ストロボ光源の基礎知識

第3回 ストロボの光量を調節する

解説:玉内公一 モデル:小嶋じゅん(スウィートパワー)

ライティングで重要な作業が、光量のバランスを取ることです。ここではジェネレータータイプのストロボの光量調節を見ていきましょう。

覚えておいていただきたいのが、スタジオ用ストロボで撮影をする場合、明るさによってカメラのシャッター速度、撮影絞り値を決めるのではなく、シャッター速度、絞りを決定した後、ストロボの光量を調節して、最適な明るさを作るということです。

まずカメラのシャッター速度は1/60秒に設定します。35mm一眼レフなどでは、1/125秒で撮ることもありますが、通常は1/60秒が基本。レンズシャッターの場合も同様です。つまり、ある一定の間(1/60秒)シャッターを開けておき、そのタイミングでストロボを発光させるという考え方です。

次に、撮影意図に合わせて、レンズの焦点距離、絞り値を決定します。絞りによって必要なストロボ光量も大きく変わるので、どんな仕上がりにするか、最初にできるだけイメージを明確にしておかないと、途中であわててストロボ灯数を変更することになります。たとえばf2.8で撮る場合と、f16で撮る場合では、必要なストロボ光量は32倍も変わってしまうのです。

撮影する絞り値が決定したら、露出計を用いてストロボ光量を測ってみましょう。その際、露出計の設定も撮影絞り値、ISO感度に合わせておきます。

露出計には、明るさがEV値で表示されます。その数値が適正露光の絞り値になるのですが、表示された測定値が、最初に決めた目的の絞り値と異なっている場合は、ストロボの発光量を調節していけばよいわけです。ストロボの出力はWs(ワットセカンド)という単位で表され、数字が倍になると1EV光量が増え、逆に数字が半分になると1EV光量が少なくなります。多くのストロボの調光バリエーター(出力調節)は、最大出力(FULL)から1/2、1/4、1/8と目盛りがついているので、露出計の測定値と目的の絞り値を比べ、調光バリエーターを操作します。

出力不足など、場合によってはジェネレーターで調光できる範囲を超えてしまうこともあります。その際は、絞り値を変える、ライトと被写体の距離を変える、カメラのISO感度を変えるといった方法で対応することもできますが、これらの方法は応急的な対処方法です。

事前に撮影意図を決め、使用するストロボ(ジェネレーター)の性能を把握しておくことが重要なのは、言うまでもありません。

ストロボ光量(出力)調節の流れ

img_tech_strobe03_01.jpgストロボを使ったライティングでの光量調節の流れを、チャートにしてみました。実際には複数のライトを組み合わせたりするので、流れはもっと複雑ですが、このチャートの考え方がベースとなります。また経験を積むことによって、撮影のイメージ(光のあて方)や絞り値を決めると同時に、適正光量も大体、予測がつくようになります。

number_01.jpgとりあえずストロボを被写体に向けてセットしてみよう。ここでは光量調節を解説するのが目的なので、ポートレイト撮影の基本的なライティング、斜め上45度ぐらいの角度から、光があたるようにセットした。

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上半身アップの撮影なので、あご下あたりに光の中心(光軸)がくるようにセット。



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カメラのシャッター速度を1/60秒に設定する。絞り値はf11とした。先に解説したように、光を自由にコントロールできるスタジオでのストロボ撮影では、シャッター速度、絞り値を決めておき、それに合うように光量を調節するのが基本。

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モデリングランプをONにして、光がきちんとモデルにあたっているかチェックする。最初はモデリングだけで光の状態を測るのは難しいかもしれないが、慣れてくると、灯数の多いセッティングでも、モデリング状態で、大体の仕上がりが読めるようになる。

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露出を測るため、シンクロケーブルで露出計とジェネレーターをつなぐ。これで露出計とストロボが同調され、露出計側から、ストロボの発光が可能になる。

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シャッター速度はなぜ1/60秒か?

スタジオで使用する大型ストロボは閃光速度がそれほど速くなく、一部の機種を除いて、一般的には1/250秒から1/500秒程度です。そして重要なことは、カタログなどの表記は、光量が最大ピーク時の約半分になる時間(半値幅)を、閃光時間として表記しているということです。


つまり、閃光速度が1/250秒と表記されるストロボでも、1/250秒以降、半分近くの光は発光を続けています。そのためシャッター速度を1/250秒より短くセットすると、一部の光がカットされてしまう現象が生じます。大型ストロボで撮影する際のシャッター速度は1/125秒以下、発光した光をすべて利用するならば、1/60秒が最適というわけです。

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光量を取りたい位置に露出計を持っていき、(露出計の)発光ボタンを押す。ストロボが発光し、光量が測られる。気をつけなくてはならないのが、露出を測る位置と露出計の向き。この場合は1灯ライティングなので、適正露出で撮りたい部分(ポートレイト撮影では「あご下」で測ることが多い)に露出計を構え、入光部をライトに向ける(平板測光)。

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img_tech_strobe03_09.jpgimg_tech_strobe03_10.jpg 失敗例。左写真はあご下で計ったが受光部がライトに向いてない。右は露出を測る時、自分の体でライトを遮ってしまった。灯数が増えライティングが複雑になると、意外とやってしまうミスだ。

1/2出力から始めてみよう

経験を積むと、ジェネレーターの出力設定と、ストロボの位置や向きで、大体、どのくらいの光量が得られるかを予測できるようになります。


しかし慣れないうちは、露出を計る際、とりあえずジェネレーターのバリエーターを1/2か1/4にして測ってみます。これならば光量アップ、光量ダウンのどちらにも対応できるし、きりのいい数字なので、明るさを1EVアップ、また1EV下げる時、光量を2倍、または1/2とすぐに設定できるからです。

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絞り1段アップ=光量2倍 絞り1段ダウン=光量1/2

ジェネレーターの出力バリエーターを操作する時、バリエーター目盛りと出力の関係を理解しておきましょう。ポイントは「絞り1段アップ=光量2倍(=出力2倍)」「絞り1段ダウン=光量1/2(=出力半分)」。


目的の絞り値よりも1絞り分、光量が足りない場合は、バリエーターの目盛りを倍の設定まで上げます。光量が2倍になると、露出計のメーターの値も1絞り分(1EV分)多くなります。


逆に、目的の絞り値よりも光量が1絞り分、多い場合は、バリエーターの目盛りで、半分の数値まで下げます。2段分高い場合は、半分の半分、つまり1/4まで光量を下げればよいわけです。

右に2400Wsのジェネレーターを使い、FULL発光でf32の露光だった場合の、出力と絞り値の例を挙げました。


なお、電圧調光タイプのジェネレーター操作で光量を落とす場合は、一度、空発光して、溜まっていた電圧を放電、再蓄電させないと、出力が下がらないことも、覚えておいて下さい(コンデンサ調光ストロボと内部放電回路搭載ストロボは空発光が不要)。

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2400Wsのフル発光で絞り値がf32だった場合。実際の絞り値は状況によって変わる。


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測った数値をチェックしてみよう。露出計には現在、照射されている光で適正となる絞り値が表示される。一発で最初に決めた絞り値(今回はf11)が出ればよいが、たとえばf16といったそれより高い数値が出た場合は、f11で撮るためには光が強すぎる。逆にf8などの数値の場合は光量が足りない。ジェネレーター側で出力を変えて、f11となるように光量を調整しよう。

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img_tech_strobe03_14.jpgf11に対してf8と出たら光量が1段分少ない。

img_tech_strobe03_15.jpgf11に対してf16と出たら光量が1段分多い。



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ジェネレーターには出力調整のためのバリエーターつまみやボタンが付いている。コメットの「CBc-12x」の場合、つまみ形式でFULL、1/2、1/4と目盛りが刻まれ、その間も1/6ステップで調整可能。光量を1絞り分上げるなら、出力を2倍にすればよい。微調整は露出を測りながら、ワンステップずつつまみを動かしていく。

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number_08.jpgジェネレーターの調節以外で適正露光を得るには「絞りを変える」「光源の位置を変える」などの方法があるが、目的の表現とは違ってしまう。手持ちのジェネレーターの調光範囲で調節仕切れない場合、また最終的な微調節と考えた方がよい。

カメラ側の撮影絞りを変える

カメラの絞りを露出計の出た目に合わせることで、適正露出での撮影は可能だが、仕上がりは最初に決めたイメージと違ったものになる。ただし、最終段階で、1/3段程度の調整なら、カメラ側の絞りを変えることもある。

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ライトの位置を変える

光量が足りない場合、また強すぎる場合、被写体とライトの距離を近づけたり、遠ざけたりすることで調整ができる。ただし光源を大きく動かす場合、光のあたり方が変わる。

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撮影感度を変える

デジタルカメラはISO感度が変えられるので、光量が足りない場合は、カメラの感度を変えてしまうという手もある。ただし極度の高感度撮影は、画像にノイズが増えるので注意。

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玉内公一 Kohichi Tamauchi

ドイテクニカルフォト、コメットストロボを経て、2000年に独立。銀塩写真、デジタルフォト、ライティングに関する執筆、セミナーなどを行なっている。日本写真映像専門学校非常勤講師、日本写真学会、日本写真芸術学会会員、電塾運営委員。

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