小島勉のカラーマネジメント放浪記

色校正とモニターの色を合わせる 〜蜷川実花事務所「ラッキースター」 ①

クリエイティブの現場でカラーマネージメント液晶モニターColorEdgeはどのように活用されているのか。この連載では、プリンティングディレクター 小島勉氏が、クリエイティブと色の関係、そしてColorEdgeの使いこなしについてゲストと共に語っていく。今回は「ラッキースター」のテクニカルディレクター打越誠氏、凸版印刷のディレクター森岩麻衣子氏と共に、写真集の制作についてに語り合った。

img_coloredge_user_uchikoshi1_01.jpg ナビゲータ役の小島勉氏
img_coloredge_user_uchikoshi1_02.jpg ラッキースター 打越誠氏
img_coloredge_user_uchikoshi1_03.jpg 凸版印刷 森岩麻衣子氏


写真家・蜷川実花を支えるテクニカルディレクター

小島:今日は写真家・蜷川実花さんの事務所「ラッキースター」におじゃましています。今回のゲストは蜷川さん本人ではなく、ラッキースターのテクニカルディレクター打越誠さんです。よろしくお願いします。

打越:よろしくお願いします。

小島:打越さんはもともと写真を志されていたんでしょうか。

打越:いえ、学生の時は建築を勉強していて、卒業後はしばらくWebの会社にいたんです。

小島:Webデザインをされていたんですか。

打越:主にはプログラマーとデザイナーをつなぐWebディレクターの仕事ですね。ちょうどその頃に蜷川と知り合って、撮影現場に遊びに行ったりしているうちに写真をやりたくなって、事務所に入りました。ちょうど10年ぐらい前ですかね。

小島:打越さんがテクニカルディレクターという肩書きになったのはいつからですか。

打越:アシスタントとして4年くらいやって、その後独立したんですが、いざ一人でやり始めたら戸惑いがあって。世の中にはいろいろなタイプのフォトグラファーがいると思うんですけど、僕は蜷川しか見たことがないので、その撮り方が正しいと思っていたんですけど、なんかしっくりこない。結局、自分は蜷川のように被写体に肉薄して撮るタイプではないなと気づいたんです。

小島:なるほど。

打越:その後、蜷川が2007年にデジタルカメラへの移行を始めたのをきっかけに事務所に戻りました。その頃はパソコンやデジタルカメラに詳しい人が周りにいなかったし、撮影のテクニカルな部分や機材の面倒を見る人がいた方がクリエイティブが安定するということもありました。テクニカルディレクターという肩書きになったのは、いつの間にかという感じです(笑)。

小島:僕が打越さんと一緒に仕事をするようになったのが2009年頃でしたね。

打越:そうでしたね、平子理沙さんのカレンダーが小島さんと初めてやった仕事でした。

小島:僕が所属しているトッパングループとしては、それ以前から蜷川さんの写真集などをやらせてもらっているんですが、今日は私のほかにもう一人、凸版印刷のプリンティングディレクター森岩麻衣子も連れてきました。今日はこの3人でいろいろと話をしていきたいと思います。

img_coloredge_user_uchikoshi1_04.jpg これまで作ってきた写真集や印刷物を前に語り合う3人。

森岩:蜷川さんとのおつきあいは、2000年からになります。凸版印刷に入社して製版の現場研修を受けて戻ったら、すぐに「蜷川さんのところへ行け」って言われたんです。ディレクターとしての経験がまだまだ浅いのに、いきなり蜷川番のようになって。

打越:面白いですね。縁ですね。

森岩:縁なんですよ、ほんとに。女性の若い作家さんだからディレクターも女性がいいだろうという上司のフィーリングだと思うんですが(笑)。蜷川さんの仕事で一番多いのはやはり写真集ですが、ほかにもポスターや、変わったところではワインのラベルや化粧品のポーチもありました。蜷川さんの写真は普通に印刷するだけではきれいな色では出ないので、私とか小島とかが入って、最終的にいい仕上がりになるように持っていっています。

フィルムとデジタルの異なるトーンに対してどのように統一感を出すか

小島:平子理沙さんのカレンダーは雑誌で撮り下ろした写真をまとめるという企画だったと思いますが、カレンダーといっても箱に入っていたりして、書籍的というか写真集みたいな形式なんですよね。

森岩:フィルムだけではなくデジタルカメラを使った写真もあったりして、トーンが少しバラバラな感じがありました。

打越:雑誌だと印刷のクオリティに制約があるのはわかっているのですが、カレンダーや写真集となると蜷川も自分の名前が出るものだから、デジタルっぽく見えるのは嫌だみたいな話になって、どうしたらいいでしょうかと森岩さんに相談しました。

img_coloredge_user_uchikoshi1_05.jpg 「平子理沙2010カレンダー Living in the Dream」(講談社刊)

森岩:その雑誌はトッパンでは刷っていなかったので、カレンダーになる時に初めて関わらせていただきました。私、よく覚えているんですけど、デジタルデータをそのまま4色に変換したものと、蜷川さんの紙焼きの両方を付き合わせたら、世界観があまりにも違っていたんです。デジタルでもどうしたら、蜷川さんの紙焼きの力強さ、訴える力を出せるんだろうと思って、トッパンの中でもデジタルに強い小島に相談しました。

小島:そうですね。そのためにはRAW現像からやるしかないということになったんですが、作品や被写体によって現像の仕方って当然変わるじゃないですか。それは今でも悩む部分ではあるんですが、基準となるような現像パラメータはなかなか作れないので、1点1点、森岩のディレクションをベースに仕上げていったという感じですね。

森岩:雑誌で使われたのはデジタルの写真でも、蜷川さんがアザーカットでフィルムで撮って紙焼きにしたものがあったので、それを見ながら試行錯誤しました。たとえば粒子感なんかは、紙焼き特有のざらっとした感じっていうのが、実は蜷川さんの写真の強さの1つの要因かもしれないとわかってきたので、粒子をわざとデジタルにも入れてみたり。その入れ方も明るい部分には入れないで、ちょっとアンダーになってくるシャドウに向けて入れていくと、蜷川さんの紙焼き風になるんではないかと。

小島:粒子1つとっても、デジタルで入れると均一の粒状感になっちゃうので、顔の部分に思った以上に入ってしまったりとか、その辺は気をつけなきゃいけなかったですね。ハイライト側は粒子が見えなくて、次のトーンになってくるに従ってだんだん粒子が入ってくるっていうのも勉強になりました。

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「宝海大空×蜷川実花」(講談社刊)

森岩:その次に小島と一緒にやったのが、大衆演劇の宝海大空さんの写真集でした。

小島:この写真集は、後半の舞台写真は紙焼きなんですけど、それ以外はほぼデジタルですよね。これはRAWデータからの色作りを僕がやらせてもらいました。

森岩:見本になる紙焼きはこの時はなかったんですよね。

小島:まったくなかったんですよ。ですから蜷川さんの他の作品で、紙焼きからスキャニングしたデータを参考にしながら、おそるおそる作っていましたね。

打越:彩度が高すぎて気になるところは抑えてほしいと言いましたけど、具体的な指示はウチからはあまり出していなくて。小島さんから上がってきたものを見て、「なんか気持ち悪い」とか、そういう漠然とした伝え方で言ってましたね(笑)。

小島:蜷川さんの写真だと思うと、どうしても最初は彩度を高めにしてしまうんですが、実はそうでもなかったという(笑)。それから、通常の印刷会社や製版の現場の考え方って、どうしても写真のディテールを出すという方向なんですが、この写真集は逆のアプローチで、いかにディテールを抑えながら蜷川さんの色を出していくかっていうのが、すごく苦労したところです。個人的には、写真の見方というか考え方が変わった仕事ですね。

森岩:蜷川さんの紙焼きは、濃いんだけど単純な濃さじゃないんです。そのポイントがわからなかったりすると、ただ単にケバくなっちゃうというか。いわゆるデジタルっぽい鮮やかさみたいになってきちゃうので、それを気をつけなければいけなかったですね。

打越:粒子感とかボケ感を重視すると、不思議な、いい感じの奥行きが出てきて、デジタル特有のつるんとした感じではなくなってきました。これはすごいなあと感動したのを覚えていますね。デジタルでもここまでできるんだっていう。

小島:なんですかね、引っかかる感じっていうんですかね。デジタルのつるんとした感じとは対照的に、紙焼きは引っかかる感じがあって。

森岩:いい感じにデータを破壊するというか、削ぐところは削ぐみたいな。

小島:そうそう。今までの僕らの技術者としての価値観はまったく通用しない。それを変えなきゃいけないというのがありましたね。で、その次にやらせてもらったのが、水原紀子さんの写真集ですね。これはもう、紙焼きとデジタルの混合でしたね。

img_coloredge_user_uchikoshi1_07.jpg
「水原希子×蜷川実花 girl」(講談社刊)

森岩:同じシチュエーションで何ページかあった時に、途中の1点だけデジタルなんです、でも表情がかわいいからこの写真を入れます、ということがありました。そのまま並べちゃうとものすごく不自然なので、小島の方でその差をなくす方向で調整してもらいました。出来上がった写真集を見て「これ、デジタルでしょう」ってわかる方は少ないんじゃないかなと思います。

小島:ただ、色作りに関しては森岩がいないと無理なので、2人で1人みたいな感じですよね。お互い補い合ってる感じで。

打越:ウチの事務所でもレタッチしなければいけない場合があるんですが、どこまでが印刷で出る色なのか、そういうジャッジはできないじゃないですか。印刷のことをわかっているレタッチャーの人ってなかなかいないので、小島さんと森岩さんのコンビはすごく安心感がありました。

ColorEdgeの導入によってモニターとプリンタの色が合うようになった

小島:今、蜷川さんはどちらかと言うとデジタルカメラが多いんですか。

打越:そうですね。雑誌の撮影はほぼデジタルで、逆にフィルムで撮りたい場合は編集部に確認しないと撮れない状況ですね。スケジュール的にデジタルでないと難しくなっていますし、フィルムの種類が少なくなっていて、たとえば現行の中判フィルムだと蜷川が撮りたい色が出ない。それだったらデジタルで撮って調整したほうがいいというのが、率直なところですね。

小島:仕事ではなく、作品を撮るにあたってはどうですか。

打越:そうですね…。最近は本当にデジタルでも撮るようになってきていますので、何が何でもフィルムということはありませんね。ただカメラについてはフィーリングが合う、合わないがあると思います。いまデジタルカメラはオリンパスのPENという小さいカメラを割と使っています。昔、フィルムの時もコンタックスの一眼とリコーのGR1とかを使い分けていたんですけど、PENはそのちょうど中間ぐらいのイメージですね。

森岩:機材に関しては、打越さんがやっぱりフォローされたりするんじゃないですか。

打越:そうですね。僕自身はカメラに興味があるので借りて試してみて、「どうでしたか?」って聞くと、「うーん…」とか返事が返ってくると、あ、これは違うんだなって(笑)。そんな感じでフィーリングの合うカメラを探しているところです。

小島:デジタルでの仕事の流れはだいたい決まっているんですか。

打越:そうですね。レタッチは基本的には外注できるものは外注しているんですね。森岩さんと同じように女性の方なんですけど、フィーリングの合うレタッチャーさんがいて、その方によくお願いしています。でも予算がなかったり時間がなかったりすると、事務所でやることもあります。

小島:じゃあ、僕が想像していたよりもずっとデジタル中心なんですね。

打越:そうですね。でも事務所内でレタッチをやる場合、ドラマチックに仕上げるのって難しいんですよね。すごい想像力がいるじゃないですか。小島さんや森岩さんもそうだし、いつもお願いしているレタッチャーさんもそうなんですけど、このRAWデータを見てなんでそこまで想像してこんなドラマチックなトーンをつけられるのかって、それは本当に不思議で。それがやっぱり違うんだな、プロなんだなって思いますね。

森岩:蜷川さんが乗り移ったつもりでみんなやっていますよ。降りてくるのを待つ(笑)。

小島:事務所でレタッチする時は、打越さんが色を調整されるんですか。

打越:僕もやりますが、アシスタントがひと通りやっています。最初はカラーマネジメントなんか全然わからなかったので、モニターで見ている色とプリンタの色が違って、本当に困りましたね。そこでまず、色を見る環境を適切にしましょうってトッパンさんに教えてもらって、部屋の照明を色評価用の蛍光灯に代えました。

小島:モニターはColorEdgeをお使いなんですよね。

打越:はい。撮影スタジオに行くといつも同じモニターが出てくるなあと思っていて、それがColorEdgeでした。機材屋さんに相談してアシスタント用にCG242Wを導入したんですが、僕はナナオさんの古いFlexScanを使っていて、それだとどうしても色が合わなくて、悔しいなあと(笑)。

小島:アシスタントさんのほうが先にColorEdgeになったんですか。

打越:僕はその後でCG243Wを入れてもらいました。僕はもともとWindowsユーザーで、アシスタントはMac。色が合わないのはコンピュータが違うせいなのでは?と思っていたんですが、ある人に関係ないと言われて、それじゃあモニターを変えようと。その後、ものすごくデジタルの仕事が増えてきたので、あの時にColorEdgeにしておいてよかったなと思いました。

img_coloredge_user_uchikoshi1_08.jpg 打越氏のモニター環境。左がColorEdge CG243W、右がFlexScan L997。なおCG243W、CG242Wともに生産が終了しており、後継機種はCG246となる。

小島:写真集1本やると膨大なカット数になるから、1人ではさばけないですもんね。

打越:ColorEdgeにしてから色は合うようになったんですが、色については今でも悩んでますね。デジタルだけなら大きな問題はないんですけど、ちょっとでも紙焼きが混じったりすると、色を合わせるのが本当に難しいですね。特にグリーンやブルーが難しい。幸か不幸か銀塩で撮った時のイメージが頭の中にあるので、「グリーンはこんな色ではない」と思いますし、空の写真もさんざん蜷川の色を見ているので「違う」って思ったり。いつも悶々として、どうしたらいいんだろうと。

森岩:印刷物と比べるとモニターのほうが再現できる色域は広いので、蜷川さんの写真はモニター画面とすごく相性がいいと思います。ただ、それだけに、印刷物にしたときに「あれ?」っ思うことがたくさんあるんだろうなと思います。

小島:確かにテスト用に、蜷川さんの写真データをお借りした時も、グリーンとブルーは一番苦労した思い出があります。

打越:小島さんにぜひ秘訣をお伺いしたいぐらいですね。どんな裏技を使ってるのかなと。

小島:これといった裏技的なものはないんです。割と感覚に、1点1点調整している感じです。

色校正とモニターの色を合わせるためのテクニック

小島:ここからはColorEdgeを実際に見ながら話をしましょう。これはColorEdgeの最新モデルCG246です。キャリブレーションセンサーを内蔵していて、モニターが自動的にキャリブレーションを行なう機能も搭載されています。

打越:センサーが内蔵されているのはいいですね。

小島:それではこのモニターに、水原希子さんの写真集の表紙で使った画像を表示してみます。

img_coloredge_user_uchikoshi1_09.jpg ColorEdgeの最新モデルCG246に写真集の画像を表示する小島氏。

打越:実物と比べてもすごく合っていますね。

森岩:あんまり見ないでください(笑)。ドキドキします。

小島:赤がちょっと違うけど、だいたい合っていますね。

森岩:蜷川さんの場合はインキが違うので…。

小島:そうですね。実は蜷川さんの写真をトッパンで印刷する時は、通常の4色インキではなくて、特別なインキを使っています。4色の印刷なんですが、シアンとマゼンタが特色なんです。こちらの校正刷りを見てもわかると思うんですが、特C、特Mって書いてあって、これがいわゆる蜷川さん用のインキセットなんです。

森岩:写真集のテイストによってインキも変えていて、他の写真集はまた違うインキだったりしますね。紙だったり、内容だったり、あとは部数なんかにもよるんですけど、大部数だと特別なインキが間に合わない、量産していなかったりもする場合もあるので、そういうことも含めてこちらからご提案して、OKをいただければそれでやるというやり方です。蜷川さんの事務所のほうからのご要望ではなくて、こちらからのご提案です。

小島:特色で刷られた校正と、キャリブレーションされたモニターを比較すると、PhotoshopのCMYK表示は、Japan Colorなり、JMPAなり日本の標準インキを前提にしているので、当然ながら色は合いません。でも、それを合わせるための方法もありまして、その1つとしてモニターの色を調整するというやり方があります。具体的には6色調整という機能を使います。

打越:その6色調整というのはどんな機能なんですか。

小島:6色調整を行なうにはColorEdgeの専用ソフトColorNavigatorを使います。このソフトを起動すると、まずメイン画面が出てきます。「高度な調整」というボタンをクリックするとメニューが表示されるので、その中の「手動調整」を選びます。ここで白色点や輝度を調整できるんですが、「6色」と書かれたところをクリックするとR・G・B・C・M・Yのスライダーが現れます。ここで各色ごとに色相や彩度を変更できるんです。

img_coloredge_user_uchikoshi1_10.jpg ColorNavigatorの6色調整の画面。

打越:そのままライブで色が変わるんですか。

小島:そうですね。ちょっとやってみましょうか。いまちょっと黄色寄りなので反対色の青の方向にするとか、あるいは逆に少し肌を黄色っぽくしたりとか、少し彩度を上げたり。こうやって微調整して、白色点も紙白に合わせて変えると、見た目が校正刷りに近くなってくるじゃないですか。校正刷りの色が安定していないと意味がないんですが、今はかなり安定して出せるようになっているので、この機能はけっこう使えると思います。ここまでできるのはColorEdgeならではだと思います。

打越:これは面白いですね。ウチの事務所向きの機能かもしれません。

img_coloredge_user_uchikoshi1_11.jpg 色校正とモニター画面を見比べる打越氏。

小島:今、モニターと印刷物の色がイコールになりました。この状態で、また色を作りこんでいくことができます。でもこれ、印刷がきちんと安定していることが条件なんです。最終ターゲットの印刷がふらついていると意味がありません。その意味でも森岩のようなしっかり管理できるディレクターがいないとダメなんです。

打越:小島さんが仕事で最後詰める時はそこまでして詰めていくっていうことですか。

小島:そうですね。僕が印刷の仕事をする場合はまずRGBの状態でデータを作り込んで、それを製版のスタッフがCMYKに変換して校正刷りが上がってくる。そのCMYKのデータをさらに僕が調整、レタッチするんですが、校正刷りに対してモニターを合わせ込んでから行なっています。森岩もそうなんですけど、僕らはCMYKの数値を見ただけで色がわかるので、実はモニターと印刷物の色が合っていなくても数値を見ただけで赤を5%引いた方がいいという判断もできるんですけど、見た目できっちりとやりたい時は、6色調整を行なったColorEdgeを見ながら作業をしますね。

打越:ウチの事務所のインクジェットでプリントするような時も、紙白まで調整した方がいいんですか。

小島:そうですね。もちろん、そういう使い方もできます。僕の場合は、普段のインクジェットアートプリントの仕事では、使う紙の傾向を自分で把握しているのでそこまでやりませんが、最近はいろんな紙白のインクジェット用紙があるので、ちょっと変わった紙の時は、6色調整を使うとモニターの見た目とプリント結果が近くなります。僕が6色調整を使うのは、印刷の仕事で特色を使うようなときですかね。一概にこれという考え方はしないで、その都度最適なやり方をしています。

打越:森岩さんも一緒にモニターを見ながらディレクションされるんですか。

小島:最初のRGBの段階で絵を作る時から最後まで、一緒に見ながらやっています。

森岩:やっぱり目で見えるとイメージを共有しやすいので。

小島:イメージを共有するには、カラーマネジメントされているモニターを使うのが基本ですよね。

キャリブレーションセンサーを内蔵した最新モデルCG246

小島:このCG246という新しいモニターは、さっきも言いましたが、一番の特徴がキャリブレーションセンサーを内蔵していることです。モニターキャリブレーションって、センサーを取り出してモニターに取り付けてとか、けっこう手間がかかるじゃないですか。

打越:ウチの事務所でも何時間か経過したら「キャリブレーションをしてください」ってアラートが出るように設定しているんですけど、本当に忙しいと…。

小島:だいたいキャンセルしてしまいますよね(笑)。その点、CG246はセンサーを内蔵していて、セルフキャリブレーションという自動的にキャリブレーションを行なってくれる機能が入ったので、ずいぶん楽になりました。例えば日曜の深夜とか、絶対作業しないだろうという時間帯にセルフキャリブレーションを実行するように設定しておくと、手間いらずでいつでも同じ色を維持できますよね。

打越:小島さんはどのくらいの頻度でキャリブレーションをやっているんですか。

小島:200時間ごとにやっています。正直に言うと、以前は僕も定期的にやるのは億劫だったんですが、内蔵センサー付きのCG245W(CG246の前の機種)を使うようになってからは、ものすごく楽になったのできちんと定期的にやるようになりました。それぐらい時間が経過するとモニターと印刷物を並べると見た目で色が違うことがわかるので、やはり200時間に1回はやったほうがいいと思います。

打越:モニターの下の方に小さい内蔵センサーが出てくるようになっていますが、モニターの真ん中でなくてもいいんですか。

img_coloredge_user_uchikoshi1_12.jpg CG246の内蔵センサーは画面の下から現れる。

小島:たしかに外付けのセンサーでキャリブレーションする時は、必ずモニターの真ん中にセンサーを取り付けますよね。でもColorEdgeの内蔵センサーは、画面中央で計った場合と同じ測定結果になるように差分を計算しています。だから、モニターの端で計っても真ん中で計っているのと同じレベルでキャリブレーションできるそうです。

森岩:そこまでやるのは、もうモニターの業界では当たり前のことなんですか。

小島:グラフィックス用途のモニターにセンサーを内蔵しているモニターメーカーは、今のところ世界的に見てもナナオだけです。

森岩:じゃあ世界的にナナオさんの技術は一番前を走っている感じなんですね。

小島:この分野では間違いなくそうです。画面センターとの差分を取るところも賢いんですけど、もっと賢いのは、外付けセンサーと内蔵センサーを合わせ込むこともできるんです。

森岩:合わせるっていうと?

小島:要するに、外付けセンサーの値を内蔵センサーに覚えさせて、あたかも外付けセンサーのように動作させられるんです。すでにラッキースターさんにはColorEdgeが2台入っていますが、そちらは外付けセンサーで調整していますよね。でも、このCG246を新たに導入したとすると、こちらは内蔵センサー式なので、そもそも測定の基準となるセンサーが別々になる。そこで基準となるセンサーの値を揃えることで、3台の調整結果をなるべく揃えようという機能なんです。

森岩:なるほど。モニターやセンサーがそれぞれ何台もあると色が合わないですもんね。

打越:他にCG246の特徴はありますか。

小島:液晶パネルのバックライトがLEDに変わりましたね。それから電源を入れてからわずか7分でモニター表示が安定するようです。従来のモニターでは電源を入れてから安定するまで30分ぐらい、他社製のモニターでは1時間くらいかかったりしますから、CG246は本当に電源を入れてからすぐ使えます。そのほか、HDMIの入力端子が新しくつきました。

打越:一眼レフで動画を撮る場合は役に立ちそうですね。一眼レフの動画はHDMIから出力するので。

小島:パネルのサイズは24.1インチで、僕が使っているCG245Wと同じですが、このサイズが一番使い勝手がいいのかなと思いますね。価格的にも、ナナオの直販サイトで遮光フード込みで16万円ぐらいですから、かなりお買い得だと思います。

打越:いま使っているCG243Wはたしか、センサーなしで19万円ぐらいでしたから、センサー内蔵でこの値段は魅力ですね。

小島:そうですね。ナナオさんはColorEdgeシリーズを一新して、ほかにも10万円台のCX240、CS230というモデルも同時に発表しましたから、これからColorEdgeユーザーがさらに増えるんじゃないでしょうか。さて、今回はここまでにして、次回はまた別のお話をしたいと思います。最近流行りのiPadやiPhone、Androidタブレットと、モニターの色を合わせようという話です。

打越:最近新しいiPadを買ったばかりなので、楽しみです。今日はありがとうございました。

写真:坂上俊彦


今回の訪問先

有限会社ラッキースター

フォトグラファー・映画監督である蜷川実花の事務所。アシスタントのほかにテクニカルディレクター打越誠氏が在籍する。
http://www.ninamika.com/


写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズGA本部 GA部所属、インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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