2019年02月18日
キヤノンが立ち上げたイメージングシステムEOS Rシステム。2月14日にその2号機となるEOS RPが発表された。
EOS Rシステムの高画質、EOSの操作性を継承しながらもさらに小型・軽量化したEOS RP。瞳AFが、動き回る被写体の瞳を追尾するサーボAFに対応したことも注目を集めている。すでに発売中のEOS RでもファームアップにてこのサーボAFに対応予定だ。この注目の機能を搭載したEOS RPをいち早く体感した梅澤勉氏に、その使用感を聞いた。
使用レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STM f/1.8 1/1250 ISO250 M:MANON(ASOBISYSTEM) HM:陶山祐子
進化したフルサイズミラーレス機 キヤノンEOS RP
EOS Rの発表から異例のハイペースで発表されたEOS RP。キヤノンの位置づけではEOS Rシステム2号機、EOSシリーズ全体ではハイアマチュアクラスEOS 6D Mark ll同等と位置づけられている。
主な特長
- フルサイズ
- 有効画素数約2620万画素
- 映像エンジンDIGIC 8
- 常用ISO100~40000
- EOS Rより約140g軽量
- サーボAF対応の瞳AF
- AF速度0.05秒(フルサイズ)
- ボディ 16万500円(キヤノンオンラインショップ参考価格)
デジタルEOSシリーズ最小ボディでさらに携帯性がアップ
既存のEOS R に比べ、高さ約-13.3mm、幅-3.3mm、奥行き-3.65mm、重さ-140gと全体的に一回りコンパクト&軽量になった。ボディ単体では約485gとなんと500ml ペットボトルより軽い。35mmフルサイズデジタルEOSシリーズで最小サイズとなっている。
EOS RP | EOS R | |
---|---|---|
有効画素数 | 約2620万画素 | 約3030万画素 |
エンジン | DIGIC 8 | DIGIC 8 |
AF | 自動選択時 AFエリア分割数: 最大143分割(13×11)(DAF) ⇒撮像エリアの最大88%×100% AFフレーム選択可能ポジション:4779 EV-5(低輝度限界) 瞳AF(One Shot AF / サーボAF) |
自動選択時 AFエリア分割数: 最大143分割(13×11)(DAF) ⇒撮像エリアの最大88%×100% AFフレーム選択可能ポジション:5655 EV-6(低輝度限界) 瞳AF(One Shot AFのみ)※ファームアップにてサーボAFに対応 |
ISO感度 | 常用100-40000 / 拡張50-102400 | 常用100-40000 / 拡張50-102400 |
連写速度(AF追従) | 約5.0fps / (約4.0fps) | 約8.0fps / (約5.0fps) |
電子ビューファインダー フレームレート/視野率/アイポイント |
0.39型 約236万ドット 60fps / 約100% / 22mm |
0.5型 約369万ドット 60fps / 約100% / 23mm |
動画 | Crop 4K24p(NTSC時) 4K タイムラプス 最大120Mbps | Crop 4K30p(NTSC時) / 25p HD120p(NTSC時)、Canon Log 4Kタイムラプス 最大480Mbps |
モニター | 3.0型 / 104万 / バリアングル / タッチ | 3.15型 / 210万 / バリアングル / タッチ |
カードスロット | UHS-II シングル SD | UHS-II シングル SD |
サイズ(横×高さ×奥行) | 約132.5×85.0×70.0mm | 約135.8×98.3×84.4mm |
重量(バッテリー、カード含む / 本体のみ) | 約485g / 約440g | 約660g / 約580g |
撮影可能枚数 | 約210(電子ビューファインダー) 約250(LCD) | 約350(電子ビューファインダー) 約370(LCD) |
EOS R システム
小型・軽量ボディに高画質・高性能を凝縮
映像表現と撮影領域を拡大するシステムとしてキヤノンが提案したEOS Rシステム。RFマウントと、その機能を最大限に引き出す35mmフルサイズCMOSセンサー、映像エンジンDIGIC8を搭載し、高画質高精細を実現した。
EOS Rもミラーレスならではのコンパクトなボディが話題になったが、EOS RPではさらに携帯しやすいライトボディー。コンパクトながらも、指がかりが深くしっかりとしたホールド感に仕上がっている。小さなボディにEOS Rシステムの高画質・高性能、操作性がグッと凝縮されている。
新機能 サーボAF対応 瞳AF
素早く、動き回る被写体の瞳を捉えるサーボAFに対応
動く被写体の瞳を捉えて追尾、連続撮影も可能
被写体はもちろん、周辺の距離情報も読み込み奥行き情報を追加することで追尾性能がアップ。従来の瞳AFに加えて、動き回る被写体の瞳を追尾してくれるサーボAF(動画サーボAF)に対応。このサーボAFはEOS Rでもファームアップ対応が予定されている。被写体と背景が同系色のシチュエーションでも機能する。高速連続撮影ではワンショットAFで約5コマ/秒、サーボAFでは約4コマ/秒の連続撮影ができ、スポーツ撮影や動物など動体撮影をサポートしてくれる。
小型・軽量化に加え、大きな魅力はサーボAF対応の瞳AF機能だ。EOS Rで搭載された瞳AF機能からさらに進化を遂げ、被写体との距離情報もリアルタイムでモニタリングし、奥行き情報を追加。追尾性能を向上させ、被写体の動きに合わせて瞳に追従してくれる。デュアルピクセルCMOS AFで実現した高性能AF機能も健在で、AF速度はRFレンズ使用時で、0.05秒。さらにAF方式ではスポット1点AFが追加されている。
有効画素はEOS Rに劣るものの、EOS Rシステムの高画質をしっかりと引き継いでいる。低輝度状況での撮影も可能にしたEV-5も達成。言うなれば「小さいながらもニクいやつ」といった印象だ。
ボティのみの価格は16万円前後(税別)。RF35mm F1.8 MACRO IS STMのレンズキットでは21万円前後(税別)。また、RFレンズに加えEFレンズをRシステムで存分に発揮できるEOS RPマウントアダプター付きのキットは24万円前後(税別)と、リーズナブルな価格帯も魅力的だ。
発売は3月中旬を予定。さらに5,000台限定GOLDモデルもキットで同時発売される。フルサイズミラーレスカメラ市場を拡大する一台になるだろう。
自由に動きまわる被写体の瞳を追尾するサーボAF※搭載
※EOS RはファームアップにてサーボAFに対応予定。
梅澤 勉
うめざわ・つとむ1975年生まれ。D-CORD LIMITED所属。広告、雑誌、ポートレイトを中心にスチル、ムービーの両方で活躍。作品集「#イット・ガーリー」などがある。
www.d-cord.com/umezawa/umezawa.html
使用レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STM f/1.8 1/1600 ISO250
──EOS RPの瞳AF機能は、被写体の動きに合わせて追尾するサーボAFに対応しています。梅澤さんには動きのあるポートレイトを撮影してもらいました。
梅澤 海辺でのロケ撮影・スタジオ撮影と異なる環境で撮影しています。ロケは雪がちらつく中、強風に煽られながらもモデルのMANONさんが頑張ってくれました。
強風と雪がちらつく海辺での撮影。走り回ったり、ぐっと被写体に寄ったりと動く二人。
ブロワーの風で意図的に作る髪の動きと違い、自然の風は髪が予測できない動きをします。瞳の前に不規則に動く障害物(髪の毛)が入っても、被写体の瞳をこれほど追ってくれるのかと、驚きました。
偶然作られる髪の動きは絵作りの上では面白い要素になるけど、撮影する側にとって顔を覆って乱れ動くものは障害でしかない。そういう場面でも面白い絵を逃さず捉えてくれました。さらにフォーカスが迷うことがあっても、すぐに復帰してくれたのでストレスは感じなかったです。
──このEOS RPではサーボAFで秒間約4コマの連続撮影が可能です。
梅澤 普段の被写体がカメラ側に走ってくるシーンの連続撮影では数枚撮って1枚フォーカスが合っていればいいくらいですが、撮影カット全てが合っていたのも驚きました。
約4コマって数値だけを聞くと早い方ではないけれど、EOS RPは確実にフォーカスを合わせてくれるので無駄なカットがありませんでした。フォーカスが合うカットを撮るまで何度も同じ動作をしてもらう必要がないので、被写体に負担をかけず撮影できますね。
スタジオ撮影ではロケとは違った動きを狙って、曲に合わせて彼女に踊ってもらいました。後ろ向きの状態から振り返った時など一度、瞳がファインダーから外れてもすぐに瞳にフォーカスが戻ってきてくれました。ここまでカメラがアシストしてくれると、撮影のプレッシャーが格段に少なくなります。
スタジオでの撮影。どちらも全て手持ち、時には片手で撮影した。
動く被写体を追う時は、フォーカスを合わせる操作に気をとられてシャッターに集中できないことがあるんですよ。フォーカス合わせや操作から解放されて構図に注力できるし、被写体と会話しながらコミュニケーションをとりやすいです。
僕らが仕事で撮るポートレイトといえば、そのほとんどがタレント撮影。撮影時間が短いことも多いし、何度も同じ動きをしてもらうこともできないので、そういったシーンでEOS RPは特に重宝すると思います。
しかも小型で軽い。EOS Rもずいぶん小さくて軽いと感じましたが、さらに軽量化していますね。今回、初めてカメラを片手で持って撮影しました。軽くて自由に動けるので、固定概念を取っ払った撮影スタイルが生まれると思います。コンパクトなので、鞄にスッと入れられてサブカメラにもできるし、クオリティ面を見ても仕事で充分に使えるカメラです。
具体的には自由度の高い撮影、雑誌での撮影向きだと思いました。今回のような気温が低く長時間撮影ができない悪天候のロケや動きまわる被写体を撮るシチュエーションで使えますね。
画質のクオリティも充分です。白トビが少ないし、仮に撮影で白トビした部分があったとしても、データの情報量が多いので、現像時に取り戻せます。小型で高画質、まさにフルサイズミラーレスカメラの魅力が詰まっています。
──レンズはRF35mm F1.8 MACROIS STMを使われていました。
梅澤 髪の毛一本一本まで表現できていて、描写力の高さがわかります。ボケ感も綺麗に出ていました。被写体にぐっと寄ることもできるし、開放でも撮れる使い勝手がいいレンズだと思います。F1.8の明るさも魅力的です。このレンズにサーボAFを搭載したEOS RPを組み合わせることでさらに新しい表現が生まれますね。
使用レンズ:
RF35mm F1.8 MACRO IS STM
f/2.0 1/180 ISO125
撮影スタジオ:ミッションリンクYCS映像事業部スタジオ
最大撮影倍率0.5倍でのハーフマクロ撮影が行なえる単焦点レンズ。開放F1.8の明るさを実現しながら小型・軽量設計を両立した。周辺まで高画質の上、手ブレ補正機能も搭載している。あらゆるシチュエーションでの撮影に対応できる。
※この記事はコマーシャル・フォト2019年3月号から転載しています。