2010年08月05日
Adobe Photoshop 1.0のリリースから2010年でちょうど20周年。Photoshopと縁の深いクリエイターに話を聞くインタビュー・2人目は、ファッション、広告、音楽シーンなどで活躍するフォトグラファーの田島一成氏。
下の写真含め2点とも『ELLE JAPON』2010年3月号(雑誌・アシェット婦人画報社)
フォトグラファー:田島一成 ファッションディレクター:菊池直子 ヘア:ABE (M0) メイク:NODA NORIKATA(MILD)
想像したイメージをPhotoshopが自由に具体化
五味彬さんのアシスタントをやっていた90年頃、Macを導入した五味さんに「お前、覚えろ」と言われてPhotoshopを使い始めたんですが、独立して5年間くらいはパソコンは使わず、カラーもモノクロもネガで、暗室作業をしていました。そうこうしている間に、スキャニングの解像度やPhotoshopの性能が上がってきたので、Macを買いました。15年前くらいだと思います。僕は結構しつこく突き詰めるタイプなので、写真の範囲を細かく分けて焼き込んだり、色を調整したりしていたのですが、だんだんと暗室作業に限界を感じて、より細密にやるならPhotoshopだな、と。ネガをスキャンしていた時代が何年かあって、デジタルカメラを導入したのは8年ほど前からです。
Photoshopを導入してからは、頭の中で想像したイメージを自由に具体化できるようになりました。それまでは外注してお金をかけないとできなかったことが、自分で試しにやってみることができる。そしてクオリティも高い。焼き込みにしても、ピクセル単位でできますからね。でも目的は、自分がやりたいアイデアを実現するということに変わりがないので、暗室がパソコンになってやりやすくなった、ということなんですが。
現在はPhotoshop CS3を使って、レタッチャー、アシスタントの3人で作業しています。僕は色とかコントラストとか、写真のトーンや方向性を決めるところまでで、あとはそれに従ってやってもらっています。
光のグラデーションなど、写真が持つトーンを壊さない
とにかくリアルな写真に見えないと嫌なので、極端なツールはあまり使いません。フィルムの写真が持つ豊かなグラデーション、光のなりゆき、それは壊さないようにしたいです。写真そのもののトーン、光のグラデーションが、修正しても見分けがつかないものにしたい。肌を修正しているからきれいなんでしょ、というのではなく、その人の肌がきれいだからきれいに見える、と思われるようなものじゃないと。
Photoshopで自分の写真が変わったとは思わないのですが、メイクアップに対する考え方は変わったかもしれません。以前は肌のトラブルなどは、実際のメイクで隠したり作ってもらわなければならなかった。ファンデーションで直すとなると、どうしても厚く塗られて質感がなくなってしまうのですが、後で修正することを念頭に、多く塗らないでもらうことが多くなりました。
これからPhotoshopがどう進化していくにせよ、僕の写真はそれほど変わらないだろうと思います。ただ、Photoshopがないと自分の作りたい写真は作れないですね。僕の写真は自然に見えるけれど、Photoshopがないと絶対できません。それが、この20年間で一番変わったことかもしれません。
Profile:
田島一成 Kazunari Tajima
1967年東京生まれ。五味彬氏のアシスタントを経て、パリ、NYで活動。2002年から東京を拠点に、ファッション雑誌、広告、CM、ミュージシャンの写真や映像で活躍中。 http://www.mildinc.com/
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- 「Creative CloudとPhotoshopが切り拓くビジュアル表現の新しい形」Nick Yamazaki
- 「複数アプリケーションそれぞれの強みを活かすことが、表現の幅を広げる」篠田隆浩
- 「機能はすでに必要十分だと思っていたが、Photoshop CCには新たな発見があった」腰塚光晃
- 「まず感心したのは『処理速度の速さ』。こうした根本的な部分の機能強化が嬉しい」菱川勢一
- 「Photoshop CS6はクリエイティブそのものに集中できるツールになった」北岡弘至
- 「神は細部に宿る――Photoshopの作り出す高精細画像は文化的にも重要な役割を果たす」 早川廣行
- 「自然でリアルな写真を突き詰めていくにはPhotoshopは欠かせない」 田島一成
- 「Photoshopはまるでモノリスのような存在。 写真表現はこれから本当の意味で進化する」 甲斐 彰