デジタルフォト達人への道

プロのようにスタジオを使いこなす 第2回

解説:スコット・ケルビー 日本語版監修:早川廣行

写真:デジタルフォト達人への道 3
アメリカで大ベストセラーとなった書籍「The Digital Photography」が日本語に翻訳されて発売された。この「デジタルフォト達人への道」(発行:ピアソン桐原)、著者は全米Photoshopプロフェッショナル協会(NAPP)会長のスコット・ケルビー氏、日本語版の監修は日本におけるデジタルフォトの第一人者・早川廣行氏だ。Shuffle読者のために、第1巻から第3巻まで各巻のハイライトを特別公開する。

これまでの連載のようにゼロから作り上げたスタジオは、さらに充実させることができます。「デジタルフォト達人への道」第3巻からは、「第2章 プロのようにスタジオを使いこなす」を公開します。

ビューティーディッシュでの演出

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ソフトボックスを使ったときほどソフトではなく、むき出しのストロボほどきつくはないライティングが望みなら、「ビューティーディッシュ(Beauty Dish)」を試すとよいでしょう。得られる光はその中間といったところで、強すぎることはなく、それでいてしっかりしたコントラストが生まれます。

ビューティーディッシュはストロボの前面に取り付けて使いますが、まるで巨大な金属製レフ板のように見えます。これで光がよりエネルギッシュになり、クローズアップや顔写真にすばらしい効果を発揮します(肌のトーンがくっきりと浮かび上がるからです)。化粧品や美容関連の広告写真でよく見るような、美しい仕上がりにしたいときには最適でしょう。

ビューティーディッシュに“ソックス”をはかせることもできます。少しだけ光をソフトにするために前面を覆うものです。ビューティーディッシュを使う場合には、被写体の前方上部に設置し、45度の角度に傾けます(上の写真を参照)。みなさんはディッシュの真下あたりで撮影することになります。目の下の影を消すために、被写体の胸の位置にレフ板を平らに置いてもよいでしょう。

どのメーカーの製品を買うかにもよりますが(私はElinchrom(エリンクローム)の17インチ=約43cmのものを使っています)、内側が白のものとシルバーのものがあります。私は光が少しソフトになる白を選びました(シルバーのほうが光を反射するため、よりコントラストの強い仕上がりになります)。

*訳注:日本ではオパライトとも呼ばれます。


ハニカムグリッドを使う

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ストロボからソフトボックスを取り除くと、フラッシュバルブからの光はあらゆるところに広がります。そもそもそれが─欲しいところにソフトな光を当てることが─ソフトボックスを使う理由の1つなのです。しかし、ソフトボックスを透した光は当然ながらソフトです。そうでない光を当てたいときは。そこで登場するのが「ハニカムグリッド(グリッドスポット)」です。これは、ストロボのリフレクターにかぶせるように取り付けるハニカム(ハチの巣)状の金属製パネルで(私が使っているものはカチンと締まるタイプです)、これを通すことで光を狭めて集中させ、スポットライトのような劇的な効果を演出することができます(ソフトボックスがないので、ハードエッジの光になります。むき出しのバルブに金属製のリフレクターとグリッドを付けた状態です)。

最近では、ポートレートでのバックエッジライトとしてよく使われています(実際に、過去1年の雑誌の表紙でハニカムグリッド付きのストロボを1台も使っていない写真を見つけることは難しいと思います。被写体の後ろのどちらかの側に白いハイライト部分ができている写真がそうです)。照射角度の違いで「10度」「20度」といった具合にいくつか種類があり、数値が小さければ光はより堅くなります(私は20度か30度のグリッドを使っています)。

使い方はいたって簡単。ストロボに装着するだけで、光は大幅に狭められます。被写体のどちらかの側に、顔の側面に向けて設置してください。手前の別のストロボで顔に少し光を当てると、ねらいどおりの効果が得られます。本当はもう少し付け加えることがあるのですが、それについては最終章で補足しています。


テザリング撮影でテレビ画面に映し出す

img_tech_kelby08_03.jpg SCOTT KELBY AND JVC

カメラの小さな液晶モニターではなく、もっと大きな画面で画像を確認したくなったら、テレビに接続したテザリング撮影を試してみるのもよいでしょう。最近のデジタル一眼レフカメラは何らかのビデオ出力機能を備えているのが普通です(ニコンやキヤノンの最新機種ならHDMIにまで対応しています)。カメラのビデオ端子につないだケーブルを、テレビモニターの入力端子につなぐだけで、液晶モニターの画像を大きなサイズで見ることができます。コンピューターにつないだ場合とは異なり、テレビに接続した場合は、撮影した画像はメモリーカードにも保存されています(画像データがコンピューターに取り込まれるのとは違います)。

つまり、テレビ画面はカメラの液晶スクリーンの代わりであり、その機能のすべてを果たすということです。したがって、ハイライト警告やカメラの設定を始め、いつも液晶モニターで見ているものすべてを大型画面で見ることができます。

それがいかに便利かは言葉ではいい表せません。光の加減も、画像のシャープさも目ではっきり確認でき、6〜7cmの小さい液晶モニターでは見落としがちだった画像の仕上がりをチェックできます。被写体となる人たちにも、大型サイズで自分の写り具合を確認できるので好評です。画面に映った自分の姿が気に入るとウキウキとした気分になるため、それがさらによい結果をもたらすのです。実際にテレビ画面に接続するのに必要なものは(テレビは別にして)、ただ1つ、そのカメラに適合したビデオ出力用ケーブルだけです(多くのデジタル一眼レフにはこのケーブルが付属品として付いています)。


ラップトップをすぐ近くに置く

img_tech_kelby08_04.jpg SCOTT KELBY

カメラを直接ラップトップにつなぐと、撮影画像がコンピューターにダウンロードされ、撮影しながら画像を選別したり微調整したりできます(これについては第2巻で紹介しました)。このときに、ラップトップをすぐそばに置いておくと時間の節約になります。Gitzo(ジッツオ)の「G-065ラップトップモニタープラットフォーム」(上の写真)を使うとそれが簡単にでき、安定性も抜群です。

これは三脚に取り付けられる金属製の台で、15インチのラップトップにぴったりのサイズです。三脚をたびたび使うようなら、Manfrotto(マンフロット)の「131DDアクセサリーアーム(4ヘッド対応)」を加えて、三脚に2つの仕事をさせましょう。

三脚にねじ止めした水平のバーの一方の端にラップトップ用のモニタープラットフォームを取り付け、もう一方の端には自由雲台(ボールヘッド)を取り付けます。自由雲台は通常、三脚に単独で取り付けるものですが、こうすることで1本の三脚に2つの機材を載せて一緒に使うことができます。すばらしい!

Column

スクリーン上で画質を判断する

注意すべき点を1つ。画像を大画面のコンピューター(24インチ以上)で開いて100%の大きさで見ると、おそらくあまりシャープには見えません。この場合は、“実物より大きい”サイズで見ていることを思い出してください。スクリーン上の画像サイズを実際にプリントしようと思っているおおよそのサイズまで縮小してみるとよいでしょう。大きなポスターサイズで印刷するなら、2mほど離れた位置から画像を見ることをすすめます。ポスターを眺めるときには、誰でもそれくらい離れた位置から見ることになるからです。


最も役に立ち、しかも安価なアクセサリー

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スタジオにガムテープを用意していないとしたら、この本を読むのを中断して、すぐにオンラインで数個注文することをすすめます。ダクトテープではありません。絶縁用テープでもありません。ガムテープです! これも一度使うと撮影では手放せなくなる道具の1つです(スタジオ写真家の全員が同意するでしょう)。ハニカムグリッドをストロボに固定したり、ソフトボックスの隙間を修正したり、商品撮影のときに物を一緒にまとめたり、あらゆることに使えます。

もう1つ、やはり絶対に必要なのが固定用クリップ(Aクランプ)です。6〜7個あるとよいでしょう。これも、どのスタジオでも用意しておくべき道具です。ブームスタンドに物を掛けたり、しわを伸ばすために被写体の服の後ろをピン留めしたり(小さいものと大きいものが必要です)、数え切れないほど多くの使い道を思いつくはずです。近くの金物屋(あるいはオンライン)で購入できます。この2つの安価なアクセサリーはぜひ手元に置いてください。そうすれば、撮影中にイライラして頭をかきむしることもなくなり、(いったん中断して買いに走ることもなく)撮影がスムーズに進みます。

*訳注:日本では、布製のガッファーテープ(ガムテープ)もスタジオワークで使いますが、糊が残るのと熱に弱いので、その弱点をクリアーした紙製のスタジオ用テープやパーマセルテープ(白、黒2色あり)という名称のテープが必須になっています。強力に接着できて剥がすのも簡単、下地を傷めづらく糊が全く残らない優れものです。元はアメリカから来た物なので、アメリカでも使っているはずです。


ライトスタンドをキャスター付きにすべき理由

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どこかの時点で、スタジオ用のライトスタンドを購入することになると思います。そのときのために、スタジオワークが楽になる方法をアドバイスしましょう。それは、キャスター付きのライトスタンドを購入することです。これを使いたくなる大きな理由は2つ。

第1の理由は非常に明白で、ライトを頻繁に動かすからです。キャスター付きであれば、容易に転がすことができ、持ち上げて移動させる必要はありません。さらに、私が発見したことですが(ほかの写真家たちの仕事を見ていて気づきました)、キャスター付きのスタンドを使うとライトをこれまでよりも動かし、いろいろ試すようになります。

第2の理由は安全性です。ライトは頭でっかちで、重量のあるもの(ストロボ、ソフトボックス、アクセサリー)はすべてスタンドの上部にあります。スタンドを持ち上げて移動させると、何かにぶつけたり、バランスを失って倒したりしやすいのです。みなさんが想像する以上に頻繁に起こります(本当です。この目で何度も見てきましたから)。機材の修理費、セットの損傷、整骨院に通う費用などに比べたら、キャスターの費用など安いものです。


※この記事は「デジタルフォト達人への道」第3巻 から抜粋しています。

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スコット・ケルビー Scott Kelby

『Photoshop User』誌の編集者兼発行人。『Layers』誌(Adobe社製品に関するハウツー雑誌)の編集者兼発行人。人気ウィークリービデオショー『Photoshop® User TV』の共同司会者。全米フォトショップ・プロフェッショナル協会(NAPP)の共同創設者兼会長で、ソフトウェアのトレーニング・教育・出版会社ケルビー・メディア・グループの会長。写真家、デザイナーで、著書は50冊を超える。
・ブログ(英語) Scott Kelby's Photoshop Insider
・トレーニングビデオ(英語) Photo Recipes Live by Scott Kelby


早川廣行 Hayakawa Hiroyuki

電塾塾長/株式会社電画代表/東京藝術大学大学院非常勤講師/日本写真学会会員/日本写真芸術学会会員。デジタルフォトの黎明期から画像処理に取り組み、デジタルフォトの普及啓蒙・教育活動に努める。デジタルフォト関連の雑誌への寄稿、講演活動、書籍執筆(Photoshopプロフェッショナル講座シリーズ他多数)など幅広く活動している写真家・フォトディレクター。

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