2009年07月31日
現在、写真用光源として最も広く利用されているストロボ光源。プロの撮影スタジオでも標準的な照明機材として利用されています。この連載では、ジェネレータータイプのストロボを中心にセッティングや光量調整の手順を解説します。
撮影現場で最も使われるストロボ光源
現在、写真撮影用の人工光源として、ストロボが最も多く使われていますが、その種類、目的はいくつかに分けられます。
コンパクトカメラなどに内蔵されたストロボは、被写体を照らしている光が不足している場合に発光させて、一定の画質を確保するという目的が第一となります。この場合はライティングをどうこうすることよりも、ブレないこと、フォーカスが合うことを優先した、光の強制照射といえます。
よくフラッシュの嵐という状況がありますが、報道写真の現場では、動いているものを写し止めるストロボの高速閃光が重要になってきます。つまり、ライティングの利便性よりは、絞り込める大光量と、動きを止める閃光という部分が評価されているといえます。
広告やファッションなどの商業写真の世界でも、ストロボが登場した当初は、高速閃光で動きを止める機能が注目されました。しかし、その後の普及は、やはり安定して使えるデーライト光源としての利点が受け入れられたためです。
ストロボ光源のキセノン放電管から発せられる光は、太陽光線に極めて近い特性を持っています。そのためデーライトタイプのカラーフィルムを使用でき、しかも、ストロボ普及以前、広告撮影スタジオで幅広く利用されてきたタングステン光源などとは違って、調光ボリュームで発光量を調節しても、その色温度特性があまり変化しないという、写真撮影に適した特徴も持っているのです。
現在、ストロボはほとんどの撮影スタジオで、標準的な照明器具として、定着していると言ってよいでしょう。
機材も、電源部(ジェネレーター部)と発光部(フラッシュヘッド、またはランプヘッドなどと呼ばれます)を分離してスタジオ撮影に特化したタイプや、ロケなどに使われる電源部と発光部が一つになったモノブロックタイプなどがあり、最近ではデジタル技術を取り入れ、正確な調光、安全性能の向上、色温度のコントロール、パソコンソフトからの制御機能など、驚くほど進化しています。また発光部および関連アクセサリーのバリエーションも豊富に開発されて、ライティングに必要なものがほとんど揃っています。
ジェネレータータイプ
スタジオ用ストロボでは、電源部(ジェネレーター)と発光部(フラッシュヘッド/ランプヘッド)が分離しているタイプが主流です。
ジェネレーターとは発電機という意味ですが、その構造は、AC100V(スタジオでは200Vの場合もある)を直流に整流して、おおよそ600V〜900Vまで昇圧し、コンデンサー(蓄電器)に電気エネルギーを溜めておきます。
カメラに接続したシンクロコードを通して、シャッターを切った信号が送られ、発光部内のキセノン放電管へ一気に電気を流し、太陽光にも匹敵する光量を得るという仕組みです。
またジェネレーターは電気を溜めるだけでなく、発光量を調節する機能を持っていて、接続する発光部も、ひとつだけではなく、通常2灯から4灯の複数の発光部が接続できる設計になっています。
数十年前の初期のストロボは、光量が安定せず、「充電完了ランプが点灯してから少し待って使うべし」などと言われたこともありましたが、現在ではほとんどの機種が高度な電子回路で制御されているので、発光のばらつきは大変少なくなりました。光量の調節範囲は機種によって異なりますが、多くの機種では、フル光量に対し、1/32(-5EV)位まで調節ができるようになっています。
モノブロックタイプ
ジェネレーターとフラッシュヘッドが一体になったストロボを、「モノブロックタイプ」と称しています。この名前は、もともとバルカー社が名づけたものですが、プロ写真業界では、現在、一般名称として使われています。
世界的に見ても、このモノブロックが一番生産されていて、欧米では1200Ws以上の大出力タイプも作られています。ACコンセントがあれば、どこでもスタジオライティングが可能になることと、最近ではデジタルカメラが主流になっているので、昔のように大光量がなくても充分撮影できることから考えて、デジタル一眼レフカメラのロケ用として、一番向いている照明器具かもしれません。
小型、軽量のため、持ち運びの労力も削減でき、リフレクターやバンクなどのアクセサリー類を、ジェネレータータイプと共用できるのも利点です。ただし、ロケ等を主に考えた設計のため、ジェネレータータイプに比べ、機能が制限され、低出力のものが一般的です。モデリングランプの光量もあまり大きくなく、モデリングランプでライティングをしっかりチェックするといった使い方は、難しいかもしれません。
モノブロックタイプはジェネレーターとフラッシュヘッドが一体になっていて、背面にコントロール部がある。写真はプロペットのMONO 300N。
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玉内公一 Kohichi Tamauchi
ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。