2010年11月11日
iStockphotoは、10月30日から11月7日の9日間、世界中のフォトグラファーが参加する撮影会・iStockalypse(アイストッカリプス)をアジア初となる東京にて開催した。撮影が行なわれている都内のスタジオを訪ね、来日中のiStockphoto COO、ケリー・トンプソン氏にこのイベントについて話を聞いた。
ケリー・トンプソン氏
iStockalypseの始まりは、2004年に開かれたiStockphotoメンバーのオフ会。普段オンラインでの交流だけのメンバーが、直接向かい合うことの大切さを感じ、またトップ・コントリビュータと言われる人たちの知識を共有したいと思ったのがきっかけだ。以来、iStockphotoが主催者となって年に3~4回のペースで開催しているが、公式イベント以外にもフォトグラファーが個々に集まる「ミニリプス」というのもあって、正確な回数はカウントしきれないという。
今回は、5名1組の計9組・合計45名(うち海外からは約30名)が参加。都内のスタジオ、レンタルオフィス、病院といった施設を使用するほか、原宿やお台場などの街角にも繰り出し、モデルを使ったカジュアルシュートも行なう。
「参加数としてはいつもと変わらないんですけど、通常3~4日のものを9日間かけるというのは、規模でいうと過去で一番大きいものです。60~70人でやったことがあるんですが、やたらと慌ただしくなってしまうので、今回のように40~50人くらいが快適に撮影をしてもらえる限界かと思います。それに、夜みんなで集まって飲んだりすることも考えると、これぐらいにしておいたほうがいいですね。
今回、ゲッティイメージズと契約してる日本人フォトグラファーを何人か招待しているのですが、彼らと参加者のコミュニケーションもうまくいっているのかな。彼らはゲッティで何年も撮っている人達なので、日本で好まれる写真のトーンやストックフォトについて理解して、グループリーダー的に動いてくれるので、今までにない楽しい会になっています」
5名のフォトグラファーが順番に撮影。自分の撮影が回ってくるまでは裏方として撮影者に協力する。
ビジネススーツからガラリと雰囲気を変えたモデル。スタイリストとメークが付き、フォトグラファーの要望に応えている。
今回のイベントの目的の一つは、日本のマーケットに向けたコンテンツ作りを目指すこと。これまでのiStockphotoの売り上げから蓄積されたデータを基に、日本で人気のテーマやイメージをまとめたクリエイティブブリーフを事前にフォトグラファー達に渡している。
「参加者から参加費はいただいていませんが、旅費は自腹です。そのためシュートの成果を見ながら“ああ、これで今回の旅費出たよ”といった話をしている人もいて、そのあたりはやはりシビアですね。だから、何が売れるのかとか、どう撮ったらいいのかとか、日本で売れるためのライティングはどうすればいいのかなどについて細かく聞いてきます。普段のやり方とは変えてもらうこともあるし、彼らにとっても日本のマーケットの勉強になっていると思います。
それと、撮った写真は販売目的だけでなく、iStockphotoのサイト上でポートフォリオとして使われる場合もあるので、今回のような撮影会に参加することで作品のバリエーションも増えます。ストックフォトの売り上げだけではなく、新たな撮影依頼の受注につながるので、そこは参加者から歓迎されています」
この日のスタジオは特にテーマを設定せず、メンバーそれぞれが自由に発想し交代で撮影を行なっていた。撮影者以外は、レフを持ったりモデルの代わりにポーズを取ったりと、撮影スタッフとしても働いている。音楽が流れる中、撮影の様子をのんびり眺めたり、カメラを構えて自身の構想を練るメンバーも。撮影を媒介にしたコミュニケーションが、あちらこちらで図られている感じだ。撮影のノウハウについての交流もあるという。
秋の公園でファミリーをモデルにした撮影。地面に伏せて渾身のベストショットを追求。
©iStockphoto.com/Todd Thomas
「あるグループに、まだモデルを撮ったことがない、大型ストロボも使ったことがないという人がいて、ストロボの接続の仕方から、他の人に教えてもらったりしています。また逆に、教えている側のキャリアのある人は、学校に行っていた時の情熱や、楽しかった頃が思い出せてうれしいと言ってくれるんです。だから、必ずしも技術のある人からない人への流れだけではなく、気持ちの部分のシェアもできています」
コミュニケーションというキーワードは、このイベントはもちろん、iStockphotoのサイトからも強く感じられるメッセージだ。これは他のストックフォトサービスにはない大きな特長と言える。
「iStockphotoはコミュニティを大切にしてるというか、それがなければ、われわれは今ここにはいないだろうと思っています。数年前は趣味からスタートした人たちが、いまやプロレベルの写真を撮れるようになっているのを見ると、彼らと一緒にわれわれも成長してきたという意識は強いです。iStockphotoが伸びている理由は、ただ安価な価格帯でビジネスをやっているからということではないんです。フォトグラファーのコミュニティがあるからこそ支えられているし、彼らが私達の原動力になってくれている。彼らがいなければ成立しないのですから、コミュニティを大切にするのは当たり前ですね」
日本は、アジアの中で有望なマーケットとして期待しているという。今回のイベントから、日本のマーケットに力を入れるトップ・コントリビュータが誕生するかもしれない。
ストックフォトに大切なのは、明確なコンセプトが盛り込まれていること。自然の中でバーベキューを楽しむファミリーや、お台場の海に面した公園ではメンバー手製のマスクを着けたヒーロー(?)が撮影された。
©iStockphoto.com/Todd Thomas
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