2014年03月31日
フォトグラファーがフォトブックを作るなら、「思った通りの写真表現をしたい」という思いがあるはずだ。キヤノンが開始した「PhotoJewel(フォトジュエル)」は、業務用フォトプリンター「DreamLabo 5000」で出力した高画質フォトブックを作成できるサービス。果たしてフォトグラファーの思いに応えるサービスなのだろうか。
高画質プリンターDreamLabo 5000で作るフォトブックサービス
[SPEC] | |||
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7色インクの | ハードカバー | 暗所保存 | CANON iMAGE |
インクジェットならではの幅広い色再現域を実現
キヤノンが新しく提供する「PhotoJewel」は、同社が開発した業務用フォトプリンター「DreamLabo 5000」で出力するフォトブックサービスだ。
同社では、これまで手軽にフォトブックを作成する「PHOTOPRESSO」というサービスを提供しているが、PhotoJewelは、より高画質写真を求めるユーザー向けという位置づけとなる。
出力機となるDreamLabo 5000は、キヤノンが2011年に業務用フォトプリンター市場向けの新ブランドとして発表した「DreamLabo」の第一弾業務用プリンター。すでにいくつかのフォトブックサービスでDreamLabo 5000が利用されているが、「キヤノンとしても、入力から出力までの高品質なトータルソリューションを提供したい」(キヤノンマーケティングジャパン)という狙いから、今回の新たなフォトブックサービスPhotoJewelが開始されることになった。
DreamLabo 5000の大きな特徴の一つは、「C」「M」「Y」「BK」に、「PC(フォトシアン)」「PM(フォトマゼンダ)」「Gy(グレー)」を加えた計7色の染料インクを使ったインクジェットプリンターであるということだ。ハイライト部分の階調を滑らかに、特にブルーやグリーンといった、通常の印刷では出にくい色も鮮やかに表現できる。また、黒の締りも特徴的で、モノクロ写真を出力した場合も階調が豊かだ。
解像度は1,200×2,400dpi、内部演算で約600dpiという高解像度の出力を実現し、最近の高画質のデジタルカメラの性能を活かした出力が期待できるだろう。
そのほか、DreamLabo 5000のヘッド部分にはキヤノン独自の高密度プリントヘッド技術「FINE(ファイン)」を搭載、用紙はキヤノン純正用紙を利用することで約300年の耐久性があるなど、同社のプリント技術の結晶ともいえるこのサービス。最近のフォトブックサービスの画質は目に見えて向上しているが、それに勝るとも劣らない品質であると言えるだろう。
キヤノン製品ユーザーのみの会員制サイトからアクセス
PhotoJewelは、キヤノンのWebサイト「CANON iMAGE GATEWAY」の会員のみが利用できるサービスだ。このWebサイトはデジカメやビデオカメラ、PIXUSシリーズのプリンターなどの対象キヤノン製品を購入したユーザーのみが登録できる(登録は無料)。CANON iMAGE GATEWAYのサイトにログインしてからPhotoJewelにアクセスすることになる。
フォトブック作成作業は、Webブラウザを通じて行なう。そのため、OSや作業場所を選ばず(推奨環境はあり)、ほとんどのパソコンから作業可能だ。パソコンから写真をアップロードし、レイアウト作業もWebブラウザ上で行なう。レイアウトはいくつか用意されており、テキストも入力可能だ。
フォトブックのサイズとページ数は上記の表の通りで、最大48ページまで作成できる。作品の「顔」となる表紙にはハードカバーを採用しており、高級感を演出できる。製本は無線綴じになる。
レイアウトが決まったら、配送先や支払い方法を指定し、注文が完了する。一定時間経過後はキャンセルがきかないなどの制約はあるが、支払いなどは通常のネットショッピングと同じ感覚で利用できるだろう。気になる価格は判型やページ数により3,980円〜1万円程度。注文から納品までは約1週間だ。
キヤノンによると、自由にレイアウトできる専用アプリなど、よりハイエンド向けのツールの提供も将来的には検討しているという。また、現在は用紙はサテンタイプ(半光沢)の1種類だが今後は光沢タイプの導入や、無線綴じだけでなく見開きで180度開く「フルフラット」も選べるようにしたいという。「プロのフォトグラファーの利用も意識していきたい」(キヤノンマーケティングジャパン)とのことなので、今後の展開も期待できるだろう。
[PROCESS]納品までの流れ
[PRODUCT]7色染料インクの広い色再現域による高画質フォトブック
最大サイズはA3スクエア(300×300mm)となっているが、今後用紙の種類や製本の形態は順次拡大していく予定だという。今のところ見開きを使って1枚の写真をレイアウトすることはできないが、今後フルフラットの製本方法によって対応する予定だ。
DreamLabo 5000による他のフォトブックサービス
エスエス企画 photophoto.jp
photophoto.jpは、建築写真撮影会社として高いシェアを誇るエスエスグループが運営する写真プリントのサイトで、DreamLabo 5000による写真集の受注も行なっている。一般的なフォトブックと違っているのは、通常の印刷物と同様にAdobe InDesignでデザインが可能で、色校正にも対応していること。製本も専門の職人が担当する。上に掲げた名越啓介写真集「BLUE FIRE」もエスエス企画が印刷・製本を担当しており、高級感のある物に仕上がっている。
カメラのナニワ DreamBook
cameranonaniwa.co.jp/dreambook/
カメラのナニワはDreamLabo 5000の国内導入第1号で、DreamBookのブランドでフォトブックサービスを展開している。専用の編集ソフトで編集してネットで注文、自宅またはお店で受け取るというスタイルだ。ソフトカバー、ハードカバー、マガジン、フルフラットの4つの製本スタイルが選べる。
ナガトモ デパ帳
ナガトモは2012年4月から、DreamLabo 5000によるフォトブックサービス「デパ帳」を展開している。用紙はサテン/ラスター/グロッシー(準備中)、表紙はハードカバー/ソフトカバー、製本はドイツの「劣化しない」製本技術PUR製本/180度フルフラットオープンのレイフラット製本を選ぶことができる。
取材:丸山陽子
※この記事はコマーシャル・フォト2014年3月号 特集「フォトグラファーのための高品質フォトブック」を転載しています。