2016年08月25日
「デジタルフォト&デザインセミナー」では、撮影の実演を行なう「ライティングワークショップ」が今回から初めて設けられた。使用した機材は、手のひらサイズの小型軽量なヘッド2灯と、肩から下げられる弁当箱サイズのバッテリー・ジェネレーター部で成り立つProfoto B2 250 AirTTL。ポートレート/スチルライフの2本立てを3回開催、毎回立ち見の出る大盛況となった。
最新バッテリーストロボ Profoto B2を使ったロケーション・ポートレート撮影術
上田晃司氏。Profoto B2にアンブレラ「ディープ シルバー M 105cm」を取り付ける
「ライティングワークショップ:ポートレートセミナー」の講師を務めるのは、フォトグラファーの上田晃司氏。Profoto B2について、演色性の高さ、素早いリサイクルチャージ、小型軽量で堅牢さも備えるといった機材の特徴について説明した後、早速B2を使った撮影実践に入った。
壇上に用意されたのは、白バックの前に置いた椅子にモデルを座らせたシンプルな1シチュエーション。撮影現場としてはかなりの狭さではあるが、ここにB2とそのアクセサリーを駆使してさまざまな光を作り出していく。
まずはアクセサリーなしB2のみで撮影。背景に影をくっきりと落とした固い光の画像が捉えられる。そこに「OCFソフトボックス 60cmオクタ」を取り付けると、今度はディフューザーを通した柔らかい光の写真に仕上げることができる。柔らかい光と言えばアンブレラもある。ここでは「ディープ シルバー M 105cm」をセレクトし、広がり過ぎない柔らかな光をモデルの全身に当てて見せた。ここにもディフューザーが取り付けられるので、さらに光を柔らかく回すことも可能だ。
Profoto B2の豊富なアクセサリーを使用したり、モデルとライトの距離を変えることで同じシチュエーションでも異なる雰囲気のポートレートが仕上がる
さらにポートレイトに適した「ビューティーディッシュ」を使ってモデルを印象的に浮かび上がらせたり、ソフトボックスにグリッドを取り付けた光を真上からプラスした多灯ライティングを行なうなど、壇上の簡易的なセットで撮影しているとは思えない仕上がりの写真を次々と披露。セッティング変更も、コンパクトなB2の使い回しはもちろん、アクセサリー類もすべてロケで使用することを前提に開発されたとあって、てきぱきと進められていく。今回すべての撮影がTTLによって行なわれているというのも、このスピード感に貢献しているようだ。時間やシチュエーションに限りがあっても、様々な光にチャレンジできるということを示していた。
動きの中の一瞬が作り出すダイナミックな造形の美しさ
伊藤慈朗氏。「ウォータードロップフォトグラフィー」のコツを伝授
ライティングワークショップのもう1つは、フォトグラファー・伊藤慈朗氏による「スチルライフセミナー」。「動きの中の一瞬が作り出すダイナミックな造形の美しさ」と題して行なわれた。目指すのは、清涼感を演出する「ウォータードロップフォトグラフィー」。閃光時間1/15,000秒、ハイスピードシンクロ機能といったB2の性能を利用して、水滴が着水して弾ける一瞬の美しさを捉える。
ウォータードロップフォトグラフィーを完成させるため、伊藤氏が初めに取り組んだのは「ミルククラウン」だった。技術書を見てやってみたそうだが、これが非常に難しい。B2のハイスピードシンクロ、EOS 5D Mark IIの秒間6コマ20連写を駆使し、左手にミルクの入ったスポイト、右手にシャッターで挑んだが、全く撮れなかったという。そこで、熱帯魚の飼育に使うエアポンプの部品をスポイトに取り付け、等間隔で水滴を落とすことができる「全自動ポタポタ装置」を自作、水滴の落ちる間隔を空けるなどの工夫をするうちに、それらしい写真が撮れるようになったそうだ。使う液体は、牛乳よりも粘度の高い「飲むヨーグルト」がオススメなんだとか。
壇上にはその装置がセッティングされていた。コツは「連写よりも見てタイミングをつかむ」「とにかく数を撃つ」との説明があって、会場から選ばれた2人が撮影にチャレンジした。1人は経験15年のカメラマン、もう1人は非カメラマンのデザイナーだったが、どちらも最初はなかなかタイミングがつかめない。しかし何度か繰り返すうちに、カメラマンのキャリアに関係なく、初めてだった2人とも時々きれいな王冠が捉えられるようになった。
「ストップショット」を使ったセッティング。トレーの水面に落ちる水滴の一瞬を写す
さて、ここからいよいよ本題のウォータードロップフォトグラフィーに突入。ミルククラウンとは違って、2粒の水滴の衝突の瞬間を捉えるという。水滴の水量と落とす高さ、2滴目のタイミングによって現れる形は変わるので、同じものは二度と撮影できない。まさに一瞬を逃さず捉えらなければならない。伊藤氏は、YouTubeで撮影方法を調べるうちに「ストップショット」という専用の機材を発見。個人輸入で入手した「ストップショット」を持ち込んで、実際の撮影を披露した。
ミルククラウンと同様、ここでもB2のハイスピードシンクロは頼もしい限りだ。後ろからカラーフィルターの光を当てることで、さらに幻想的な造形を写し出すこともできた。
TTL機能搭載、ハイスピードシンクロ機能、ポータブルなオフカメラ・フラッシュなど、Profoto B2を言い表す特徴は数々あるが、それをどう使うかは撮影者次第だ。セミナーでは、2人の講師がそれぞれ異なる被写体を対象に、機材をどう駆使して自身の表現につなげていくのか、その様子を披露してくれた。新たな表現は、さらなる機材の進化と撮影者の工夫にあるのかもしれない。
写真:坂上俊彦
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