新Mac Pro実力検証

4K時代を切り拓くMac Proの最新テクノロジー

斎賀和彦

プロフェッショナルユーザー待望の新しいMac Proがついに出荷開始された。この特集ではその性能を明らかにするべく様々な条件下でパフォーマンスを検証。4Kムービー編集やフォトレタッチなど重たいデータを扱う現場での実力を探ってみた。

新しいMac Proはハイエンドマシンを再定義する

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ここ数年のアップル製のコンピュータは、iMacやMacBook Proといった中堅機が順当にスペックアップし、ほとんどの作業に充分なパワーを有するようになった一方、フラッグシップであるMac Proはクロックアップこそあったものの、事実上長く放置され、USBは2.0のまま、Thunderboltも未搭載という状態だった。

iPhone等のモバイル系が好調すぎてアップルのハイエンド系への姿勢が見えず、業を煮やしてプラットホームをWinに移したユーザーも少なくないだろう。そんな状況下で登場したMac Pro(Late2013)は、単にハイパワーのMacというだけでなく、アップルらしいハイエンドマシンの再定義を行なうものになった。

PCのフラッグシップはアップルを含め、内部拡張性の高さがウリだった。その結果、筐体は大きく、排熱対策のためのファンも複数あり音も大きい。デスクトップと言いながら床置きが基本の大型マシンになっていた。

だが新しいMac Proは内部拡張性をほとんど持たない。そのせいで筐体は小さなゴミ箱と言われるほどのサイズ。もちろん卓上に簡単に置ける。

内部にはHDDの入るスペースもない。HDDの代わりにSSDを搭載できるデスクトップ機はあるが、Mac ProはSSDしか搭載できないのだ(そのことによるマイナス面は後述)。あるのは強力なワークステーション用CPUと、同じく強力なGPU(デュアル)、メモリスロットとSSDのみ。

その代わり非常に高速な次世代インターフェイスであるThunderbolt(TB)2を6ポート搭載し、拡張性をすべて外部に持たせる設計になっている。従来、拡張スロットに挿した専用カードでつないでいたようなRAIDも、4Kディスプレイも、このインターフェイスを利用する考え方だ(3台の4Kモニターが接続可能)。

私見だが、この新しいMac Proのターゲットはまさに4K映像制作に他ならない。膨大な転送速度と容量を要求する4K編集には中途半端な内部拡張では不十分だ。それならばMac Proは強力なエンジンに徹し、そのために必要なGPU、メモリは最短接続可能な内部に、それ以外は従来の内部以上に高速I/O可能なTBでボトルネックなく外部に出す、というフラッグシップマシンのデザインである。

Mac Pro(Late2013)
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新しいMac Proは、3.7GHz クアッドコア(4コア)と、 3.5GHz 6コアの2つのモデルが用意されている。クアッドコアの構成は12GBメモリ、デュアルAMD FirePro D300、256GB SSDで、価格は318,800円。6コアの構成は16GBメモリ、デュアルAMD FirePro D500、256GB SSDで、価格は418,800円。注文時のカスタマイズで、プロセッサは3.0GHz 8コア/2.7GHz 12コア、メモリは最大64GB、SSDは最大1TB、グラフィックカードは最上位のD700を選択することができる。すべてのパーツで一番上のスペックを選択すると、本体のみで1,031,399円となる。

Mac Proで映像を扱うならTB2の高速ストレージは必須

エンジンという意味ではCPUはマルチコア化を進め、4〜12コアのラインナップが用意された。MacはOSレベルでマルチスレッド処理を行なうので、コア数に応じた分散処理が可能。ただしMac Proに搭載されるCPUは、コア数の多いCPUほどクロック周波数(1コアあたりの処理速度)が低下するため、単一処理系のアプリでは下位モデルの方が速いという逆転現象が起こりうる。

GPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)が大きく強化されたのも特徴である。それによって4Kディスプレイを3台接続可能な出力を持つが、それ以上のポイントがGPUによる演算速度の強化である。近年、演算の一部をCPUではなくGPUに担わせるのがトレンドだが、Mac ProもMacでは初めてデュアルGPUの搭載に踏み切った。

この効果はアプリによって大きく異なることが予想されるが、少なくともMac Pro用に最適化アップデートされたFinal Cut Pro Xでは、リアルタイムプレビュー処理で大きな効果を確認しているし、Adobe Premiere Pro CC、Photoshop CCもGPUを使った高速処理に対応している。

内蔵SSDは、通常システム側とSATAで接続されているが、Mac Proではさらなるスピードを追求するためにPCI Express接続のSSDが採用されている。実測値で900MB/s後半をマークし、4K素材のマルチストリームハンドリングを余裕で実現する。

ただし、SSDはHDDに較べ容量単価が割高でかつ大容量のものがない。映像編集には外部ストレージが不可欠で、それを担うのが前述のTB2である。TBが昨年TB2にアップデートされた(規格値20Gb/s)が、これも4K素材を含む広帯域データの外部運用を可能にするため。逆に言えば、映像編集にMac Proを使う場合、TB2に対応した高速ストレージを用意しないとMac Proの能力を充分には活かせないということだ。

Mac Proはハイエンドマシンの再定義を行なった。アップルは依然、画像、映像を筆頭にしたクリエイティブ分野に本気だ。そしてそのコアエンジンはMac Proが担うのも間違いない。

Thunderbolt 2対応の高速ストレージ
左はHDDを8つ搭載するPegasus2 R8、右は6つ搭載するPegasus2 R6。

img_special_macpro01_07.jpg プロミステクノロジーPegasus2は、世界初のThunderbolt 2対応RAID5ストレージ。新しいMac Proで映像編集をする場合に最適な製品で、アップルストアでも販売されている。
ラインナップはPegasus2 R8(4TB×8=32TB/3TB×8=24TB)、Pegasus2 R6(3TB×6=18TB/2TB×6=12TB)、Pegasus2 R4(2TB×4=8TB)。
公式サイト: jp.promise.com

※この記事はコマーシャル・フォト2014年4月号 特集「新Mac Pro 実力検証」を転載しています。

斎賀和彦 Kazuhiko Saika

CM企画/演出時代にノンリニア編集勃興期を迎える。現在は駿河台大学メディア情報学部、デジタルハリウッド大学院等で理論と実践の両面から映像を教えながら、写真、映像作品を制作。
ブログ http://mono-logue.air-nifty.com/
ツイッターアカウント http://twitter.com/SAIKA

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