デジタルフォト達人への道

プロが教える本当にシャープな写真の撮り方 第3回

解説:スコット・ケルビー 日本語版監修:早川廣行

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アメリカで大ベストセラーとなった書籍「The Digital Photography」が日本語に翻訳されて発売された。この「デジタルフォト達人への道」(発行:ピアソン桐原)、著者は全米Photoshopプロフェッショナル協会(NAPP)会長のスコット・ケルビー氏、日本語版の監修は日本におけるデジタルフォトの第一人者・早川廣行氏だ。Shuffle読者のために、第1巻から第3巻まで各巻のハイライトを特別公開する。

ピントのしっかり合った鮮明でシャープな写真を撮ることが、プロの写真家にとっては何より重要です。「デジタルフォト達人への道」第1巻からは、「第1章 プロが教える本当にシャープな写真の撮り方」を公開します。

画像を拡大してピントを確認する

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Canon
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Nikon

デジタル写真の悲しい現実­─それは、カメラ背面の小さな液晶モニター上では、どの写真もしっかりピントが合ってシャープに見えるということです。小さなサイズで表示された画像は、常にシャープに見えます。しかし、(いったんコンピューター画面上でファイルを開いてみれば)すぐにこの小さなモニター画面は信用できないということを思い知らされるはずです。

そこで、画像を拡大してピントをチェックすることが重要になります。カメラの背面にあるズームボタンを押すと画像が拡大され、本当にピントが合っているかどうかを確認できます。その場で、撮影後すぐに確認することを習慣にしましょう。チェックしてピンボケだったときに、撮り直しができるからです。プロは何度も痛い目に遭ってきた経験から、常にこうして撮影した写真のシャープさをチェックしています。

Column

クイックズームのカスタム設定

最近のデジタル一眼レフカメラの中には、クイックズームを選択できるものもあります。画像確認時にどれだけ拡大するかをあらかじめ設定しておくものです。使用説明書をチェックして、自分のカメラにその設定メニューがあるかどうかを確認してみましょう。


Photoshopでのシャープネス加工

img_tech_kelby03_03.jpgSCOTT KELBY

この章で紹介してきたテクニックのすべてを取り入れれば、かなりシャープな写真を撮れるようになりますが、それをさらにシャープに見せるための方法があります。

Adobe社のPhotoshop(プロ向けの画像編集ソフト)またはPhotoshop Elements(同一般ユーザー向け)で、シャープネス処理をするのです。Photoshopを使ってシャープにすべきなのはどんな写真でしょう? すべてです。プロはすべての撮影済み写真にPhotoshopの「アンシャープマスク」フィルターを使っています。

「アンシャープ」という名前を聞くと、せっかくのシャープな写真をピンボケにしてしまうのではないかと思われそうですが、そうではありません。この名前は従来の製版用語の名残なので、気にしないでかまいません。

使い方は簡単です。Photoshopで撮影した写真のファイルを開き、「フィルター」メニューの中から「シャープ」を、さらに「アンシャープマスク」を選ぶと、ダイアログボックスに3本のスライドバーが表示されます。それぞれが、フィルター適用の際の特定の条件に対応しています。

専門的な説明は飛ばして、すばらしい効果を発揮する3種類の設定値を教えましょう

(1) 人物写真の場合:「適用量」150%、「半径」1.0、「しきい値」10
(2) 街の風景や旅の写真の場合:「適用量」65%、「半径」3.0、「しきい値」2
(3) 一般的な写真:「適用量」85%、「半径」1.0、「しきい値」4

*訳注:Adobe Photoshop CS2以降は「スマートシャープ」という機能が備わり、アンシャープマスク以上の精度の高いシャープネスをRGBデータにかけることができるようになっています。

プロのシャープネス加工

img_tech_kelby03_04.jpgSCOTT KELBY

もしあなたがPhotoshopかPhotoshop Elementsを持っているのなら、次のシャープネステクニックを試してみてください。これはプロが最もよく使っている手法で、シャープさを増しながらも、シャープマスクをかけたときに起こりがちな、エッジ部分に白い縁や変色ができて見苦しくなる状況を避けることができます。次の手順で行います。

(1)シャープにしたい写真のファイルを開き、前ページで紹介した数値で「アンシャープマスク」をかける
(2)ほかの作業に移る前に、「編集」メニューの「アンシャープマスクをフェード」を選ぶ
(3)「フェード」のダイアログボックスの中の描画モードを「通常」から「輝度」に変える

これで終了です。この手順を踏むことで、シャープフィルターは写真の輝度にだけ適用され、色相には影響を与えません。それによって色が不自然になるのを防ぎ、シャープフィルターの落とし穴を避けることができます。

手順さえ覚えてしまえば、きわめて簡単な作業です。

手持ちカメラでシャープに撮るためのテクニック

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たっぷりの日差しの中での撮影でないかぎり、手持ち撮影では常に手ブレの恐れがあります。あなたも、ピントのしっかり合った写真を撮れるかどうかは運任せにしている1人でしょうか?

あまり明るくない場所で手持ち撮影するときに、シャープな写真が撮れるだろうかと心配になったら、プロが困難な状況下で使っているテクニックを試してみるといいでしょう。連続撮影(連写)モードに変えて、1枚か2枚ではなく、シャッターボタンを押しっぱなしにして何枚も撮り続けるのです。少なくとも、10枚に1枚くらいはシャープな写真が撮れているはずです。

重要な撮影であれば、それで大勝利を得られます。私もこの方法を何度も使ってきました。助けられたことは一度や二度ではありません(ニコンの連続撮影モードボタンの場所は上の写真を参照)。

手ブレを防ぐカメラの構え方

img_tech_kelby03_06.jpgBILL FORTNEY

この方法は、写真家のジョエル・リポヴェツキー(上の写真が本人)から教えてもらいました。一緒に撮影に出かけたときに、ふと見ると、彼がカメラのストラップをねじって腕に巻き付けていたのです。ジョエルはこれを「死の握り(デスグリップ)」と呼んでいます。

ストラップを腕(ひじ上)に巻き、手首のところで(上の写真のように)ねじってピンと強く引っ張ることで手持ちのカメラがより安定し、シャープな写真を撮ることができます。

ただし、上の写真はストラップの巻き方をわかりやすく示したものなので、撮影時の姿勢はこれを真似ないようにしてください。いつものように目の高さに構えてファインダーをのぞく構えで問題ありません。この驚くほど効果的なテクニックを教えてくれたジョエルに一緒に感謝しましょう。

Column

もたれかかるものを探す

三脚を使えない状況でプロが使うもう1つのテクニックは、次のいずれかです。

(a)体を安定させるために壁にもたれかかる
  体が安定しているほど、カメラも安定します。
(b)手すりや柵など、その場所にある動かないものにもたれるかレンズを乗せて、三脚代わりにする

三脚を持参しないときには、代用できるものがないか、常に周囲を探すようにします。そうすることで大きな違いが生まれます。


※この記事は「デジタルフォト達人への道」第1巻から抜粋しています。

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スコット・ケルビー Scott Kelby

『Photoshop User』誌の編集者兼発行人。『Layers』誌(Adobe社製品に関するハウツー雑誌)の編集者兼発行人。人気ウィークリービデオショー『Photoshop® User TV』の共同司会者。全米フォトショップ・プロフェッショナル協会(NAPP)の共同創設者兼会長で、ソフトウェアのトレーニング・教育・出版会社ケルビー・メディア・グループの会長。写真家、デザイナーで、著書は50冊を超える。
・ブログ(英語) Scott Kelby's Photoshop Insider
・トレーニングビデオ(英語) Photo Recipes Live by Scott Kelby


早川廣行 Hayakawa Hiroyuki

電塾塾長/株式会社電画代表/東京藝術大学大学院非常勤講師/日本写真学会会員/日本写真芸術学会会員。デジタルフォトの黎明期から画像処理に取り組み、デジタルフォトの普及啓蒙・教育活動に努める。デジタルフォト関連の雑誌への寄稿、講演活動、書籍執筆(Photoshopプロフェッショナル講座シリーズ他多数)など幅広く活動している写真家・フォトディレクター。

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