次世代液晶ディスプレイの世界

Apple iMac Retina 5Kディスプレイモデル

文:斎賀和彦

Macで5Kの表示を可能にする高解像度時代にふさわしいマシン

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モニター部のスペック
表示サイズ 27型
表示方式 IPS方式液晶(LEDバックライト)
表示画素数 5,120×2,880(16:9)
画素密度 218ppi
Adobe RGBカバー率 未公表
視野角 未公表
コントラスト比 未公表
最大輝度 未公表
カラーマネジメント ソフトウェアキャリブレーションは可能
ペン入力
タッチ入力
2014年10月17日発売/直販価格:税込279,504円

5Kのディスプレイなら編集中に4Kを等倍で表示

4Kディスプレイが現実的な選択肢になってきて、ようやく映像編集時に4K映像を等倍(ドットバイドット)で表示できる環境が整ってきた。だがその場合、画面一杯にムービーが広がり、再生確認にはいいが、編集中には等倍表示できないという問題が残る。ディスプレイ解像度が5Kあると問題は解決するが、現状ではMac Proでも外部への5K出力はできない。

その状況下でアップルが打った妙手が、ディスプレイ一体型のiMac Retina 5Kディスプレイモデル(以下、iMac 5K)の投入。高価なフラッグシップ機ではなく、iMacという中堅機に5Kが搭載される意味は大きい。

5Kモニターの見え方
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iMac 5Kと通常の27inch iMacを比較すると、発色の傾向はよく似ていて、共に非常に高品質。グレア(光沢)液晶ゆえ映り込みは避けられないが、照明を工夫するなりフードを自作するなり、光源が入り込まないようにしたときの写真、映像の美しさは圧倒的。

なお一部に誤解があるが、iMac 5Kは確かに5K(5120×2880ピクセル)の解像度を持つものの、選択できる画面解像度は標準で2560×1440、最大で3200×1800である。Retinaと呼ばれるアップルの画面表示技術は、画面内の映像や写真部分のみを5K解像度で表示、それ以外のインターフェイス部分は整数倍表示にする。一見同じに見えるiMacとiMac 5Kだが、映像部分の解像度が異なるのが分かるだろう(下の写真参照)。

iMac 5Kと通常のiMacを比較
iMac Retina 5K(218ppi)
iMac 2013年モデル(109ppi)
img_special_display05_03.jpg 一目で感じる精細感の差は、写真や4Kムービーで顕著に現れる。4K映像制作の普及より、Retina液晶の一般化が早いと思わせる表示能力。 ※画像をクリックすると拡大表示

実際に同じ画面をMac Proで4Kディスプレイに表示すると、メニュー等のインターフェイス部分が小さくなりすぎて非常に使いづらい。Retina技術は、ユーザーインターフェイスの見かけ上の大きさは変えないまま(それでも解像度は上げるのでアイコンや文字の表示品質も大きく向上する)、映像・写真系ソフトでのクオリティと操作性を両立させる技術なのだ。

特に4K映像編集においては、ピクセル等倍表示とタイムラインおよび操作系の同時表示の画面表示が実現できるメリットは計り知れない。その使い勝手に関してiMac 5Kは、Mac Proを凌駕するように感じた。

Mac Proとの比較で見えてきたiMac 5Kの実力

ディスプレイまわりに限ると、そんな下克上的印象のiMac 5Kだが、実際に負荷の高い4K編集を行なうとどうだろう。今回、EOS-1D CのDCI 4K(4096×2160)をFinal Cut Pro Xで編集してみた。通常のカット編集、一般的なディゾルブでは、コマ落ちもなく快適なレスポンスを見せるが、マルチカムや多重レイヤーといった部分ではリアルタイム処理はできなかった(1DCのネイティブファイル、ProRes 422変換素材とも)。これに対して同じ条件のMac Proでは、その数倍のリアルタイム処理が可能だった(書き出し速度は3〜4倍)。

ストレージまで含めたMac Proとの速度比較
  ストレージの速度 Final Cut Pro Xで動く動画のストリーム数
  WRITE READ EOS-1D Cの4K動画 ProRes 422変換後 マルチカム編集
iMac 5K 内蔵
Fusion Drive
318MB/s 692MB/s 1 1 1 1 NG NG
iMac 5K +
G-SPEED Studio XL
873MB/s 1110MB/s 3 3 6 4 4 4
Mac Pro 内蔵 SSD 953MB/s 945MB/s 5 5 11 7 16 16
Mac Pro +
G-SPEED Studio XL
853MB/s 1111MB/s 5 5 6 6 4 4
同じ項目で2つ結果があるのは、Final Cut Pro Xの表示設定をパフォーマンス優先(左)にした場合と品質優先(右)にした場合の差。4K映像の編集にはストレージの速度が大きな意味をもつのがわかる。またシーケンシャルなパフォーマンスより、ランダムアクセス性能が要求されることも見えてくる。
G-Technology社
G-SPEED Studio XL
img_special_display05_04.jpg 8発のヘリウムドライブを積む高速なThunderbolt2 RAIDストレージ。RAID 0で初期化するとMac ProのSSDより高速だが…。

両者のストレージの速度差が大きいため(Mac ProはSSD、iMac 5Kはフュージョンドライブ)、ここまで大きな差がついた可能性もあるだろう。そこで今度はストレージの条件が同じになるように、Thunderbolt2接続の高速RAIDに素材を置いてテストしたところ、iMac 5Kでは大幅にパフォーマンスが向上した。4K編集においては、ストレージ速度が大きな意味を持つことを示している。

一方、今回使用したThunderbolt2 RAID(G-SPEED Studio XL)は、Mac Pro内蔵SSDよりベンチマークでは高速だが、実際の編集パフォーマンスでは内蔵SSDに勝てていない。マルチストリーム編集においては、ランダムアクセス性能が大きな意味を持つことも見て取れる。

画面表示の美しさ、操作画面の快適性など、5Kディスプレイによるアドバンテージは確かにあるものの、4K編集全体のパフォーマンスの面ではMac ProがCPU、GPUのパワー差を見せつける横綱相撲となった。iMac 5Kで本格的な4K編集をするなら、ストレージのSSD化は必須であろう。

処理能力の部分ではiMacの枠内に留まっていると言わざるを得ないが、ベーシックな4K編集、高度なフルHD編集や写真加工には、その高解像度ディスプレイのアドバンテージが大きく活きる。iMac 5Kはこれからの高解像度時代に相応しい中堅マシンと言って間違いない。特に、写真がメインで、ムービーをサブとするユーザーには、コストパフォーマンス抜群の機種と言えよう。


※この記事はコマーシャル・フォト2015年2月号から転載しています。

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