2015年03月18日
内蔵センサーで色を自動補正するMultiSync PAシリーズが4K対応に
※「カラマネ」のマークは、ハードウェアキャリブレーション対応モニターを搭載していることを意味する。
モニター部のスペック
表示サイズ | 31.5型 |
表示方式 | IPS方式液晶(白色LEDバックライト) |
表示画素数 | 3,840×2,160(16:9) |
画素密度 | 140ppi |
Adobe RGBカバー率 | 99.2% |
視野角 | 左右・上下176度 |
コントラスト比 | 1,000:1 |
最大輝度 | 350cd/㎡ |
カラーマネジメント | ハードウェアキャリブレーション対応、カラーセンサー内蔵、セルフカラーコレクション、ムラ補正など |
ペン入力 | ─ |
タッチ入力 | ─ |
4Kの高解像度を活かしてフルHDを4画面表示できる
高精度なカラーマネジメント対応ディスプレイとして、唯一の30インチをラインナップしているNECディスプレイソリューションズ。今回新発売された「MultiSync LCD-PA322UHD-BK」は、同社のMultiSync PAシリーズ初の4Kモデルとして注目されている。
まず、パネルそのものの特徴として、31.5型という広大な画面領域と、0.182mm(140ppi)と画素ピッチはバランスが良く作業しやすいと感じた。たとえば、筆者が使用しているMacBook Pro Retinaの標準解像度は220ppiなので、デュアル接続してもOSやアプリケーションのメニューを拡大させることなく通常のままで違和感なく使うことができる。
色域はAdobe RGBカバー率99.2%。バックライトも従来のGB-R LEDから白色LEDへと変わり広色域を確保している。定評のあるアンチスパークリングフィルムでギラツキ感が抑えられているため、長時間の作業でも目が疲れにくい。また、IPSパネルが苦手とする黒濃度の締まりが向上している。通常のIPSパネルでは暗い作業環境の中で相対的に黒が浮いて見えてしまうが、黒が締まることで品質のコントロールもしやすくなる。
NEC独自の表示設定ソフト MultiProfiler
MultiProfilerは簡単操作で高精度な色調節ができるソフト。各機能はショートカットキーとして登録できる。4Kの高解像度を活かす高機能として、4画面のリアルタイムプレビューが実装された。これは、一つの入力信号をNEC独自の表示設定ソフト「MultiProfiler」で4画面に表示させるというもの。フルHDを4面表示することができるのだ。
MultiProfilerで4面表示させているため、コンピュータ上では普通に1台のディスプレイとして認識されたままだ。それぞれのプレビュー画面に個別のピクチャーモードを設定できる。下の写真ではAdobe RGB、sRGB、Rec.709、Japan Colorで表示させてみた。若干動作は重いものの、オリジナル画像の他にエミュレーションが3つ同時表示できるのは作業性がよい。
4画面リアルタイムプレビュー
本機の最大の特徴と言える4画面リアルタイムプレビュー。1つの入力信号に対して画面を4つに分割して、それぞれ任意のICCプロファイルを割り当てることが可能だ。印刷用、Web用、ムービー用など、それぞれのプロファイルの特性を1枚のパネルで同時に確認できる。4画面リアルタイムプレビューへの切り替えは本体のOSDボタンからできるので、MultiProfilerをいちいち起動することなく表示できる。使い勝手の良い設計がなされている。 写真協力:茂手木秀行氏
筆者はインクジェットでの作品プリント作りを業務としているが、用紙のプロファイルを指定してエミュレーションすることで、作り込みの方向性を検討できるのは面白いと感じた。用紙の風合いを見るのが難しいのはこのディスプレイに限ったことではないが、色調を比較表示できるのはプロにとって作業効率面で有利に働く。
4画面への切り替えはアプリケーションから指定する以外に、本体のOSDボタンからも行なえる。また、MultiProfilerでショートカットキーを設定しておけば、キーボードから指示することも可能だ。ユーザーの使い方で様々な選択肢があるのは好感がもてる。プロユーザーのために考えぬかれた設計といえる。
内蔵センサーで自動調整するキャリブレーション機能
モニターキャリブレーションも、ユーザーの使用方法に合わせた柔軟な環境を提供している。基本的には内蔵センサーによる自動調整で、ユーザーがキャリブレーション作業を行なう必要がない。外付けセンサーを用いた定期的な作業の重要性は、頭では理解していてもいささか面倒に感じてしまう。本機では数秒ごとに内蔵センサーによってバックグラウンド調整されるため、常に安定した表示を実現している。キャリブレーション作業を気にすることなく、いつでも同じ状態を維持してくれるのは精神的にも楽だ。
通常はこの使い方で充分だが、手持ちの外部センサーを使った運用や、よりシビアな品質管理を必要とする場合でも、別売りのSpectraViewⅡを用いて高精度に管理・運用することができる。様々なレベルのユーザーの要求に応える性能を提供しているのだ。
自動的に輝度と色を補正するセルフカラーコレクション
ディスプレイの輝度と色の変化は、バックライトの経年変化によって発生する。NECのカラーマネジメント対応ディスプレイでは内蔵されたセンサーがバックライトを常に監視しており、自動的に輝度の変化や色ズレを調整するので、外部センサーがなくても長期間、安定した表示を示してくれる。キャリブレーションの作業を意識しなくとも、バックグラウンドでいつでもディスプレイが調整されている安心感は大きい。
また、細かい点ではあるが、入力信号の選択に合わせて、USBのアップストリームポートを割り当てることができる。複数のPCで共有している場合、ディスプレイの入力を切り替えるだけで、キーボードやマウスが連動する。さらに、本体にはヘッドホン端子があり、DisplayPortやHDMIの音声信号をここから確認できる。映像編集においてヘッドホンでより細かくモニタリングしたいときなどに有効だ。
NECでは84インチのパブリックディスプレイやプロジェクターでも4Kをラインナップしている。本機で制作されたコンテンツを正しい色でサイネージ、シネマに表示することが可能だ。
このディスプレイはカラーマネジメント対応でありながら、筆者のような静止画系のユーザーから、映像編集まで、それぞれのユーザーの作業ニーズに合わせたカスタマイズがしやすいよう大幅に強化されている。超高解像度時代のディスプレイ選びとして、魅力的な選択肢が増えたことは喜ばしい限りだ。
※この記事はコマーシャル・フォト2015年2月号から転載しています。