2022年04月17日
「商品写真」の目的は、商品の形、色、材質、さらにはクオリティやイメージを正しく伝えること。その目的に合わせて最適なレンズやライティングが決まります。
この連載では「商品撮影」を基本から考えます。
ソフトボックスは広い範囲でディフューズした柔らかい光が得られるライティングツールですが、私はほとんど使用しません。
なぜなら小さな被写体や複雑な形をしたものが多い商品撮影では、ソフトボックスは光の硬さの微調整ができないからです。
ソフトボックスの代わりに乳白半透明のアクリルボードとストロボを組み合わせて拡散光を作ります。
これならばライトとアクリル板の距離、アクリルボードにライトをあてる角度で、簡単に光の硬さ、ハイライトの強弱、ニュアンスをつけられるし、アクリルボードに黒ケント紙で窓を作れば、ハイライトの形、サイズを自由に調整することもできます。
また小さな被写体や、複雑な形をした被写体はリフレクターにトレペを貼ったストロボで、面ごとにライティングをしていきます。
この場合もライトの角度/位置、被写体から光の芯をズラすことで、細かく光をコントロールしていきます。
ソフトボックスでは艶が出ない
作例のジュエリーのような被写体では、ソフトボックスは全体に光が回ってしまい、
ハイライトも四角くなり、艶や丸さが感じられない。
アクリル板に黒ケント紙で丸窓を作り、シャープなハイライトで艶感と丸さを出す。
協力:アートコーラル銀座
ソフトボックス
ソフトボックスでは、小さなジュエリーに対して全体に光が回り、シャープなハイライトが難しい。
アクリル板+黒ケント紙
光の一部をケント紙でカットするような角度からライトをあて、シャープなハイライトと明暗で艶感を強調。
丸い被写体には円形のハイライト
被写体の形状に合わせてハイライトを入れる。丸い被写体には円形のハイライト。アクリル板に黒ケント紙で丸窓を作り、アクリル板上から1灯のライティング。右側をレフで起こしている。
複雑な面を持つ被写体は面ごとにライティング
作例のボトルは上部に出っ張った曲面とシャープなプレスラインがあり、ソフトボックスのような大きな光では上手くライティングができない。
トップから1灯、サイドから1灯のライティングでバランスを取る。
ライトはトレペを貼ったリフレクター(直トレ)。ライトの角度、被写体との距離で
光を調整し、場合によっては黒ケント紙で光の大きさを変えたり、光をカットしていく。
左:プレスラインの上側が、一番明るくなるようにトップライトを入れる。
中央:真横から水平にライトをあてると、暗い肩部分を明るくしてしまう。ボトルより下でキャップにも光があたる位置から、アッパー気味にライトを入れる。
右:2灯のバランスをとって完成。プレスラインを出し、それぞれの面の明暗差をつけた立体的な仕上がり(文字は別撮り合成)。
トップライトの位置と角度
上の作例では、トップライトの位置、角度も重要。
光を部分的にあてるため、ライトは被写体に近い位置から照射。
カメラ方向、下向きにあてるのがベストボジション。
(3点の写真はセットを横から見たところ)。
商品の輪郭が出るライト位置だが、商品前面まで光をあててしまうので、プレスラインが弱くなる。
トップライトでプレスのライン上部と商品前面に明るさの差をつけられる。しかしライトが奥に行きすぎると、輪郭まで明るくなり、背景と馴染んでしまう。
ボトルの直上からカメラ方向下に向け、被写体をかすめるような光でライティング。プレスラインにハイライトを入れつつ、被写体の輪郭はシャドーが入る。商品前面はサイドライトで明るくする。
黒川隆広 くろかわ・たかひろ
amanaにて、30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイト商品撮影講座講師、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントなどで写真の学びの場を提供。プロからアマチュアまで、また企業から個人向けまで、プライベートレッスンも受け付けています。
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