フォトグラファーのColorEdge実践術

第9回 CMSのキモは光源の色温度を統一すること

解説:茂手木秀行

Adobe RGBでもsRGBでも、白色点の色温度は6500Kです。でも、印刷では5000Kが基準ですね。インクジェットプリンタなどのプリントを観察する場合も一緒です。では、フォトグラファーの場合はどちらを基準とすべきなのでしょう。

その答えは5000Kです。これは印刷学会の推奨観察環境が5000Kだから、という理由だけではありません。撮影機材や光源のことを考えると、5000Kのほうが合理的だからです。実のところ、デジタルカメラのRGBそれぞれのチャンネルの入出力値は、5000Kから5200Kくらいの白色点で適正化されていますし、なにより撮影光源として5000Kを大きく超える有効な撮影光源がありません。太陽光は順光で青空を加味しなければ4500Kから5000K前後、ストロボ等人工の撮影光源もほとんどのものが5000Kを中心とした色温度です。

ですから、デジタルカメラのホワイトバランス設定を5000K前後に設定し、5000Kの光源で撮影をして、白色点を5000KとしてキャリブレーションしたColorEdgeで画像を観察し、Photoshopで正しくCMSの設定を行ない、顔料系インクジェットプリンタで出力したプリントを5000Kの光源下で観察。そうすると、撮影した被写体、モニター、プリントの色は驚くほどのマッチングをします。実のところ、CMSのキモは白色点、光源の色温度をすべて統一することだったのです。色温度だけでなく演色指数も大事。かならず演色指数90以上を保つようにしましょう。


撮影光源、カメラ、モニター、プリント、環境光源を上図のように正しく設定しよう

色の問題で悩んでいるフォトグラファーの方は、ぜひ一度、試してみてください。カラーマッチングの悩みはおおむね解決するはずですよ。しかし、撮影現場にいつもColorEdgeがあるとは限らないのが我々フォトグラファーの悩み。オープンロケでは、デジタルカメラの背面モニターやストレージビューアーで画像を確認することもしばしば。そこで、手持ちの撮影機材のモニターの白色点をi1で測定してみました。

例として、ニコンD3(デジタル一眼レフ)、シグマDP1(コンパクトデジカメ)、エプソンP-5000(ストレージビューワ)を見てみましょう。測定結果は、ニコンD3では約5700K、シグマDP-1では約6700K、エプソンP-5000では約5300Kでした。この他にも、いくつかのデジタルカメラの背面モニターを測定してみましたが、最新デジタル一眼レフでは約5000Kから約6000K、コンパクトデジカメと少し古いデジタル一眼レフでは約6500Kから約7000K。サンプル数は多くはありませんが、プロ機材と言えるデジタル一眼レフでは白色点5000K、コンパクト系では6500Kをターゲットにするという流れになってきているようです。 左上:シグマDP1、左下:エプソンP-5000、右:ニコンD3。最新デジタル一眼レフやストレージビューワに搭載されている液晶モニターでは5000K近くになっているようだ。

ただ、エプソンP-5000を除き演色指数はそれほど高くないので、高精度なカラーマッチングができるわけではありません。しかし、白色点が5000Kに近くなったことで、以前より随分と色を見ることができるようになったと、僕自身は実感しています。こうなってくると、背面モニターもキャリブレーションできればいいのに。いや、背面モニターもColorEdgeになったらいいのに、と考えるのは贅沢ってものでしょうか。

そして、今回はもうひとつ小ネタを披露しましょう。皆さん、モニターの表面はきれいにしていますか。自分では気をつけていても、立ち会い撮影や画像加工ではクライアントやエディターが画面を触ってしまうこともしばしば。悩みなんですよね、これ。でも、大人は黙って自分で掃除。クリーナーも刷毛もマストアイテムです。

指紋汚れにはこれ、ナナオ純正モニタークリーニングキットがお薦めです。もちろん、ナナオユーザー以外にもお薦めですよ。普段の手入れや、クリーニング前には刷毛で優しく画面を払いましょう。僕が使っているのは小林刷毛製造所(問:03-3821-6296)のヤギ毛の刷毛(税別8,000円)です。本来は経師屋さんが使うもので、丁寧に毛先を揃えた刷毛なので、素晴らしくホコリを捉えてくれるのです。画面が汚れていると画像のゴミと勘違いしがち。仕事の第一は整理と清掃!ですね。
左:小林刷毛製造所の刷毛、右:モニタークリーニングキット

写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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