デジタルフォト&デザインセミナー2007

Retouch Session(大阪・名古屋会場): 写真に生命を吹き込むデジタルフォトレタッチ

講師:宮本准

2年前に株式会社デジモという会社を作りまして、今は2人のスタッフと一緒に広告写真のレタッチの仕事をしています。もともと学生時代は工業デザインの勉強をしていたのですが、だんだんと写真やグラフィックデザインに興味が移ってきて、自分でMacとPhotoshopを買って遊ぶようになりました。ちょうどそのころ博報堂フォトクリエイティブ(現・博報堂プロダクツ)でDTP作業のアルバイトをしていたのですが、卒業する頃に画像処理の部門ができるということを聞きまして、そのままそこへ就職して、以来レタッチ一筋です。というわけで、写真のレタッチ歴は10年以上になります。

作業環境としては、モニタがApple Cinema Displayの30インチとEIZO ColorEdge 221、ペンタブレットがA3ワイドのワコム Intuos 3です。作業中に主に見ているのは30インチですが、色を確認するのは色域の広いCG221のほうです。プリンタも2台あって、エプソンのPX-6500では印刷の色見本、PX-G5100では写真のプリントを出力するなど、用途に応じて機材を使い分けています。事務所には65インチのプラズマテレビも置いてあって、いつもは映画などを見ているのですが、このテレビをパソコンをつなぐと、新聞見開きの30段広告や、B0判ポスターをほぼ原寸大で映し出すこともできます。

最近の仕事を例にしながら、Photoshopでどういう作業をしているのかを説明していきます。大きな広告キャンペーンではタレントさんを起用することが多いので、私のところにも女性、男性を問わず、いろんなタレントさんの画像がやってきます。女性の場合は当然、肌をきれいにすることが多いのですが、やみくもにツルツルのお肌にするのではなく、その人らしさをうまく残しつつ、というところがポイントです。たとえばほくろがチャーミングな女優さんだったら、ほくろはそのまま残しますし、スポーツ選手がちょっとセクシーな衣装を着ている写真だったら、過度にセクシーにならないように肌の露出を抑えたりといった具合です。男性の場合は女性より修正は少ないのですが、ときどき悩むのが腋の部分。キレイに処理しすぎると男性らしさがなくなるし、かといって何もしないというのも…(笑)。

自分の仕事で割と多いかなと思うのが、元の写真から大きくイメージを変えたり、誇張したり、いろんな素材を切り貼りして新しいイメージを作り出す仕事です。「日産自動車 X-TRAIL」のポスターでは、スタジオ撮影のクルマと、背景のショールームの写真を合成しました。クルマに積もっている雪やぶら下がっているツララは、基本的には美術スタッフが作った人工の雪をベースに、部分的に雪を増やす作業を行いました。

「サッポロビール 凄味」のポスターは、発泡酒の“海”が荒々しく波しぶきを上げているというビジュアルですが、波の写真を8枚くらい重ねて巨大な波を作り出すと同時に、元の写真から大きく色を変更しています。実際の海の泡と発泡酒の泡は全然別ものなので、波の合間に気泡の小さい泡を合成して発泡酒らしさを演出しています。こういう細かい工夫が、実は完成度を上げる鍵だと思います。

「サントリー C.C.レモン」では、学校の朝礼で並んでいる生徒が全員C.C.レモンのペットボトルというおバカなビジュアルを作りました。一人だけ気分が悪くなって、倒れちゃったりしていますが(笑)。これは人間と同じ大きさのペットボトルを作ったわけではなく、実際の商品を撮った写真を素材にしています。ただし何十本、百本も並べて1回で写真を撮ると、どうしてもピントの合っている部分と合わない部分が出てしまいます。完成形では手前から奥まですべてにピントが合っている絵にしたかったので、手前、真ん中あたり、奥と、それぞれピントの合っている場所を変えて写真を撮り、それを合成しました。

「カプコン バイオハザード4」は、タレントものではありますが、顔をキレイにするのではなく、逆に顔をむちゃくちゃに歪ませたという珍しい例です。撮影のときに実際に送風機を当てながら撮ってはいますが、いい具合に歪んでいる部分をあちこちから集めてきて貼り合わせて、さらにPhotoshopのゆがみツールで強調しています。広告の仕事では普通、事前にアートディレクターが作ったカンプをもとに作業を進めるのですが、この場合は何日もアートディレクターと一緒に、コンピュータで試行錯誤を繰り返しながら完成させました。

逆に、一度もアートディレクターとも、フォトグラファーとも顔をあわせないで仕事をすることもあります。ニューヨークにいる日本人フォトグラファーから依頼された、ドライジンの「BEEFEATER」の仕事がそうでした。日本だと広告の仕事はほぼ間違いなくアートディレクターから発注されるのですが、欧米ではフォトグラファーがレタッチまで含めて仕上げることがよくあるようです。この場合はメールと共有サーバーで画像をやり取りしながら進めましたが、アートディレクターとは一度も連絡しませんでした。こういう仕事のやり方ができるのも、今という時代ならではだと思います。

「日本コカ・コーラ スプライト」は、商品を飲むと、肩から大きな羽根のように水が噴き出して、その勢いで宙を飛ぶというビジュアルです。レタッチの仕事の中ではこういう水の表現が一番難しい部類に入りますが、これも相当苦労しました。羽根の部分はアタリ用の画像としてCGを作ってもらい、それをベースにしながら水の写真を重ねています。水の写真は、ストロボに同調してホースから水が噴出する仕掛けを作って、水しぶきだけの写真を大量に撮影し、その中から使えそうな部分をいろんな形に切り抜いて使っています。水しぶきのパーツをレイヤーで重ねる際に、描画モードをあれこれ切り替えることで複雑な水の表現を行なっています。

いろんな素材を切り貼りして新しいイメージを作るという仕事では、ほかに「au ショッピングモール」の仕事が印象に残っています。これは携帯のショッピングモールの告知広告で、一見、お店のセットを組んでスタジオで撮ったように見えるかもしれませんが、実は空間そのものも、ディスプレイも、すべて別々の素材を切り貼りしています。こういうバーチャルなお店のイメージはCGで作るのが普通だと思いますが、この場合はB0判のポスターでしたので、写真を使ってよりリアルさを追求する必要がありました。

たとえばTシャツのショップのビジュアルは、何の変哲もない部屋の写真から使えそうな天井や壁の部分を選んで、それを伸ばしたり、不要な部分を消しています。Tシャツのガラスケースも実際にはもっと小さいのですが、それを長く伸ばしたり、ガラスの映り込みや床の反射を描き込んでいます。ライティングもすべてPhotoshopで作っていて、奥から差し込んで来る光の感じ、手前から奥に並んでいる照明など、それぞれレイヤーを作って、一つ一つトーンカーブで明るさを調整をかけています。

合成系の仕事が多いせいか、Photoshopでよく使うのはコピースタンプツールです。自分で“スタンパー”と名乗っているくらい、よく使いますね(笑)。“スタンパー”として今回のバージョンアップで嬉しかったのは、コピースタンプツールのサンプルで「現在のレイヤー以下」が選べるようになったことですね。CS2までは「全レイヤーを対象」というチェックボックスがあって、現在のレイヤーか全レイヤーのどちらかを選べたのですが、「現在のレイヤー以下」を選べるようになってさらに使い勝手がよくなりました。また「コピーソース」というパレットが追加されたのも嬉しいですね。このパレットでは、コピーソースとなる元画像を5つまで登録できるようになり、またコピーソースを半透明で重ねて表示できるようになりました。この新機能のおかげで、ますますコピースタンプツールを使う機会が増えるような気がします。

最後にフォトレタッチの上達法についての自分なりの考え方をお話ししたいと思います。もっと上手にレタッチしたいとか、レタッチを仕事にしようと思っている人には、ぜひ自分なりの写真の見方を確立してほしいと思います。普段いろんな写真や広告を目にすると思うのですが、そういうとき常に「自分だったらこれくらいのコントラストが好きだな」とか、「こういう色調にするともっと良くなるのに」など、写真を見ながら頭の中でイメージをふくらませてください。私自身もこれを実践しています。それから毎日30分でよいので、必ずPhotoshopで写真をいじること。イメージトレーニングと実際のトレーニングの両方を行なうことで、きっとレタッチが楽しくなるし、上達すると思います。

写真:宮本准

宮本准 Hitoshi Miyamoto

1974年 東京都生まれ。1998年 現・博報堂プロダクツ入社。2005年 同社退社。株式会社デジモ設立、現在に至る。NewYork ADC 入賞、ONE SHOW ブロンズ、日経広告部門賞3回、その他。

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