2015年04月20日
5060万画素35mmフルサイズセンサーを搭載したキヤノンEOS 5DsとEOS 5Ds Rは、高精細な画像データを必要とする広告写真の市場を想定して開発されたカメラである。発売は6月予定となっているが、コマーシャル・フォト編集部では一足先に開発中の実機によるテスト撮影を行ない、その実力を様々な角度から検証した。検証はEOS 5Dsを中心に、ローパスフィルター効果キャンセルモデルのEOS 5Ds R、そしてベースモデルとなったEOS 5D Mark IIIも交えて行なっている。この検証結果を3回にわたりお伝えする。
EOS 5Ds、EOS 5Ds Rは2015年6月発売予定。直販サイトの販売予定価格はEOS 5Ds:税別468,000円、EOS 5Ds R:税別498,000円。 P=中村雅也
35mmシステムならではの機動力を備えた超高画素機
キヤノンから約5060万画素35mmフルサイズセンサーを搭載したEOS 5Ds、そのローパス効果キャンセルモデルとなるEOS 5Ds Rが発表された。
ベースとなったのはEOS 5D Mark III。このカメラは前機種からの画素数アップを見送り、ブラッシュアップという方向で全方位の性能向上や高画質化を進めたモデルだったが、それからはや3年が経過。キヤノンが満を持して、画素数を倍以上に増やしたモデルを投入してきたのである。現時点のテクノロジーであれば、キヤノンの考える高画素化に見合った高画質が実現できたということなのだろう。形こそ既存モデルを踏襲しているが、中身は全くの別物といっていい意欲作である。
高画素化のネガ要素として挙げられるのは、ブレが目立ちやすいこと、高感度化が難しいこと、連写がきかないこと、フォーカス合わせがシビアになることなどがある。
ブレの主な原因はミラーショックと、指でレリーズを押す時の振動だが、今回は入念なミラー振動制御システムとレリーズタイミング設定という対策が施され、振動が残らない状態での撮影が可能となった。
高感度の特性も、撮像素子の開口部を今まで以上に大きく取ることと、最新の画像処理エンジンによるノイズリダクションが相まって良好な結果をもたらしており、常用感度でISO6400まで使用可能。
連写性能においては、最高約5コマ/秒と5D Mark IIIの最高約6コマ/秒と1コマしか違わないという、この画素数にしては驚異的な連続撮影を可能としている。
そしてさらにRAW+JPEGラージ/ファインの連続撮影可能枚数は、Mark IIIの約7枚に比べ、なんと約12枚と増えているのだ。まさに35mmシステムならではの機動力を損なわない超高画素機となっている。
シビアなフォーカス合わせにも対応できるようにするため、ライブビューの手動ピント合わせは5D Mark IIIの約5倍/10倍から約6倍/16倍へと向上、液晶の見え方も良好で、今回の作例でも多用したが、フォーカスを外すことはなかった。
広告写真の分野へ進出しバックタイプを凌駕する可能性
では、この5060万画素というスペックはどういう時に威力を発揮するのだろうか。5060万画素というと、もはや最新鋭のデジタルバックタイプと同等の解像度を持つということだ。画質の観点からするとバックタイプの大型センサーは確かに素晴らしいものがあるが、今回のこの5Ds 、5Ds Rは、単に解像度で大型センサーに対抗しただけではないと思っている。
35mmフォーマットのデジタル一眼レフカメラというのは、映像機器の進化の本流にいると私は思っている。フィルム時代にはコマーシャルの現場ではほとんど使われなかったフォーマットだが、デジタル化がなされ、高性能化が進むにつれ、中判・大判カメラの土俵だったスタジオ撮影領域に進出し、また動画の世界をも席巻し始めた。これは何より35mmのシステムが、優れた操作性、機動力、レンズを主軸とした膨大なシステムを誇っているからだ。ユーザーの多さからくるコストパフォーマンスも、その開発に拍車がかかる理由だろう。
つまり、このEOS 5Ds、EOS 5Ds Rはその潮流の中から発生し、35mmフォーマットの利点を武器としてフルに活用して、これまで難攻不落の城のように思われていた、広告写真におけるバックタイプカメラの撮影領域に侵入し、さらに凌駕する可能性を大いに秘めているということだ。
今回の特集では、広告写真という分野での使用を想定して撮影を行なった。人物の入っているカットやスチルライフ、特殊なマクロレンズの使用などを試してみたが、いずれも2000〜3000万画素級のカメラとは一線を画す高画質を得られた。
広告写真のほかにも、大きな印刷物や高精細デジタルサイネージ、またはアーカイブなどの分野では、大きなデータサイズが必要とされ、バックタイプカメラが広く使われている。そういった中で、撮影機材の選択肢として35mmのシステムが位置づけられるようになり、しかもサブではなく主軸の一つとして存在するということは、フォトグラファーのクリエイティブにとっても大きな利点になるに違いない。
EOS 5Dsを広告の現場に投入したらどうなるのか?
5060万画素のEOS 5Dsを広告の現場に投入したらどうなるのか? ここでは単なる作例のための作例ではなく、できるだけ実際の仕事に近いシチュエーションを設定して、疑似広告的なビジュアルを撮影することにした。フラワーアーティストとして活躍しているニコライ・バーグマン氏に協力してもらい、南青山にある彼のフラワーショップでロケを行なった。彼を主役に起用した広告という想定である。
撮影した写真はできるだけ大きなサイズで見てもらえるように、片観音を使い、B5サイズ3ページの大きさ(縦257mm×横521mm)でコマーシャル・フォト4月号に掲載した。WebではそのレイアウトデータからJPEGを書き出して掲載している。まずはその結果をじっくりと見てほしい。大きな窓から差し込む朝の柔らかい光を受けた花や植物、そしてニコライ・バーグマン本人の表情を、瑞々しく表現できていると思う。
大きめの印刷広告を想定して、寄っても引いても楽しめる画面構成を行なった。光源は自然光+HMIを使用。少しでも人物のブレを防ぐためにISOは200で撮影しているが画質は良好である。
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[撮影データ]EOS 5Ds=レンズ:EF24-70㎜ F2.8L II USM、撮影モード:絞り優先、絞り:F8.0、シャッター速度:1/6 秒、ISO感度:200、ホワイトバランス:色温度(5300K)、ピクチャースタイル:ディテール重視/EOS 5D Mark III=上記に準拠 [スタッフ]P=南雲暁彦 Model=ニコライ・バーグマン(フラワーアーティスト) HM=関大輔
ニコライ・バーグマン
1976年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。その活動の幅は広く、フラワーデザインはもとより、ファッションやデザインの分野で世界有数の企業と共同デザインプロジェクトを手がける、今や日本でもっとも有名なフラワーアーティストの一人である。
www.nicolaibergmann.com
MAKING | 24型の4Kモニターを現場に持ち込んでピントの確認を行なった
フラワーショップで撮影を行なったのは2月某日。この時点ではPCとの連結撮影ができなかったので、カメラの背面液晶でライブビューを拡大しながらフォーカスを合わせ、ブレを排除するためミラーアップした状態からリモートでレリーズしている。6月以降はEOS Utilityが5Dsに対応するので、PC画面を見ながら撮影できるようになるはずだ。撮影はRAW+JPEGモードで行なっており、Digital Photo Professional 4のα版で現像している(今回の記事に使用した写真はすべて同様)。
PCでの確認は、EIZOの24型4KモニターColorEdge CG248-4K(発売日未定)を特別に借りることができたので、これで行なっている。4K/185ppiの高精細画面でフォーカスを確認する作業は、想像以上に快適だった。5000万画素クラスの撮影においては、フォーカスを厳密に確認する必要があるので、モニターの性能は非常に重要だと感じた。
EOS 5Dsと5D Mark IIIの解像力を比べる
比較のために2230万画素のEOS 5D Mark IIIでも撮ってみたが、特に人物の表情は5000万画素クラスと2000万画素クラスでは全く別格の絵になっているのがわかるだろう。
印刷上で同じサイズ、同じトリミングになるように写真を配置すると、5D Mark IIIの方が1.5倍ほど拡大率が高くなる。5D Mark IIIの画像が拡大で使えないというわけではないのだが、5Dsと比較するとやはり歴然とした違いが存在する。これなら、雑誌やカタログだけでなく、B倍ポスターを近くで見るときにも高いクオリティで写真を見せることができる。
一眼レフで5000万画素が撮れるようになると、撮影設計の自由度がかなり高くなる。これまでだと、撮影場所や撮影時間など様々な条件を勘案して、「今回は機動力よりも画素数を優先してバックタイプにしようかな」と悩んでいたようなケースでも、EOS 5Dsが登場したことによって、機動力と画素数の両方を手に入れられるようになったのだ。
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関連情報
デジタルフォト&デザインセミナー 2015 開催!
https://shuffle.genkosha.com/event/dpds/2015_1/8873.html
大阪会場:2015年5月20日(水)
東京会場:2015年5月22日(金)
デジタルフォト&デザインセミナーの中で、この記事の筆者・南雲暁彦氏が「5060万画素の衝撃! キヤノンEOS 5Dsの実力」と題して講演を行ないます(参加無料・事前登録制)。詳しくは上記URLを参照のこと。
協力:キヤノンマーケティングジャパン(株)
※この記事はコマーシャル・フォト2015年4月号から転載しています。
南雲暁彦 Akihiko Nagumo
凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部 チーフフォトグラファー
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市以上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。
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