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【特集】 田中達也(後編):「クローズアップすると人形の塗装の粗まで見える。αの解像感に驚きました」

疲れを洗い流しにきました

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Interview 田中達也(ミニチュア写真家)

野菜や文房具、日用品など、身近な物と小さなフィギュアを組み合わせて不思議な見立ての世界を構築する田中達也さんの「MINIATURE LIFE」。その創作の秘密にさらに迫っていく。

img_products_sony_a_tanaka02_02.jpg 撮影:藤代雄一朗
(DRAWING AND MANUAL)
たなか・たつや
1981年熊本出身。ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立て、独自の視点で切り取った写真「MINIATURE CALENDAR」がインターネット上で人気を呼び、雑誌やテレビなどのメディアでも広く話題に。広告ビジュアル、映像、装画など手がけた作品は多数。2017年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」のタイトルバックを担当。写真集「MINIATURE LIFE」、「MINIATURE LIFE2」発売中。

新商品は見立てるのが難しい

──広告の仕事で作品を作って欲しいという依頼も増えているのですね。

田中 そうですね。ただ僕の作品は企業の新商品を使って欲しいという要望に弱いですね。例えば今までに見たことのないボトルデザインの香水が出るので、そのPRをして欲しいという依頼があったとします。その香水自体を知らないし、どのぐらいのサイズなのかもわからないと見立てが成り立たない。そのようにモチーフ自体が世の中に浸透していないという理由で断ることも多いです。

それよりは老舗メーカーの定番チョコのような世の中に浸透しているものの方がモチーフにしやすい。誰もがその形や大きさがわかる。そういう仕事だと受けやすいですね。なにを作品のモチーフにするのかは大事です。

田舎ぶらし

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──「ひよっこ」のオープニング映像見ていても、それぞれがなにに見立てられているのかがわかりやすいです。

田中 昭和40年代の洗濯機を使っても今の若い人が見ても洗濯機だとわかる。何を持って洗濯機と認識しているのかがわからないのですが、典型的な形をしているということなんでしょうね。みんなが思い描くような物を別の物に見立てて変換する。それがみんなに理解できる。いつも見ている○○をいかに化けさせるか。普段見慣れない物を見立てても面白くならないことが多いですね。

抽象的な依頼の場合にも必ず物に落とし込むようにします。「スピードを表現して欲しい」という時にストップウォッチをモチーフとして使ったり。人権のポスターの場合には、ハートの形を連想して、そこからトランプに落とし込んだり。モチーフに結びつかないものだと厳しいですね。

仕事を受けられる数は限られていて、クリスマスなど掲載時期が集中する依頼もあります。最良のアイデアを出したいのでテーマは重複したくない。そうなるとどの案件を受けるのかにも慎重になりますよね。

──趣味でやっていたことが本業になったことでつらいことはないですか。

田中 アイデアに関してはストックもあるし、行き詰ることはないですね。過去やったものと組み合わせて新しく作ることもできるので苦痛ではないです。しかし続けていると休みたい、怠けたいという日もあります。そこをどう楽しく撮るテンションに持って行くのか。ネットで新しい人形をやけ買いすることもあります。購入ボタンを連打連打(笑)。それでこの人形を使って何を作ろうかとテンションがあがりますし。好きな映画やゲームなど、自分がやりたいと思う仕事の場合は優先して受けることもありますね。

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撮影は5畳ぐらいのアトリエで行ないます。ミニチュアなのでその狭さでも撮れるので。引きの撮影が必要な時には倉庫を使っています。

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人形は約5000体以上持っています。

「○○で○○」という見立てのアイデアはスマートフォンのメモに書き込んでいます。

──αの機種を変えるきっかけはなんですか。

田中 一番のきっかけは解像度ですね。α77で解像度が物足りないなと感じました。引きで全体を撮った後に人形の周囲だけトリミングして掲載することも多くなり、α7R IIに切り替えました。欲を言うとα77のように液晶パネルが3軸で動く方が使いやすいのですが、レンズはEマウントの方がいい。そこは迷いますよね。最近はカメラのライブビューをPCに映して撮影することが多くなったのでそこは気にならなくなりましたけど。

──解像感を意識するのはどういう場面ですか。

田中 α7R IIで撮影したものをトリミングして顔をクローズアップした時に人形の塗装の粗まで見える。引いたアングルで撮った写真を寄りで見せても、1枚で充分対応できる。この解像感には驚きました。効率的に撮影ができるようになりました。最近では、展覧会で壁面いっぱいに写真を大きくプリントするケースもあるので、より重宝しています。αはボケるところはしっかりボケるし、シャープなところは細部までシャープに表現できるのでそれが気持ちいいですね。ピント合わせがしやすいのもいいですね。マニュアルフォーカスでF3.2から気持ちいいF値を探していきます。ピント調節時にライブビューを2段階で拡大できてピント位置を確認しやすい。αに慣れちゃうと他社のカメラでピント合わせはできないです。

──画像処理はしているのですか。

田中 毎日の作品の時は背景を同じ色数値のベージュに統一しています。背景を白飛ばしで撮影して後でベージュを乗算しているんですよ。写真の周囲が暗くなりにくいので後処理もしやすいですね。

──プライベートでもαで撮影しているんですか。

田中 子供を撮る時にはα6000と24-77mmのズームレンズ(Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM)を使っています。持ち運びやすさと軽さ。すべてにおいて使い勝手がいいです。

これからも作品を撮り続けたい

「風船はいくらでもありますよ!」

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──これから挑戦してみたいことはありますか。

田中 これまで一枚絵でアイデアを出して来たので動画やVRに興味がありますね。違うジャンルの人と一緒に作ると見立ての表現の幅が広がってくる。それが面白いと思います。常に新しいことをやっていきたい。同じことを繰り返していくと飽きられてしまう。それが作品に現れるのは嫌なので、いつも1つ前よりも違うことができる案件を受けるようにしています。

基本はフォトグラファーですけど、見立て作家みたいな要素が増えています。「ひよっこ」では僕が見立てたミニチュアをベースにCGアニメーションに仕上げてもらいました。このように最近は自分の手で仕上げない案件も増えてきました。独立して、一旦アートディレクションから離れたのですが、最近またそこに戻ってきている。頭にあるものが形になるのなら、ある部分は人に任せるなど、全て自分でやらなくてもいいという気持ちもあります。いろんな人とコラボレーションをしていろんな作品に仕上げられると楽しいですね。

ただし、毎日の写真はこれからもアップして行きたい。これは続けていくべきだと思います。前日の夜に撮ることが多いんですけど、前もって構想していたアイデアの中から選んで撮っています。出張のために何日分かを撮りためることはありますけど、それ以外は毎日撮影します。筋トレみたいなものですね。毎日の練習があるからこそ、より新しいアイデアが出せるようになると思っています。



協力:ソニーマーケティング(株)
ソニーα Universe http://www.sony.jp/ichigan/a-universe/

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