと首の境界線、欲しいですね。
before & after
サンプルで見ていきましょう。

7/b.
ニキビ跡&吹き出物系は、消しましょう。



★7/c.
あごと⾸の境界を出してスッキリ!


★7/c「スッキリしたあご補正」に使用したツール

「前方ワープツール」を使用します。


今回もゆがみフィルターを使⽤します。なるべく⼤きいブラシを使⽤します。
ちょっとブレイク 寄ったり引いたり

ずーっと目一杯アップの状態にして目などをレタッチしていて、いざ引いて見たらつるんつるんになっていて…
「わー、やりすぎた!」って時、ありますよね。
そういうことがないように、寄ったり引いたりして仕上げていきます。寄って1分作業したら引いてみて、また寄って、を繰り返します。
引いて何を見ているかというと、全体のバランスなんですね。最終の仕上がりのサイズが小さいものでしたら、引きの状態での作業のみで完結しても良いかもしれません。
メインイメージのbefore & after

それでは、イメージカットの鼻、口元、歯、あごのチェックポイントを修正してみましょう。



before & afterで確認すると、整った印象になっているのが分かりますね。この後は、どこまで整った印象にしていくのか、というディレクションに関わってきます。
それでは今回はここまで。
次回は髪の⽑、もみあげ、⽿、おでこ&頬、のチェックポイントを解説していきます。
Art Director:石川翼(VONS Pictures)
Photographer:片岡竜一(VONS Pictures)
Stylist:廣田美保子
Hair & Make-Up:宮澤結弦
Retoucher:濱中英華(VONS Pictures)
Producer:高橋永利香(VONS Pictures)
出演:喜野ベリ・初音ナチ
ヴォンズ・ピクチャーズ VONS pictures
撮影、画像処理、3DCG、動画など、異なる技術を融合して広告ビジュアルを提供する制作会社。
https://www.vons.co.jp/