こびとのくつやの道具箱

第2回 ていねいなしごとをささえるどうぐたち

解説:工藤美樹(こびとのくつ)

1日10時間前後という長時間の作業は、製作者のみならずモニターにとっても負担です。弊社の場合、最長2年でモニターたちは現役を退きます。キャリブレーション時には輝度やガンマにも注意を払い、プリンタとのコントラスト比が近い状態を維持しています。ですので、ある程度の使用期間が経過すると、サブモニターやサーバー専用モニターに移行します。

こびとではスクリーンセーバーは禁止です。スクリーンセーバーを常時表示するだけで、モニターの負荷は上がりますし、RGB作業が多いか、CMYK作業が多いかによっても、モニターの疲弊度は違います。折角購入したハイエンドモニターを少しでも長く大切に使ってあげるための、日々のちいさな工夫です。

またデスクトップのカラーは統一されたニュートラルグレーにしています。写真画像を表示するときに色の影響を受けないようにするのが第一の目的ですが、作業者の目への負担を軽減したり、デスクトップ上の書類やハードディスク容量が見やすかったり、白を表示するよりモニターへの負担が少ない、などもその理由です。


モニターのデスクトップはグレーで統一している

測量用の水平器でモニターの水平を測っている

モニターにも癖があって、それは使用し始めてから3ヵ月〜半年くらい経過すると、顕著になってきます。左右上下それぞれで色むらの有無がありますし、キャリブレーションをしばらくしていないとある一定方向に色が傾いたり、輝度の落ち方のスピード、ガンマの強弱、特定の色に対しての反応なども違います。使用しているモニターの癖は、付き合って行くうちにわかってきますから、自分のモニターの特性を把握した上で、キャリブレーションを行います。

モニター本体のキャリブレーションも大切ですが、置かれている環境・状況の確認も大切です。デスクは水平垂直か、モニターは水平垂直か。こびとではモニターの水平を測るために測量用の水平器を使っています。カメラと同じように、プロ仕様のモニターには水平器が入るとすごく便利だと思うのですが…。水平垂直とともに、自分の座る場所のセンターにモニターがあるかどうかなどもきちんと確認しないと、視野角の影響で色が変わって見えることもありますから、注意が必要です。


こびとでは、スタッフ全員がワコム製のA3ワイドサイズのペンタブレットを使用している

下のペンは、サイドスイッチ用の穴がないラバーグリップに取り替えている

もうひとつ、レタッチャー(ビジュアルディレクター)を特徴づける道具のひとつにタブレットがあります。マウスの方が操作に慣れているという方もいらっしゃると思いますが、私自身はアナログで絵を描いていた経験が長いので、マウスではなくタブレットが合っています。手首の動きではなく、肩からの動きで描くようなロングストロークが必要な場合や、デッサン感覚で全体感を作って行きたい時などに威力を発揮します。

またこびとでは、サイドスイッチなしのタブレットペンを使用している人がほとんどです。さらにタブレット本体、タブレットペンそれぞれには、カスタマイズ機能やファンクションキーの割当などたくさんのオプションがついていますが、誤作業や誤動作をなくすために、無効にして使用しています。

タブレットのサイズは、通常業務ではA3サイズ、ロケなどの屋外ではA4を使用しています。操作面はモニターに比例していますから、操作面がなるべく大きな方が、微妙なストロークが打てることになります。ピクセル単位のマスクや修正など、『細部に神宿る』を信条とする、こびとのくつの細かい仕事を支えているのは、こうしたすぐれた道具たちです。

写真:工藤美樹(こびとのくつ)

工藤美樹(こびとのくつ) Miki Kudo

7歳より油画・水彩・陶芸・書道を学ぶ。株式会社アマナを経て、こびとのくつ株式会社を設立。精密さと早さを重視した職人集団、こびとのくつの現代表取締役。
http://www.kobito.co.jp/
主な仕事:花王『AUBE』『GRACE SOFINA』、NTT DoCoMo『Anser』、サントリー『DAKARA』『角』、東京ディズニーランド『20周年記念』、TOYOTA『LEXUS』『COROLLA ALTIS』など。

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