新Mac Pro実力検証

フォトグラファーから見たMac Proの実力

南雲暁彦

Photoshop CCでの写真RAWデータの現像

これからは写真だけでなく動画にも対応したマシンが必要

写真で見ても実物を見ても、不思議な存在感の漂う黒い筒、新型Mac Pro。今までのデスクトップPCと大きく違うのは、本体にハードディスク等を格納する拡張ベイを持たないため非常に小さいこと。ベイが沢山あるシステムの箱ではなく、コアのみが独立して存在している感じだ。

そういう意味ではMac Miniと似ているが、コアとしてのパワーも役割も全く違う。ベイを持たないというのは、そもそもそこに積める程度のデータ容量が相手ではないということであろう。

写真の編集作業のためだけに高速・大容量のRAIDを組むことはあまりないが、動画・静止画の境がなくなってきた昨今、両方に対応したシステムを組んで効率化を計る必要性は増しており、そのシステムは今回登場したMac Proをコアとして完成するというわけだ。

img_special_macpro04_01.jpg Adobe Bridgeで100枚のRAWデータを選択し、Camera Rawで現像を行なった。

img_special_macpro04_03.png 写真のRAWデータ現像の検証では、キヤノンEOS 5D Mark IIIのRAWデータ(5760×3840、約2210万画素)を使用した。

ここでは大量の静止画の現像テストを行なった。EOS 5D Mark IIIのRAWデータ(約30MB)をAdobe Camera Rawで100枚一気に現像した。比較用にMacBook Proを用意し、 RAWデータはThunderbolt2対応の高速ストレージに保存されたデータを使用してMac ProとMacBook Proの条件を合わせている。

さて、100枚現像の結果はMac Pro:2分32秒、MacBook Pro:4分28秒となった。一枚あたりの平均現像時間はMac Pro:1.52秒、MacBook Pro:2.68秒となり、どちらも十分には速いのだが、Mac Proはもはや現像作業ではなく、ただ開いているようにしか見えない。RAWデータ100枚の現像処理が、カップラーメンが出来上がるより速いのだから驚いてしまう。このデータは展開すると63.3MBになる。デスクトップにこれが100枚並ぶのだが、もはやこの程度の静止画ではどれだけ開いていてもストレスはない。

EOS 5D Mark IIIのRAWデータ100枚の現像時間
Mac Pro MacBook Pro
2分32秒 4分28秒

比較用のMacBook Proもけっこう健闘しているので、高精細な画像でレイヤーが100枚というようなデータを扱う人でなければMac Proの必要性を感じづらいかもしれない。自分ではそこまで大きな静止画のデータを扱うことはほとんどないが、先にも述べたように動画も普通に扱うようになってきており、特に4Kとなると、既存のものではストレスフリーと呼べるマシンはなかったので、やはりそういった意味でも必要になってくるマシンだと感じる。4K出力が可能な、相性の良いモニターと一緒にあるとなお良い。


※この記事はコマーシャル・フォト2014年4月号 特集「新Mac Pro 実力検証」を転載しています。

南雲暁彦 Akihiko Nagumo

凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部 チーフフォトグラファー
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市以上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。

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