キヤノン EOS 5Ds の実力

EOS 5Ds × 宮本敬文 Shooting Review

約5060万画素フルサイズCMOSセンサーを搭載した一眼レフ最高の解像度を誇るキヤノンEOS 5Ds。2015年6月18日に発売となったが、多くのフォトグラファーから熱い視線を送られている。5Dsでニューヨークの街を撮影した宮本敬文氏に使用感を語ってもらった。

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EOS 5Ds
約5060万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載。ミラー振動制御システムを採用し、ミラーショックによるブレを防ぐ。ローパスフィルター効果キャンセルモデルEOS 5Ds Rも用意されている。

img_products_eos5ds_07_01.jpg ニューヨークのハドソンリバーの河口にて。遠くに自由の女神像のあるリバティ島が見える。

手持ちで撮ることで写真に感情を込める

───今回ニューヨークに5Dsを持って行かれたそうですね。

宮本 僕は大学を卒業してすぐにニューヨークに渡って、そこの大学院で写真の勉強を続けていたんですが、学生のときにこのカメラがあったらどんなに良かっただろうと強く思いました。大学院では4×5や8×10のフィルムでアメリカの風景を撮っていたんですけど、フィルムだからお金がかかるし、持ち運ぶ機材も重いので、どうしても撮る枚数や機会が限定されてしまう。

でもこのカメラは5000万画素もあるし、ボディも小さいから、もっと作品をいっぱい撮れただろうし、もっといろんな事を考えられただろうし、もっと写真もうまくなっていたと思う。このカメラをニューヨークに持って行って感じたのは、学生の頃にもっと写真を撮ればよかったという後悔にも似た思いです。あの頃の気持ちがよみがえってきました。

───NYでどんな写真を撮りましたか?

宮本 いちばん撮りたかったのは、セントラルパークの夜景。世界で一番好きな場所で、思い出がたくさん詰まっているところなんです。でも、これを8×10で撮ると、三脚にがっちり固定して長時間露光するしかないから、どうしてもポストカードのような観光写真にしかならない。

img_products_eos5ds_07_02.jpg 学生の頃によく犬の散歩で訪れたというセントラルパークにて。その頃の記憶や感情まで写し込んだ1枚。レタッチ=福永剛志(VITA) ※クリックすると別ウィンドウで拡大表示

今回は5Dsを手持ちにして、感度はISO1600、シャッター速度は1/4秒。4枚の写真をつないで1枚にしています。マンハッタンの明かりが映って空が赤くなっていますが、僕はずっとこの曇り空の風景を撮りたかった。雨が降る前の、あの一瞬が美しいんです。

───手持ちで1/4秒だと、手ブレやカメラブレが心配になりませんか。

宮本 訓練を積んだ写真家なら1/4秒や1/8秒でもブレない技術を持っていると思います。さらに言うとこのカメラには、ミラーアップして何分の一秒か後にレリーズする新機能があって、カメラの振動を抑えてくれます。ライブビューでもカメラブレは抑えられますが、僕は手持ちでファインダーをのぞきたいので、こちらの機能の方がいい。写真のことが本当にわかっている人が作っているなと思います。

もちろん三脚を使っていないので、完全に静止しているわけではない。拡大して見ると微妙に動いているんだけど、でもそこに僕の感情や記憶が写っているような気がする。昔ここでよく犬を散歩させたなとか、夜中に1人で写真を撮っていて怖い思いをしたなとか、去年家族でここに来て楽しい時間を過ごしたなとかね。

───あえて手持ちで撮ったと。

宮本 そう。風景写真の中にも、感情が写った写真とそうでない写真があると思うけれど、絶対にブレないように撮った写真には感情的な面白さを見つけられない。でも手持ちで撮ったこの写真は、僕がこういうふうにセントラルパークを撮りたいとずっと思っていた、その通りに撮れた気がするんです。

わざわざ4枚の写真をパノラマにしたのも、たくさんの感情を持ち込みたかったから。1枚の写真をトリミングするだけだと、感情が1つだけになってしまうからね。

写真の限界を越えていく、すごく自由なカメラだなと思った

img_products_eos5ds_07_03b.jpg グラマシーパークの庭園。大学院のすぐ近くにあり、長年入りたいと思っていた鍵付き公園。

───せっかくの5000万画素なのに、ブレてもいいんですか?

宮本 いや、それが逆にいいんじゃないですか。手持ちでブレてもいいから、むしろ高画素が必要になるんだと思った方がいい。画素数が多ければ多いほど、写っているものと写っていないものの中間をしっかり捉えられる。

たとえば8×10のポートレイトで絞りを開放にして、背景をボカして撮ったりしますが、ピントは1点にしか合っていない。でも、ボケているところにすごい存在感があって、そこに惹かれるから8×10を使うわけじゃないですか。それと同じですよ。

ディテールがつぶれることによって、むしろそこに感情が乗りやすくなる。大きなフォーマットで撮っている人ならみんな、肌で感じていることではないでしょうか。

───くっきり写っているから良いという単純な話ではないんですね。

EF50mm F1.2L USM
img_products_eos5ds_07_04.png 開放F1.2の明るさを誇る大口径標準単焦点レンズで、EFマウントの代表的な定番レンズの一つ。今回掲載する作品はすべてこのレンズを使用している。

宮本 今回レンズはEF50mm F1.2L USMを使ったんですが、フォーカスがきてないところの空気感まで写っていて、優秀なレンズだなと感じました。仕事では普段50mmは使わないんですが、今回は5Dsとこのレンズの組合せだったからこそ、手持ちでエモーショナルな写真を撮ろうと思ったところはあります。

今まで長い間写真を撮ってきて、どこか写真が写真であることによる限界を感じていました。ピントがどうとか、光がこれだけないと写らないとか、8×10のカメラは撮りたいときにすぐ撮れないとか。

でも5Dsはその限界を越えていくような、すごく自由なカメラだなと思った。今までフィルムでは撮れなかったもの、撮りたかったものがようやくこれで撮れる。だから今、ものすごくワクワクしています。

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みやもと・けいぶん
日本大学芸術学部、New York School of Visual Arts大学院卒業後、 N.Yにて活動を開始。2002年帰国。現在、広告、雑誌、CF等で活躍中。
whiskystudio.net/

※この記事はコマーシャル・フォト2015年8月号から転載しています。


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