2018年11月19日
ドラマチックで切ない物語を2台のEOS C700で撮影
TOY’S FACTORY Mr.Children「SINGLES」
Mr.ChildrenのMVはアーティストとファンをつなぐ大切なメッセンジャーとして過去様々な監督と多くの名作を制作してきた。そんなMr.Childrenが4年ぶりのアルバム「重力と呼吸」をリリース。収録曲のうち、「here comes my love」「Your Song」「SINGLES」の3曲のMV(「Your Song」は2種類)を林響太朗監督が手掛けている。
MVを作るにあたって、林監督はまず詳細なシナリオを作成。どの歌にも強いメッセージがあるMr.Childrenの言葉とメロディを活かしながら印象的な物語を紡いでいる。
彼が家に帰ると彼女の姿はなく、痕跡もなくなっていた。2人の主人公はやがてそれぞれの道を歩んでいく。「SINGLES」のMVはそんなどうにもならない喪失感を抱えながらも前を向いて進んでいこうという決意を感じるドラマに仕上がっている。
彼の部屋と屋上、荷物を抱えて歩く彼女、出会いのきっかけとなったパーティシーンなど、設定上、ほぼ夕方から夜にかけてのシチュエーションで撮影されたこの作品はEOS C700(4K24P)を2台使って収録している。
撮影のシーンが多いのでEOS C700は2台で撮影した。
Interview 林響太朗(ディレクター)
EOS C700は階調表現が素晴らしく機動性にも優れたカメラ
林響太朗監督はこれまでにもCINEMA EOSで様々な映像作品を作っている。林監督はEOS C700に対してどんな印象を持っているのだろうか。
──今回のMVでEOS C700を選択した理由を教えてください。
林 以前、SHISHAMOのMV「私の夜明け」でEOS C700を使った際に、画質の美しさはもちろん、見た目よりも軽い印象を受けました。「SINGLES」は動きのある映像にしたかったので、EOS C700を選びました。カールツァイスのコンパクトプライムを装着し、肩担ぎできるリグにフォローフォーカスのユニットも組み合わせてセットアップしています。
──男性の部屋はカラーライトで色を作り込んでいます。
林 暗い部屋の中で窓に映り込むアーバンな夜景。都会の中で人工的に発光している色味を表現するためグリーンの照明を足しました。それに室内のタングステンの光を合わせるのですが、記録フォーマットはカラーグレーディングを想定していたのでProResで行ない、ガンマ/色域はCanon Log3/Cinema Gamutで収録しました。異なるカラーの光源が混在している状況でしたが、709規格のLUTを当ててモニタリングしながらカメラを回していたときから、すでに理想的なトーンが表現できていて、EOS C700の収録データ自体のクオリティの高さに驚きました。グレーディングの際に暗部を締めていっても各光源の中間からハイの部分は破綻なく、暗部だけが綺麗に締まってくれたおかげで、狙い通りのトーンや色表現を実現できました。
──屋上から見た夜景が細部までキラキラしていて美しいです。カラーグレーディング処理はどのように行なったのですか。
林 夜景のシーンはマジックアワーから街の明かりが点き始める頃を狙って撮りました。このシーンに関しては、実はカラーグレーディングで細かく階調を追い込むようなことをしていないのです。それくらいEOS C700のデータが素晴らしかった。
「暗くなっていく空と都会の夜景。難しいシチューエションもEOS C700で見事に表現できました」(林監督)
彼の背中に照明を優しく当てましたが、それ以外はほぼノーライトでした。どんどん暗くなっていく中でも諧調の美しさが残っていたし、微妙なグラデーションのある空の色も表現できていたので「いいな」と思いながら撮影していました。
屋上のシーンが綺麗に撮れたことで、このMVの印象的なビジュアルにできたというのが大きかったですね。もちろん2人の演技もすごく良かったと思いますし、機動力と高画質を併せ持つEOS C700のおかげで、感情を揺さぶられるような映像表現ができた作品になったと感じています。
ディレクター/フォトグラファー
1989年生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科インタラクションデザイン専攻卒業後、DRAWING AND MANUALに参加。映像以外にもインスタレーションやパフォーミングアーツ、プロジェクションマッピングなど様々なクリエイションに関わる。
www.kyotaro.org/
協力:キヤノンマーケティングジャパン(株)
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