そうだったのか!デジタルフォトの色

第5回 画像のコントロールは、ハイライト&シャドーから

解説:BOCO塚本

デジタルカメラで撮影したRawデータを、TiffあるいはJpegに変換するソフトを一般的にRaw現像ソフトと呼びます。このRaw現像ソフトは、デジタルカメラメーカー純正品以外にもサードパーティ製のソフトが何種類か販売されていて、それぞれに調整機能が豊富であるとか、使いやすいインターフェースを持つなど純正とはひと味違った機能を備えています。

さて、こういったサードパーティ製のソフトを何種類か試用してみると、それぞれに色味や露出が変わってしまうことに気がつくと思います。サードパーティ製ソフトの場合は、撮影時のカメラ設定を一部読み込まなかったり、独自の設定に置き換えてしまうことがあります。特に植物の緑や空の色、人の肌色などの記憶色あるいは期待色と呼ばれる色については、各メーカーの考え方に差があり、違いが見られる部分です。

一方、明るさについてはどうでしょうか? 撮影時にカメラに設定したISO感度は、デジタル的に明るさを変化させているのではなく、撮像素子(CCDやCMOS)から得られた電荷に対する電気的な増幅幅を変化させいます。いくらRawデータだからといって撮影後に感度を変えることは出来ません。

2005年以前のデジタルカメラのカタログには、「撮像感度:ISO200〜1600相当」のように、ほぼそれに当たるという表記になっていましたが、現在はISO規格(*1)に従って、「ISO感度(推奨露光指数)(*2):ISO100 〜 1600」のような形になっています。ISO感度とは、規定された光源で照明された18%グレーの被写体を撮影した場合に、sRGB上においてRGB値がそれぞれ118になる状態で算出されるの感度のことです。このときに使用するソフトウェアは、カメラ専用でよいとも規定されています。つまりソフトが変わればこの限りではないということです。

そこで、チャートのM部分が、sRGBに変換した時に118(実際には114)になるようにライティングして撮影。そのRawデータを、純正を含む4種類のソフトでインストール状態(デフォルト設定)のまま、Raw - Tiff変換しました。

下の写真を見ると分かるように、それぞれのソフトにおける目標部分の値は、最大で20くらい違ってきています。

テストチャートのM部分がsRGB書き出し時に118になるようにライティングした(計測値は114)。


カメラメーカー純正ソフト(A社)。Mの値:114

サードパーティ製ソフト(B社)。Mの値:117

サードパーティ製ソフト(C社)。Mの値:96

サードパーティ製ソフト(D社)。Mの値:97

さらに、もう一つの「ドーム状のホールの写真」とヒストグラムを見てみると、ソフトによってグラフの山が左右に偏っていてコントラストも違うのが分かるでしょう。このようにRawデータの中間調は、ソフトや設定次第である程度変わってしまうのです。

カメラメーカー純正ソフト(E社)
サードパーティ製ソフト(B社)
サードパーティ製ソフト(C社)
サードパーティ製ソフト(C社)

その一方で白トビ部分は、ほとんど変わりません。同じ画像をRaw現像ソフトで出来るだけアンダーに露出補正をして、白トビになっている太陽と雲の部分をトリミングしました。。空の青味はそれぞれですが、雲の調子が出ている部分を確認してください。どのソフトを使ったものもほとんど変わらないはずです。

雲の調子があるところは、ほとんど変わらない。
補正範囲はソフトによって-2絞りから-4絞りまで差がある。

このように、撮像素子(CCDやCMOS)で記録しきれない明るさの部分については、ソフトによる差はないのです。今回は作例を載せていませんが、シャドー部についても同様にノイズの量が限度になって使えないところは、ある程度決まってきます。

ISO感度(推奨露光指数)は、ある程度目安としては有効ですが、より厳密な撮影を行なおうとすればハイライトとシャドーの確認がより重要で、ソフトの差に左右されないポイントだということがわかると思います。

このとき気をつけなければいけないのは、液晶モニターです。ソフトウェアキャリブレーション方式で調整したモニターでは、白ぎりぎりのエリアで色のねじれが出やすくなります。下の例のように、ハイライトの手前でトーンジャンプを起こしているモニターをよく見かけますが、これでは画像のトラブルかどうか判断できません。同様にシャドー部が明るく出過ぎているモニターも問題です。

「画像のコントロールは、ハイライト&シャドーから」という基本を守るには、ColorEdgeのようにハードウェアキャリブレーション対応で、基本性能に優れたモニターが不可欠となります。


モニターによるトーンジャンプの例

CG241Wで表示させたところ。トーンジャンプはなくデータは正常だとわかる。

シャドー部が落ちきらず実際の状態よりも明るく表示されている。

CG241Wで表示させたシャドー部。実際の仕上がりに近い。


(*1) ISO規格
フィルムでは、以前ASAやDINにより規定されていた感度表示が使われてたが、現在は国際標準規格という形でISOに統一されている。しかしデジタルカメラには、ホワイトバランスなどフィルムにはない設定があるため、このフィルム用のISO規格は適用することができなかった。そのために2004年7月に有限責任中間法人カメラ映像機器工業会が策定した感度規定をもとに、ISO12232:2006においてデジタルスチルカメラの感度表記が規定されている。(CIPA DC-004-2004)

有限責任中間法人カメラ映像機器工業会 「デジタルカメラの感度規定」
http://www.cipa.jp/hyoujunka/kikaku/pdf/DC-004_JP.pdf

ISO12232:2006
http://www.iso.org/iso/iso_catalogue/catalogue_tc/catalogue_detail.htm?csnumber=37777

ISO規格が策定されたことで、たとえば2005年6月発売のニコンD50では「撮像感度:ISO200〜1600相当」となっているのに対して、2005年12月発売のD200からは「ISO感度(推奨露光指数):ISO 100 〜1600」という表記に変わった。


(*2)推奨露光指数
デジタルカメラでは、ハイライト&シャドー側のダイナミックレンジの幅によって、規定通りの計測感度ではちょうど良い露光指数とならない場合があり、メーカーが推奨する露光指数を表記できる。

写真:BOCO塚本

BOCO塚本 BOCO Tsukamoto

1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。

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